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[地学分野]気象を扱った問題の傾向と、家庭学習のヒント|なるほどなっとく 中学受験理科

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2020年11月04日 水溜 兼一(Playce)

学習範囲が広く、難しいイメージがある理科の中学入試問題。難関校に多くの子どもを合格させてきたカリスマ講師・小川眞士さんが、子どもの理科力を育むためのヒントを伝えます。

理科は大きく生物・化学・地学・物理の4分野に分かれます。今回は地学分野から、気象に注目して、入試問題の傾向と家庭での学習ポイントをお伝えします。

時事問題と絡めた総合型の出題

気象に関しては温暖化の影響もあり、時事的な要素も含めて最近は出題率が高くなっています。入試では、集中豪雨、台風、フェーン現象など、ニュース・時事問題を入り口に、気象の知識をもとにデータなどを理科的に解釈する総合型の問題を出題する学校が多くなりました。たとえば、本文と図表を読みながら気温や湿度を計算し、フェーン現象のしくみを考え、さらに、気圧配置などを考えてフェーン現象が起こったときの天気図を選ぶ問題が出題されるケースもあります。

気象には、気温、飽和水蒸気量、湿度、雨量、風速、風向、気圧、前線、台風など、理解しておくべき事柄がたくさんあります。私たちの身の回りに起こる気象現象は、これらの要素が密接に関連していますから、相互理解を着実に積み重ねることが大事です。

たとえば雲。はじめは雲ができるメカニズムを理解し、教科書にも載っている雲の形状と名前を確認します。また雲のでき方や形状による雨の降り方の違い、雲量と天気の関係、前線とそれに伴う雲、などに関して学びます。気象で扱われる問題のなかには、露点(空気中の水蒸気が冷やされて水滴となる温度)や前線など、小学校の授業で習わないものもあります。そういった箇所は塾のテキストなどでしっかり学習する必要があります。

このように書くと気象は難しそうだと思われる方がいらっしゃるかもしれません。しかし、気象は日常生活と深い関わりがあるものです。たとえば、夏場に冷たい水を入れたコップのまわりに水滴がついたり、冬場に窓ガラスが結露したりすることがありますが、これらはいずれも露点が関係しています。

梅雨前線や寒冷・温暖前線は、テレビの天気予報で取り上げられます。ちなみに寒冷前線は、暖かい空気を含む気団(暖気団)があるところに冷たい空気を含む気団(寒気団)が入り込んだとき、寒気団は重たいので下に入り込み、暖気団は軽いために急激に押し上げられ上空で雲が発生して雨を降らせます。このとき気団の境目に前線面ができます。温暖前線は、寒気団があるところに暖気団が入り込んだとき暖気団が寒気団の上にゆっくり上がっていく形になり、そこに前線面ができます。

2020年に起こった出来事で注目すべきは、梅雨に大雨を降らせた「線状降水帯」でしょう。これは、積乱雲が次々と発生して連なり、同じ場所で長時間にわたって強い雨を降らせる現象です。入試でも取り上げられる可能性がありますから、きちんと確認しておきたいところです。ほかに、台風を取り上げた問題も例年一定数の学校から出題されます。最大風速が秒速17.2m以上の熱帯低気圧が台風で、台風の進行方向と渦の向き、風向き、風の強さの関係や、高潮が発生する原因、気圧のヘクトパスカルという単位や、台風の目という言葉などを基礎事項として理解します。台風に関しての問題は図やグラフなどの読みとりもありますが基本事項が身についていれば比較的得点しやすいテーマです。

日常生活での体験や親子の会話が大切

雨量(㎜)、風速(m/秒)、湿度(%)など、さまざまな単位が登場するのも気象の問題の特徴です。いろいろな値が実際にどれくらいなのかイメージできることは問題を解くポイントになります。たとえば、雨量は降った雨の深さのことですが、単位が㎜で表されるせいか、子どもたちは大した量ではないと考えがちです。

しかし、もし東京都全域に100㎜の雨が降ったら雨量は100㎜×東京都の面積になりますから、大変な量になります。入試では、底面積が1㎡の容器に1時間に130㎜の雨が降ったとき、容器に溜まった水は何Lかを答えさせるような問題も出ます。雨量の計算は単位の変換と桁数の多い数字の計算をコツコツと確実にできるかがポイントです。

正確に計算するためには、日々の学習で計算問題を確実に解く練習が大事です。それと合わせて、普段の親子の会話を通して、子どもに数・単位の身体感覚を持たせることも必要です。たとえば浴槽の水が何Lなのかを一緒に考えてみてもよいでしょう。また、台風の話題では風速50m/秒など、イメージしづらい数値が出てきますが、「時速に直すと180㎞だから、新幹線並みの速さだね」と伝えると、子どもはイメージしやすくなります。

気象では、実際にどのようなものか、日常生活で感覚をつかむことはとても大事です。同じ25℃の気温でも夏と冬ではどう感じるか、湿度が20%と70%(乾燥した空気と湿った空気)では体の感じ方にどんな違いがあるかをぜひ確かめてみてください。雲の形状についても、テキストだけでなく、実際に空を眺めてみることをおすすめします。

ほかにも、登山をすると山中で霧に包まれることがあります。霧と雲はともに空気中の水蒸気が凝結して水滴になったもので、地表近くにできるものを霧、上空に浮かんでいるものを雲と呼んでいます。山中では霧でも、ふもとから見ると雲です。このような、日常での体験や現象に出合ったときの親子の会話を大切にすることも、気象の問題に強くなる方法のひとつです。

入試では、日ごろから身の回りの現象を理科的視点で捉えられているか、理科的興味を持ってニュースを見ているかが問われます。親子で会話するときに、親が子に教えるという姿勢だと双方身構えてしまいますが、親も子どもと一緒に学ぶ感じだと思いのほか、会話が膨らみます。また、親御さんも過去問などを見て、気象でどんなテーマが問題として扱われているか確認しておくと、どんな話題を振ればいいかの目安になります。


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※記事の内容は執筆時点のものです

小川眞士
小川眞士 専門家・プロ

小川理科研究所(東京都豊島区)主宰。都内の中学校教諭を経て、四谷大塚進学教室理科講師に。開成や桜蔭の特別コースを約25年間担当、コース生28人全員が開成中学に合格した実績を持つ。教務主任や副室長も務めた。2009年4月に小川理科研究所を開設。主な著書に、『中学受験 理科のグラフ完全制覇』(ダイヤモンド社)、『これだけ理科』(森上教育研究所スキル研究会)、『カンペキ小学理科』(技術評論社)がある。

この記事の著者

雑誌・新聞の編集・ライターを経て、現在は、通信教育企業のキュレーションサイトや大学案内のライティングなどを担当。