連載 中学受験との向き合い方

習い事と受験勉強の両立・絞り込み ―― 中学受験との向き合い方

専門家・プロ
2020年11月05日 やまかわ

首都圏の一部では、4人に1人の小学生が挑戦するともいわれる中学受験。子供の受験に親はどう向き合えばよいのでしょうか。この連載では、『中学受験は挑戦したほうが100倍子供のためになる理由』の著者である、田中純先生に中学受験との向き合い方をテーマにさまざまな話を伺います。

習い事の時間を、受験勉強に当てたほうが良いのではないか。子供の受験勉強と、習い事の両立は多くの方が悩まれる問題でしょう。しかし習い事があることが、受験勉強に良い影響をもたらすこともあります。今回はそんな観点から、習い事と受験勉強を捉えてみます。

リフレッシュとしての習い事

算数で覚えた公式を使って問題を解いたり、国語で注意深く本文を読んで選択肢を絞ったり……。受験勉強は脳が疲れる作業の連続です。なかには疲れを感じず、勉強を「快感」だと感じる子もいるでしょうが、そういった子はごく少数派。大部分の子はこうした作業が積み重なると、疲労が蓄積され脳の働きも悪くなります。

習い事の良い面は、そうした脳の疲れを癒す一面があることでしょう。たとえば、ピアノや絵描きなどは勉強と違う部分の脳を使うことで、気持ちをリフレッシュできます。習字であれば、心を落ち着かせたり精神集中をしたりして、気分を一転するのに役立つかもしれません。

私は受験勉強中もフォルティッシモ(音楽用語で「目いっぱい強く」という意味)のような瞬間がある行為をするのはよいことだと思っています。たとえば、全力で走る、全力で投げる、全力で蹴る、全力で踊る、全力で唄うなどです。このように「全力」を出し切って何かに打ち込むことの、爽快感はまさに「快感」です。この快感が勉強の疲れをリフレッシュさせ、心機一転、立ち向かう原動力になることがあります。

習い事の数を絞り込む理由と方法

とはいえ、習い事をたくさんやればリフレッシュできて、受験勉強もはかどる、というわけではありません。3つも、4つも並行して続けていたら、当然勉強の時間がなくなりますし、体力的にもハードでしょう。それぞれの習い事がわが子にどんな良い影響を与えているのか、子供がどれほど夢中になれるのかを考え、絞り込む必要があります。その絞り込み作業は、わが子に優先順位のつけ方という大切なスキルを学習させる好機でもあります。

では、習い事はどのようにして絞り込んでいくのがいいのでしょうか。考えがまとまらないときは、子供が実際に習い事をしている姿を見に行ったり、どんな気持ちで習い事に打ち込んでいるのかを子供に聞いてみたりしてみましょう。そのときの本人の目の輝きも、習い事を続けさせるかどうかの判断材料となるはずです。

そのうえで、習い事をいつごろから絞りこむのかを、前もって子供に話しておくのがいいと思います。たとえば、以下のようなやりとりで子供と対話してみてください。

:「○○中学に行きたいんだよね?」

:「うん」

:「それが最優先事項として考えてもいいのかな?」

:「そうだね」

:「受験までの時間に限りがあるし、習い事のしすぎで勉強どころじゃなくなると合格は難しいよね。それを考えると、残念だけど今から半年後くらいには習い事はAとBのどちらかにするか絞り込んだほうがいいと思う。もしもどちらかを選ぶとしたら、どちらのほうがいいと思うか、少しずつでいいから考えてみてくれないかな」

このようなやりとりをすることで、子供なりに「半年後には習い事をひとつに減らさなくちゃいけないな……」と、今後の限られた時間をどう過ごすかについて考えるようになります。

もちろん、親子で続けたい習い事が食い違っていたり、子供が「どの習い事もやめたくない!」と話したりする場合もあるでしょう。そんなときは、「じゃあ、習い事を全部続けるためには、あなたは何をするべきかな?」と問いかけてみましょう。

それを受けて、「勉強も頑張るから全部の習い事を続けさせてほしい!」とお願いしてくる子供も多いと思います。ただ、経済的余裕、時間的余裕、体力的余裕、それぞれには限りがありますよね。そして中学受験をする以上は、勉強のためにリソースを割かなくてはなりません。そこを冷静にジャッジできるのは親御さんでしょう。

「申し訳ないけど、あなたが〇〇歳になるまでは、あなたの時間の使い方について、親の責任として枠を設けさせてもらうね。子供の時間には子供の責任で自由に使える時間と、たとえ不満でも決まった枠に従わなくちゃならない時間があるんだ」という親の考えを素直に伝えるのも、子供にとっては我慢する力を養うチャンスになります。

また、「時間配分をしてやるべきことをやるのには、上手・下手があるんだよ。中学受験を機に上手になってほしいから、まずはお手本に従ってみてほしいな」と声を掛けたり、「でも、あなたがそこまでいうんだったら、11月の模擬試験でひとつ結果を出してごらん。その結果を見て習い事を続けるかどうか相談しましょう。目標は何点?」というように、ひとつ具体的なハードルを提案するのもいいと思います。これは勉強の意欲を高めることにも繋がります。

習い事を辞めれば上向く?

中学受験のプロセスには成績や気持ちの「落ち」が潜んでいます。このとき、習い事を整理して、立て直しを図ろうとするのは前向きなことで、悪いことではありません。しかしながら、習い事を辞めれば、成績や気持ちが上向くというものでもありません。前述のように習い事にはリフレッシュの面もありますから、一方的に習い事を辞めさせるように操作すれば、マイナスの作用が働くこともあります。

その子にとって習い事がどんなものであるか、よく見ること。親子で対話して、納得のうえで整理することが大事です。成績の落ちの原因は、単に習い事だけを理由にするのではなく、よく深堀りする必要もあります。目標の高さが影響しているのか、勉強の方法が悪かったのか、見直しが足りなかったのか、伸び悩みの要因を冷静に分析してみてください。子供の成績、体力、ストレスのたまり具合を見ながら、習い事と受験勉強のバランスを調整していきましょう。


これまでの記事はこちら『中学受験との向き合い方

※記事の内容は執筆時点のものです

田中純
田中純 専門家・プロ

開成中学校・高等学校、国際基督教大学(ICU)教養学部教育学科卒業。神経研究所付属晴和病院、中高教諭、学校カウンセラーを経て公文国際学園開講準備に参加。現在は赤坂溜池クリニックやNISE日能研健康創生研究所などでカウンセリングやコンサルテーションを行っている。「一家にひとり、一課にひとりのコミュニティ・カウンセラー」を育てることを目標としている。著書「ストレスに負けない家族をつくる」「中学受験は挑戦したほうが100倍子供のためになる理由」(みくに出版)

この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。

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