連載 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

お父さんと娘の中学受験 ―― 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

専門家・プロ
2020年12月01日 やまかわ

中学受験と聞くと、難関校を目指す受験がどうしてもイメージされます。しかし、そうではない、あるいはそのやり方に疑問をもつご家庭は少なくないでしょう。この連載では、『ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す』の著者である亀山卓郎先生に、親子で疲弊しない中学受験をテーマにさまざまなお話を伺います。

親子で意見が食い違うのは、中学受験ではよくあることです。なかでも父と娘の関係がこじれてしまうケースは多く、受験が終わったあとに“しこり”を残してしまうことが少なくありません。特に「親の言うことを聞いていればいいんだ」という一方的な声掛けは、父と娘の関係を悪化させる要因ともいえます。

頭ごなしの言葉はNG

学校から帰って宿題をしたり、塾で難しい内容の授業を受けたりと、お父さんの目の届かないところで子どもはたくさんの努力や苦労をしています。にもかかわらず、子どもの頑張りが見えていないような言葉を投げかけてしまうお父さんは多いものです。たとえば「結果が出てないなら、それは頑張ってないのと一緒」「あの中学に受からなきゃ、受験したって意味がない」といったことです。

中学受験を目指す10~12歳の女の子は、自我が芽生え始める年頃です。頑張りを認めるでも、考えを聞くでもなく、「○○しなさい」「△△してはだめ」と頭ごなしで決めつけられると、受験期の女の子のイライラはピークに達します。しまいには愛想を尽かし、「お父さんキモい」という一撃を放って離れていくことも多いのです。

上手に付き合えているお父さんの特徴

私が見てきた限り、娘と上手に付き合えているお父さんは、以下ふたつのスタンスを共通して持っているように思います。

・中学受験に関わっていく姿勢が強い
・本当に困ったときに相談に乗る

中学受験に関わっていく姿勢が強い

お父さんが娘の中学受験に関わるのであれば、1から10まであらゆるサポートをする、それくらいの覚悟が必要です。うわべのイメージで中学受験を語ってしまうと、「お父さんは何もわかってない!」と娘のイライラに火をつけてしまうだけだからです。

一方で、娘さんとうまく付き合えていると私が感じるのは、小さい頃からこまめに勉強の面倒を見ているお父さんです。さらに、塾選びや、子どものモチベーション管理、志望校選びなど、お母さんと一緒になって娘の受験について考えているお父さんが目立ちます。最新の中学受験の動向をしっかりと学んでいたり、難関校と中堅校に入学するメリットをそれぞれ理解したうえでお子さんの受験をサポートしています。

本当に困ったときに相談に乗る

受験期の女の子と接するうえで、ひとりの人格を持った“女性”として接することも大切です。男の子と比べ、心身の成長が早いのが小学生の女の子。自分で考え、行動し、目の前の壁をどう乗り越えるか、真剣に悩むことができる年齢でもあります。そして自分で考え、どうしても解決できないことがあるときにお父さんに意見を求めてくるのです。ですから、そのときが来るまでは、お父さんは不要な説教をしてはいけません。

その点、娘さんとうまく関係性が築けているお父さんは、ふだんはニコニコしながら接することを心掛けています。どっしりと構え、娘の頑張りを見守ってあげているようです。そして悩みを打ち明けられたときには、父親として真剣に話を聞き、娘の気持ちを尊重したうえで自分の考えを伝えています。

ちなみに、娘に振り向いてほしいあまり、「いつでも話を聞くからな」「何があった? どうした? 話してみなさい」としつこく接するお父さんもいますが、これはNGです。裏心が透けて見えると、逆に娘は遠ざかってしまいます。大切なのは、あくまでどっしりと構え、話しやすい雰囲気をつくっておくこと。こうしたお父さんには、娘のほうから近づいていくものです。

ときには雷を落とすことも大切

ニコニコしながら娘を見守るのが父親の基本的なスタンスですが、いざというときには娘を叱ることも必要です。特に「これを見逃してしまったら、この子のためにならない」という場面では、お母さんより、お父さんが強く叱るほうが効果は高いでしょう。

ここで気を付けたいのが、叱り方です。感情的に怒るのではなく、冷静に語りかけてあげましょう。否定するのではなく、「わかっているだろうけど、ここはあえて言わせてもらうよ」という形で、諭すように話しかけてあげるのです。

子どもには、子どもなりの言い分があります。特に、繊細な時期を過ごす女の子を頭ごなしに叱ってしまうと、修復できない関係性になってしまうこともあります。普段は見守っていて、いざというときには言うべきことを言ってくれる。こうしたお父さんは、「頼れるお父さん」として子どもの目に映るのです。

父親としての「魅せ方」がポイント

私は、中学受験を控える子をもつ親に必要なのは、「プロレス」のようなスタンスだと考えています。プロレスは、拳と拳を闘い合わせるK-1などと違い、「魅せ方」を重視しています。

大人と子どもは、その経験も考えも、大きく異なります。子どものことを真剣に考える気持ちは胸に置きつつ、あえて一歩引いて接してみるのです。怒っているように見せても、本心では怒らない。娘に近づくのではなく、あえて引いてみる。そういった「魅せ方」が大切です。

父親の素のまま子供とぶつかるのではなく、中学受験を一緒につくり上げていくための「役割を演じる」と考えてみましょう。親子間の風通しがよくなり、父娘の関係性もより強くなっていきますよ。


これまでの記事はこちら『親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

※記事の内容は執筆時点のものです

亀山卓郎
亀山卓郎 専門家・プロ

かめやま たくろう|明治学院高等学校、成城大学卒業。大手塾・個人塾などで教務経験を積んだ後、2007年に転居のため千葉県及び江戸川区の塾を閉鎖し、台東区上野桜木で「進学個別桜学舎」をスタート。首都圏模試の偏差値で60を切る学校への指導を専門に「親子で疲弊しないノビノビ受験」を提唱している。TJK東京私塾協同組合員、第一薬科大学付属高校上野桜木学習センター長。YouTube「下町塾長会議」構成員。著書「ゆる中学受験ハッピーな合格を親子で目指す」(現代書林)、「めんどうな中学生(わが子)を上手に育てる教科書」(ブックトリップ)、構成・問題監修「LIZ LISA Study Series中1/中2」

この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。

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