連載 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

中堅校志望の子に、いま伝えたいこと ―― 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

専門家・プロ
2020年12月16日 やまかわ

中学受験と聞くと、難関校を目指す受験がどうしてもイメージされます。しかし、そうではない、あるいはそのやり方に疑問をもつご家庭は少なくないでしょう。この連載では、『ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す』の著者である亀山卓郎先生に、親子で疲弊しない中学受験をテーマにさまざまなお話を伺います。

2020年も、残すところあとわずか。中学受験のクライマックスに差し掛かってきました。受験本番は真剣勝負の場。貪欲に努力を続けてきた子、そして試験官がテスト終了を告げるその瞬間まで鉛筆を止めなかった子、こうした子が報われるのが中学受験です。中堅校志望の子に向け、私が受験直前にいつも伝えている「勝負の哲学」をお話しします。

ミラクルは起きない

「奇跡的に合格」といったミラクルは、中学受験ではまず起きません。自分が本番の入試までどれだけ頑張ったかが、合格・不合格としてしっかり現れるのが中学受験。中村正直が『西国立志編』で訳したとされる「天は自ら助くる者を助く」という言葉しかり、自分で努力を重ねてきた子には必ず結果がついてきます。

一方で、受験生のなかには以下のような子もいます。

・奇跡が起きるのを期待している
・「そんなに頑張らなくても、自分が落ちることはない」と高をくくっている

こうした姿勢で受験に臨むと、思わぬ落とし穴にはまります。努力を怠り、運を天に任せているような人間には神様は微笑みません。第一志望であっても、安全校であっても、全力で準備をしない人間は足元をすくわれるのです。事実、入試本番で自分の得意分野だけが出されて高得点を取ったり、鉛筆を転がして選んだ選択肢がことごとく正解になったり、といったことは残念ながら起きません。だからこそ私は、本番近くになると生徒たちにしつこく伝えます。「努力することから目を背けて、むやみに奇跡を信じるような“ミラクルバカ”になるな」と。

受験体験記の「逆転合格!」などは、あくまで一部の子の話。多くの子は、入試本番まで貪欲に勉強を重ね、その結果として泥臭く合格をつかみ取っています。奇跡に頼るのではなく、自分から合格をつかみ取りに行く。本番の入試を控えた今こそ、このことを特に肝に銘じておいてください。

「滑り止め」でも準備は怠らない

私の塾(進学個別桜学舎)で、受験を甘く見てしまったために思わぬ結果を招いた子がいました。試験前日になっても過去問をやっておらず、「滑り止めだから受かるでしょ?」と高をくくっていたのです。本人の偏差値は、この学校の偏差値を大きく上回っていましたが、直前に過去問をやってみると全く点数が取れません。「今さら焦ってもしょうがないから、明日は一生懸命問題に取り組んできなさい」と送り出したものの、結果は不合格。その後、その子は「中学受験は真剣勝負の場」ということに気づいたのか、第一志望校の入試本番までの数日間、私もびっくりするほどの勉強をし、無事に憧れの学校の合格を勝ち取ることができました。

合格できるだけの実力を持っていたとしても、準備を怠っていれば足元をすくわれます。最後の最後まであきらめず全力で取り組んだ子、そして途中から手を抜いてしまった子。この差が明暗を分けることは受験の世界ではよくあることです。そして自分にとっては「滑り止め」であっても、その学校に入るために必死に努力を重ねてきた子がいることも忘れてはいけません。どの学校であっても抜かりなく準備を重ねた先に、ようやく合格は見えてきます。

泥臭く1点をもぎ取る

入試本番では、泥臭くてもいいからとにかく1点でも多くもぎ取る姿勢も欠かせません。たとえば「ピラミッド型にタイルを並べていくと、11段目は何枚のタイルが必要か」という算数の問題が出されたとします。数列を使って解ける問題ですが、法則性がどうしても思い浮かばない場合には、ピラミッドを11段目まで問題用紙に書いてタイルを数え、正解にたどり着ける可能性もあるでしょう。「何をしてでも1点をつかみ取る!」と考えていれば、試験終了のそのときまで必死に数えるものです。そしてどんなレベルの学校であっても、合格と不合格を分けるボーダーラインはわずかな差であることがほとんど。1点の差が合否を左右することは、中学受験では本当によくあることなのです。

一方で「まぁ、これが解けなくても大丈夫かな」と気持ちに緩みがある子は、見直しをすれば間違いに気づける問題をそのままにしたり、少し手を動かせば解ける問題を空欄にしたりと、貪欲な姿勢を見せません。結果、手が届いたはずの学校にギリギリのところで落ちる……、といった辛い経験を味わう可能性が高いのです。

「カッコイイ勝ち方」は誰も期待していません。合格最低点でも、合格は合格。カッコ悪くても、テスト用紙に最後まで食らいついた子に神様は微笑みます。貪欲に1点をもぎ取る、こうした受験生を目指しましょう。

最後まで全力投球で

受験本番に向け、気持ちを「勝負モード」にギアチェンジするには次の3つが大切です。

・やるべきことを着実にこなす
・どんな学校であっても準備を怠らない
・入試本番は最後まで問題と向き合い続ける

中学入試では、ほんの数点の差が合格・不合格を分けます。それは、中堅校入試であっても変わりません。受験生に残された時間は多くはありませんが、それでも、まだまだやれることはたくさん残っています。「ここまで頑張ってきたから……」と過去の自分に頼るのはほどほどに、「本番で合格をつかみ取る!」とこれまで以上に前を見据え、全力投球で勝利をもぎ取ってきてほしいと思います。

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※記事の内容は執筆時点のものです

亀山卓郎
亀山卓郎 専門家・プロ

かめやま たくろう|明治学院高等学校、成城大学卒業。大手塾・個人塾などで教務経験を積んだ後、2007年に転居のため千葉県及び江戸川区の塾を閉鎖し、台東区上野桜木で「進学個別桜学舎」をスタート。首都圏模試の偏差値で60を切る学校への指導を専門に「親子で疲弊しないノビノビ受験」を提唱している。TJK東京私塾協同組合員、第一薬科大学付属高校上野桜木学習センター長。YouTube「下町塾長会議」構成員。著書「ゆる中学受験ハッピーな合格を親子で目指す」(現代書林)、「めんどうな中学生(わが子)を上手に育てる教科書」(ブックトリップ)、構成・問題監修「LIZ LISA Study Series中1/中2」、監修「おっぱっぴー小学校算数ドリル」(KADOKAWA)

この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。