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オイルショックとは? 関連する3つの知識も押さえよう

2020年12月03日 ゆずぱ

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2020年、新型コロナウイルスの影響でトイレットペーパーの争奪戦が起きました。この状況を「オイルショック」と例える声も聞かれましたが、そのオイルショックとは、いまから50年ほど前、1970年代に起きた出来事。中学受験に挑む小学生はもちろん、親世代でも生まれていない人も多いかもしれません。とはいえ中学入試では、歴史的事実として、オイルショックに関わる問題が頻繁に出題されています。

オイルショックという言葉は知っているけど、何が起きたのかイマイチ分からない……といった子に向け、イラストを使いつつ、直感的に理解できるように説明します。

3つのステップで理解しよう

オイルショックとは“ナニモノ”なのか、さっそく見ていきましょう。3つのステップを追うと理解しやすいので、それぞれのステップに沿って解説しますね。

【ステップ1】中東戦争が勃発

オイルショックは、1973年、中東地域で戦争が勃発したことをきっかけに起きました。この戦争は「中東戦争」と呼ばれます。中東戦争とは、ざっくりいうと、ユダヤ教やイスラム教といった宗教の“聖地”を争った戦争のことです。

【ステップ2】石油価格が急上昇

中東地域は、石油がワンサカ採れる地域です。その場所で戦争が起きました。すると、人々の生活に欠かせない石油が敵国へ行きわたるのを防ごうと、中東の国々は石油の価格を大幅に釣り上げたのです。

【ステップ3】世界中が不景気に

石油は、経済において“超重要”な資源です。電気を生み出したり、モノをつくったりするためにも石油は使われています。その石油の価格が急に上がったため、世界中が不景気になりました。これが、オイルショックです。つまり、中東戦争をきっかけとした石油価格の上昇、その結果起きた経済の落ち込みが「オイルショック」と呼ばれるのですね。

オイルショックは2回起きた

中東戦争をきっかけに起きたオイルショックですが、実は1979年にも起きています。中学入試では1回目のオイルショックについて問われることが多いですが、難関校では2回目についても出題されています。以下のイラストで、それぞれを比べてみましょう。

ふたつのオイルショックは、どこが異なっていますか? そう、①の「きっかけ」の部分ですね。1973年に起きた第一次オイルショックは、中東戦争がきっかけでした。一方で第二次オイルショックは、イランで革命が勃発したことをきっかけに起こりました。

■第二次オイルショック
イランは、石油がたくさん採れる国です。そのイラン国内で革命が起き、石油の生産が大きく減ってしまいました。その結果、石油の価格が急上昇。1回目のオイルショックと同じく、世界中が不景気になってしまったのです

オイルショックに関わる3つの知識

歴史上2回発生したオイルショックは、世界中に不景気をもたらしました。では次に、オイルショックの理解をさらに深めるための3つの知識を紹介します。

■オイルショックに関わる知識
・石油の役割
・戦後のマイナス成長
・混同しがちな出来事

石油の役割

石油の価格が急上昇すると、世界中が不景気に襲われました。ではなぜ、このような大きな影響が出てしまったのでしょうか? それは経済にとって、石油が“超重要”な資源だからです。

石油には、ふたつの役割があります。ひとつは「燃料」としての、もうひとつは「原料」としての役割です。これらの役割は、人々が生活を送るうえで欠かせないもの。石油の価格が急上昇してしまうということは、世界中の経済が停滞し、人々の生活が貧しく、不景気になってしまうことを意味するのです。

石油の役割【1】燃料

石油は、電気をつくるために使われています。第一次オイルショックが起きる直前、1973年の日本の発電比率のうち、実に7割以上が石油です。電気も経済活動には必須ですから、石油が手に入らなくなったら大きな影響が出るのは想像できますね。

自動車の燃料のガソリンも、同じく石油からつくられています。移動のために自動車を使うのはもちろん、工場に何かを運ぶ、食料を各地域に運ぶ、といったときにも自動車は使われています。石油は、人や物資の移動を支える「動力源」としても大きな役割を果たしているのです。

石油の役割【2】原料

石油は、燃料だけでなく「原料」にもなります。メジャーな石油製品は、プラスチック、化学繊維、合成ゴムの3つです。これらの原料である石油が手に入りにくくなると、多くの製品がつくれなくなってしまいます。

戦後のマイナス成長

戦後の日本経済は、基本的にずっと成長し続けています。しかし3回だけ落ち込んだことがあり、実はその1回にオイルショックが影響しています。

■戦後のマイナス成長(経済が衰退すること)
(1)1973年のオイルショック
(2)1990年代のバブル崩壊後
(3)2008年のリーマンショック後

「経済の成長」といった視点からオイルショックを捉えるときは、下のグラフのように、日本経済の全体像を押さえるとイメージしやすいでしょう。

混同しがちな出来事

オイルショックと混同しがちな出来事をふたつ紹介します。「さすがに間違わないよ」と思うかもしれませんが、実は多くの子が混同していたり、中学入試に出題されたりした事例でもあるので、いま一度チェックしておきましょう。

■オイルショックと混同しがちな出来事
・エネルギー革命
・リーマンショック

エネルギー革命

エネルギー革命とは、エネルギーを生み出す方法に劇的な変化が生じたことを指す言葉です。日本では1960年代に、それまでエネルギーの主役だった石炭が石油に変わりました。「石油が関わる出来事」という点ではオイルショックと似ていますが、混同しないように注意しましょう。

リーマンショック

リーマンショックとは、アメリカの大きな投資銀行「リーマン・ブラザーズ」が2008年に潰れたことをきっかけに、世界中が不景気に見舞われた出来事のことです。「経済が停滞して不景気になる」という点はオイルショックと同じですが、あくまで別の出来事です。起きた年代で区別するなど、混同しないようにしておきましょう。

まとめ

オイルショックという言葉は知っていても、何が起きたのかイマイチわからない……。こうした子は少なくありません。今回紹介した内容をもとに、改めてオイルショックをシンプルに表現すると、「石油価格が上がり不景気になった出来事」といえます。以下の図をもとに、イメージを膨らませてみてくださいね。

※記事の内容は執筆時点のものです

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