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[物理分野]苦手な音と光の問題を攻略する第一歩|なるほどなっとく 中学受験理科

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2020年12月14日 水溜 兼一(Playce)

学習範囲が広く、難しいイメージがある理科の中学入試問題。難関校に多くの子どもを合格させてきたカリスマ講師・小川眞士さんが、子どもの理科力を育むためのヒントを伝えます。

物理分野の「音と光」は、入試で取り上げられる頻度は他の単元と比べて多くないものの、ひとたび問題が出ると、複雑で難しいと感じてしまう受験生が多いようです。光と音について、どのようなことを学習の入り口にすればよいのか、小川先生に聞きました。

原理原則をきちんと学び、基本的な問題をたくさん解く

小学校の理科の授業では、「音と光」については3年生で主に扱う程度で、それほど深くは学習しません。しかし、音と光は身近な理科の現象であり、実験観察が比較的簡単にできる単元でもあるので、出題される頻度も徐々に増えています。

入試で出題される時は、語句などの知識事項を聞くよりも、図・データの読み取りや作図が中心になる傾向があります。音と光は条件を変えていろいろな問題が作れますから、ただ知識を詰め込んだり、問題のパターンを覚えたりする学習では対応できない問題が目立ちます。

音と光の学習は、まず原理原則をきちんと理解することが大事です。そのうえでデータ処理や作図といった実践的な問題に取り組みます。このとき大切なのが問題の見極めです。難しい応用問題に早くからチャレンジするのではなく、基本的な事項を確認したうえで、基本問題をしっかりと解くことが大事です。問題を解くことで、基本的な原理原則に関しての理解が深まります。

音の三要素と音の伝わり方について、まず理解する

音の問題を解くためには、「音とは何か」と「音の三要素」を確認しましょう。

●音とは
物体が振動し、その振動が空気や水などを振動して波となって伝わってきたもの。音を出すものを音源という。

音の振動を波として表したとき、音の三要素は次のとおりです。

●音の大きさ
振幅(振動の幅)が大きいほど、大きな音になる

●音の高さ
振動数(一秒間に振動する回数)が多いほど、高い音になる

●音色(ねいろ)
音の波形の違いが音色になる。音の大きさや高さが同じでも、音源によって波形が異なることで音色がちがう

試験では、音の高低に関する問題がよく出題されます。特に「モノコード(弦を張った器具)」を使い、弦の振動で発生する音に関して、弦の太さ、長さ、張る力の3つの条件を考察した問題が出題されます。弦の太さ、長さ、つるすおもりの数を変えたときの音の高さの違いを比較した表が示され、データを読み取ります。なお、つるすおもりの重さで弦を張る力は変化します。

問題を解くためには、基本法則として下記の2点をまず頭に入れます。

●弦が長く、太く、弦を張る力が弱いほど低い音が出る
●弦が短く、細く、張る力が強いほど高い音が出る

そしてデータをもとに3つの条件の間に、どのような規則性があるかを見つけ出すことがポイントとなります。

このほかに、音の問題では、ドップラー効果が取り上げられることもあります。ドップラー効果とは、近づいてくる救急車のサイレンの音は高く聞こえ、遠ざかる時の音が低くなる、あの現象です。音源が動くことで観測者に届く音の振動数が変化します。出題されるときは模式的な物も含めたいろいろな条件での実験、そしてデータが提示されます。ドップラー効果に関しては、小学校では学びませんが、問題文を読んで条件整理を確実に行えばできる問題です。過去問などを解いて問題の流れを確認し理解しておきましょう

音の問題を解くときは、条件をきちんと整理してデータの規則性を見つけることがポイントになります。図表やデータ読み取りの基本的な問題を解いて基本が身に付けば応用もしやすくなります。

実際の現象を見て光の性質を確かめ、作図をして理解する

光については、まず光の性質を理解することから始めます。光には、次の性質があります。

●直進:まっすぐ進む
●反射:ものに当たると反射する
●屈折:物の境界面で光が曲がる

これらを理解するためには、まず実際の現象を目で見て確かめることが大事です。

光の直進を利用した物としてはピンホールカメラ(針穴写真機)があります。このときピンホールカメラの小さい穴を通って直進してきた光によってできる像は上下左右が反対になります。

この現象を理解するには、ピンホールカメラで実像を見てみるのがおすすめです。ピンホールカメラは、牛乳パックなどで作れますし、実験セットも市販されています。

光の反射については、入射角と反射角が等しいことを確認したうえで、鏡では、鏡に対して線対称の位置に像ができることを確認します。入試では、鏡を複数用いた反射に関する問題が出ることもあります。複数の鏡を並べてみたり、三面鏡を使ったりして、それぞれの鏡によって光がどのように進むか、その結果どのような像が見えるかなどを調べてみましょう。

光の屈折とは、光が水やガラスなど別の物質のなかに入ると、その境界線で折れ曲がって進むことです。水の底が浅く見えるのも、水の中に入れた棒が折れ曲がって見えるのも、光が屈折しているからです。実際に試して、光がどのように屈折することでそのように見えるかを確かめます。

光の屈折に関連して凸レンズの問題が入試でも取り上げられます。平行な光を凸レンズに垂直に当てると、レンズの中心を通る光は直進しますが、それ以外の光は一つの点に集まるように屈折します。このとき光が集まった点のことを焦点といい、レンズの中心から焦点までの距離を焦点距離といいます。

凸レンズの問題は、実際に作図をして像を作ったり、レンズと物体、レンズと像との距離の関係のデータから焦点距離を求めたりします。普段の学習ではまず、レンズを通った光がどのように屈折して像をつくるかを確認し、作図をして基本を理解することが大事です。

音と光の入試問題は、ベースとなる条件についての説明をするため、問題文が長くなることがあります。それだけで問題が複雑に感じるかもしれませんが、原理原則が理解できていれば、ていねいに文章を読めば解けるようになっています。図表については規則性を見つけ、作図は普段から慣れておくこと。そうすれば、これまで取り組んだことのない条件設定の問題が出題されても慌てることはありません。


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※記事の内容は執筆時点のものです

小川眞士
小川眞士 専門家・プロ

小川理科研究所(東京都豊島区)主宰。都内の中学校教諭を経て、四谷大塚進学教室理科講師に。開成や桜蔭の特別コースを約25年間担当、コース生28人全員が開成中学に合格した実績を持つ。教務主任や副室長も務めた。2009年4月に小川理科研究所を開設。主な著書に、『中学受験 理科のグラフ完全制覇』(ダイヤモンド社)、『これだけ理科』(森上教育研究所スキル研究会)、『カンペキ小学理科』(技術評論社)がある。

この記事の著者

雑誌・新聞の編集・ライターを経て、現在は、通信教育企業のキュレーションサイトや大学案内のライティングなどを担当。