連載 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

中堅校受験に迷いがある方へ ―― 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

専門家・プロ
2021年1月06日 やまかわ

中学受験と聞くと、難関校を目指す受験がどうしてもイメージされます。しかし、そうではない、あるいはそのやり方に疑問をもつご家庭は少なくないでしょう。この連載では、『ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す』の著者である亀山卓郎先生に、親子で疲弊しない中学受験をテーマにさまざまなお話を伺います。

中学受験は、大きく「中堅校受験」と「難関校受験」に分かれます。知名度のある難関校にどうしても目が行きがちですが、実は中堅校の数、そして受験生は難関校を上回っています。そうは言っても、「難関校のほうが何かと有利かもしれないし……」と考える親御さんは多いかもしれません。中堅校を目指すことに一抹の不安を感じている方に向け、心に留めておいてほしいポイントをお伝えします。

0か100かの考えは捨てる

「難関校に入れば、エリートコースまっしぐらの幸せな人生を送れるはず」

まずは、こうした「0か100かの考え」を捨てましょう。もちろん、「少しでもいい大学に入ってほしい」という気持ちを否定するつもりはありません。しかし難関大学を卒業したからといって幸せな人生を送れるとは限らないように、中学受験で選んだ学校がその子の人生を決定づけてしまう、なんてことはないのです。

ちなみに、難関大学の代名詞とも呼ばれる「GMARCH」の学生は、全国の大学生のわずか3% 、上位大学に属する大学生は10%程度ともいわれます。では、残りの大学生が“負け組”なのか、卒業後に満足のいく人生を歩めていないのか、というとそれも違いますよね。私の塾(進学個別桜学舎)にも、難関校に進学せずとも整体師になったり、託児所経営という夢を叶え、今でも仕事を頑張っている卒業生がたくさんいます。

学校選びで大切なのは、「子どもが毎日楽しく過ごせる学校はどこか」という視点を持つことです。偏差値や進学実績も気になるかもしれませんが、それは二の次、三の次。まずは6年間を過ごす子どもの姿を思い浮かべてみてください。今はまだ幼い子であっても、中高の環境次第では大きく成長する姿を見せてくれます。授業を受け、多くの先生や友達と話し、部活や学校行事に夢中で取り組んでいくことで、自分の道を自分で考え、困難があっても乗り越えていけるだけの力を身につけていくものです。

繰り返しになりますが、学校のレベルによって子どもの未来が約束されてしまうなんてことはありません。親御さんは、まずは子どもの成長を見据え、可能性を広げるサポートをしてあげてください。もしかしたら「将来、こんな仕事がしてみたい」と子どもが打ち明けてくることがあるかもしれません。このとき、「そんなの叶うわけがない」「生活していけないよ」と否定するのは禁物。「その仕事に就くにはどんな勉強が必要かな?」「こんな経験をしておくと良いかもね」と夢を後押しするような言葉を掛けてあげられると良いですね。

子どもには、先生の相性がある

テレビなどで難関校の名物先生が取り上げられているのを見ると、「中堅校の先生はどうなんだろう……」と不安に感じる親御さんもいるかもしれません。しかし中堅校には中堅校の、難関校には難関校の先生の持ち味があります。

中堅校には、勉強が得意ではない子が一定数在学しています。そして中堅校の先生はこうした子を長年指導してきたため、勉強がキライになる気持ち、そして成績の伸ばし方を熟知しています。つまり、勉強が苦手な生徒の面倒を根気強く見てくれるのが中堅校の先生の持ち味といえ、手厚いサポートによって学力がぐんぐん上がっていく子も珍しくないのです。

一方で、学力レベルの高い子を、さらに上のレベルに引き上げるのが難関校の先生の特徴です。難関校に通う子は、小学校の頃から勉強が得意だった子が多く、レベルの高い授業を望んでいる傾向もあります。授業外でも質問をして理解を深めようとするなど、学習意欲が高い子が多いのです。難関校の先生はこうした生徒の特徴を知っているため、あえて難しいテーマを授業で扱ったりと、知的好奇心をくすぐる工夫を重ねているのですね。

子どもには、先生の相性があります。手厚いケアによって学力を着実に伸ばせる子が、難しいテーマを取り上げる難関校の先生の授業を受け続けたらどうなるかは明白です。先生の特徴は学校ごとにも異なるので、「わが子に合う先生なのか」といった点を学校見学などで確認してみてください。

「ウチの子に当てはまる?」で情報を選別する

中学校を検討している親御さんは、中学受験の情報に対し、「これはウチの子に当てはまるかな」という視点を強く持って触れるようにしましょう。世の中を見渡すと「難関校の受験」をテーマに掲げたニュースなどを多く目にしますが、そもそも偏差値60以上の難関私立中学(首都圏)は25%ほどに過ぎません。女子校に絞ってみると16%程度 というデータもあり、「難関校に合格することだけが中学受験ではない」ということは明らかです。中堅校を考えている親御さんは、「こんな世界もあるんだな」といった気持ちで受験情報に触れるくらいが丁度良いかもしれません。

逆に、難関校を目指す親子向けの情報に惑わされてしまうと、「もっと勉強させないと……」「偏差値が少しでも上の学校に進ませたほうが良いのかな……」と焦り、子どもに過度なプレッシャーを与えてしまいがちです。親から一方的に勉強を強いられた子は、プレッシャーに押しつぶされて勉強が手につかなくなったり、親に反抗するようになったりすることも少なくありません。結果として、親子間に根深い問題を抱えてしまうことも多いのです。もちろん、中学受験の情報にたくさん触れることは悪いことではありません。ただし「わが家にとって役に立つ情報か」という考えもなしに受験情報にあたってしまうと、家庭の受験方針がぶれてしまうリスクがあるので注意が必要です。

受験直前期も注意しよう

中堅校の受験本番が近づくと、「今年の○○中学は志願者が多いらしい」「△△中学の入試が難しくなるらしい」といった情報に右往左往している親御さんを時々見かけます。しかし、こうした情報に焦りを覚える必要はありません。そもそも中堅校の入試は基礎知識を問う問題が多く、例年の出題傾向に違いがない場合もほとんど。中堅校志望の子が合格を勝ち取るためにやるべきことは、まずは入試で6割~7割程度の点数が取れるように各科目の基礎知識をしっかりと身につけることです。受験直前期であっても、やるべきことは変わりません。入試直前になるとどこからともなく飛び出てくる根も葉もない噂に惑わされず、まずは落ち着いて受験勉強に取り組んでみてください。

不安を感じたら「目的」に立ち返る

中学受験は、思うようにいかないことの連続です。子どもの勉強のやる気がでなかったり、成績が伸びなかったり、不安な気持ちを煽るような情報に心が乱されてしまったり ――。「やっぱり、今から無理してでも難関校を目指したほうが……」と焦ることもあるかもしれません。こうしたときは、そもそもなぜ中学受験を目指そうと思ったのか、まずはその想いに立ち返ってみてください。冷静になって振り返ると、「子どもにとってベストな道を進ませたい」「何があってもわが子を支える」という強い想いがそこにあったことに気づくはずです。

子どもが安心して中学受験に臨めるのは、どんなときも側で支えてくれる、親の温かいまなざしがあるからこそ。中堅校を選んだ道に自信をもち、いつまでも変わらぬ姿勢で子どもの成長を見守ってあげてください。

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※記事の内容は執筆時点のものです

亀山卓郎
亀山卓郎 専門家・プロ

かめやま たくろう|明治学院高等学校、成城大学卒業。大手塾・個人塾などで教務経験を積んだ後、2007年に転居のため千葉県及び江戸川区の塾を閉鎖し、台東区上野桜木で「進学個別桜学舎」をスタート。首都圏模試の偏差値で60を切る学校への指導を専門に「親子で疲弊しないノビノビ受験」を提唱している。TJK東京私塾協同組合員、第一薬科大学付属高校上野桜木学習センター長。YouTube「下町塾長会議」構成員。著書「ゆる中学受験ハッピーな合格を親子で目指す」(現代書林)、「めんどうな中学生(わが子)を上手に育てる教科書」(ブックトリップ)、構成・問題監修「LIZ LISA Study Series中1/中2」、監修「おっぱっぴー小学校算数ドリル」(KADOKAWA)

この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。