連載 親子のための、「探究」する中学受験

【冬休み~入試直前期】家庭ですべき対策とマインドセットとは|親子のための、「探究」する中学受験

専門家・プロ
2020年12月23日 中学受験ナビ 編集部

変化の激しい時代でも活躍できる人材を育成するために始まっている教育改革。「思考力・判断力・表現力」が重要だとする方針で注目が集まっているのが「探究型学習」や「アクティブ・ラーニング」です。とはいえ中学受験にはどんな影響があり、どう対応していけばよいのか、不安や疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。この連載では、「探究×受験」を20年以上実践している知窓学舎の塾長矢萩邦彦先生に、次代をみすえた中学受験への臨み方についてうかがいます。

入試が近づいてくると、親子ともに緊張や不安が大きくなることもあるでしょう。そんな時期に、家庭でどのようなことができるのでしょうか。持っておくべき親のマインド、家庭でできる対策について、大手進学塾を経て探究塾を主宰する矢萩邦彦先生に聞きました。

親の態度や声がけが最も影響する

6年生の12月後半、冬休みくらいになると不安・緊張・焦りが出てきます。親も子も心に余裕がなくなる状態になることは避けるべきです。そうならないために、特に大事なのが親のマインドセットです。緊張しているわが子や周囲の環境につられず、冷静に子どもの成長を認めて、励ましになる声がけをすることが何よりも重要です。

「こんなにできていない……」「あと○日しかないのに!」など不安を煽るようなネガティブな言い方は有効ではありませんし、子どもの気持ちをつぶしかねません。大人の態度や声がけが、子どもの毒にもなれば、後押しにもなる。当たり前のことですが、この点を今一度しっかり意識して欲しいと思います。

12月最後の模試が終わると、その時点の偏差値が子どもの実力のすべてに見えてしまう方がいるかもしれませんが、そうではありません。6年生の後半は、一般的に子どもの成長が著しい時期で、子どもたちは心身ともに日々成長しているのです。決して親が子どもの実力や限界を決めつけてはいけません。「わが子は伸びている」。そう信じて、前向きに入試に向かえるようポジティブな声がけをしてあげましょう。

本当に重要なのは子供の成長です。合格はもちろん目標ですが、たとえ志望校に進学できなくても中学受験という経験を通したわが子の成長をしっかり見るという基本姿勢を、大人は絶対に忘れてはいけません。

冬休みから「強化するポイント」を「個人最適化」していく

塾に通っている場合、6年生の冬休みは冬期講習や正月特訓などがあります。内容は入試本番にむけた総復習、過去問演習が多いでしょう。しかし、こうした塾の全体カリキュラムに乗って、「あとは塾にお任せすれば大丈夫」と考えているなら要注意です。

塾のカリキュラムは全受験対策の最大公約数を目指したもので、いわば全体最適化です。しかし苦手分野や好き嫌いなど、受験生の課題は受験生ごとに違うわけですから、個別最適化は重要なのです。

したがって冬休みから、わが子の状況を分析して、強化するポイントを親子で把握することが大事です。「塾の宿題にはないけど、ここをもう一度やっておこう」など、カスタマイズして家庭学習できるとよいでしょう。小学生という年齢を考えると自立は完全ではないですから、親がサポートするという心づもりは必要です。とはいえ、塾講師のように指導するのは親には難しい。そんなときは対話的に、何がどう分からないのかを検討していく方法がおすすめです。

たとえば、「この問題でわからない部分はどこ?」「なんでこの解答になった?」「この質問はどういう意味?」などと、聞きながら子どもと対話していきます。そうすると、理解できていないポイントがみえてきますし、話すことで子どももそのポイントに気づくことができます。何が分からないのかが分かれば、解答・解説がついている問題なら塾講師ではなく親でも対応できると思います。その子ならではの課題をあぶりだし、親子で把握しておくことで、対策を進めやすくなります。

入試本番で力を発揮するためのチェックポイント3つ

自分の強化すべきポイントがみえたうえで、試験で実力を出してしっかり得点するためには、次の3つがポイントになります。

  • 問題の意味がわかる
  • 時間内に終わらせる
  • ケアレスミスをなくす

問題の意味がわかる

「この問題は○○を聞いているという意味だよ」と、問題文を言い換えて伝えてあげると解ける、しかし言い換えないと解けない……。実は入試直前でもこうした子は多いのです。

これは問題文を自力で読解できていないということです。塾の授業では塾講師が問いを変換して伝えてくれることがあるので、「授業ではできたのに……」などと言う子などは、自力で読解できていない可能性が高いです。

対策としては、問題文を丁寧に読み「何を聞かれているか」「どんな風に応えればよいのか」「どこがヒントだとおもうか」を答えるトレーニングがおすすめです。必ずしも解答まで書き込まなくてもいいので、何を問われているかを、親子で対話しながらどんどん確認しましょう。

問題文の読解ができないと、国語以外の教科でもつまずきますから、問題文の意味が分からなかったり、勘違いすることが多いなら最優先に取り組んでほしい事項です。

時間内に終わらせる

成績が伸び切らない子の特徴に「時間が足りなくて書けなかった」という声もよく聞きます。理由として多いものと、その対策を以下にまとめます。

[1]上記のように文章を読解できていないので意味がわからない

[対策]上記読解トレーニングをする

[2]物理的に文章を読むのが遅い

[対策]時間を計るなど、時間を意識して繰り返し文章を読む

[3]順番に問題を解いている

[対策]自分がやりやすい問題からやるなど、取り組む順番を判断しながら解く

[4]問題と問題の間で悩む時間がある

[対策]読み書きを速くより、解いたらすぐ次の問題へという切り替えを速くする

わたしが普段生徒たちをみていて意外と多いなと感じるのが[4]です。探究的な学習のやり方とは異なりますが、入試対策を鑑みると、こうした「もやもや」をいったんおいておいて切り替える方法も意識する必要があります。

ケアレスミスをなくすこと

ケアレスミスは、人によって一定の法則があることが多いです。

「読み間違えがち」「答えを写し間違えがち」「小数の筆算になると間違いがち」「7の段の掛け算を間違いがち」……などなど、自分のケアレスミスにどのような傾向があるのかをしっかり把握することが大事です。

習慣になってしまっているミスは自分では気付かないことが多いので、親が近くで見て一緒にみつけてあげるとよいと思います。自分のやりそうなミスを認知できることで、意識を変えたり、トレーニングの仕方を工夫したりできるようになります。「できる問題を落とさない」のは試験で得点するための重要なポイントのひとつです、しっかり振り返りをしましょう。

入試が近づくとメンタルが不安定になることもありますが、まずは親がポジティブにサポートするという姿勢を強めて欲しいと思います。受験をよい経験にしてあげられるようしっかり向き合っていきたいですね。


これまでの記事はこちら『親子のための、「探究」する中学受験

※記事の内容は執筆時点のものです

矢萩邦彦
矢萩邦彦 専門家・プロ

実践教育ジャーナリスト・知窓学舎塾長・株式会社スタディオアフタモード代表取締役CEO・教養の未来研究所所長。1995年より教育・アート・ジャーナリズムの現場で「パラレルキャリア×プレイングマネージャ」としてのキャリアを積む探究型学習・想像力開発・パラレルキャリアの第一人者。15000人を超える直接指導経験を活かし「受験×探究」をコンセプトにした統合型学習塾『知窓学舎』を運営。「現場で授業を担当し続けること」をモットーに、実践教育ジャーナリスト・教育カウンセラー・探究学習コンサルタントとしても活動している。グローバルビジネス学会・日本アクティブ・ラーニング学会・日本産業カウンセリング学会・キャリアコンサルティング技能士会所属。著書に『中学受験を考えた時に読む本』(編集著:洋泉社)、『先生、この「問題」教えられますか?』 (石川一郎・矢萩邦彦著:洋泉社)など。Yahoo!ニュースで『越境ウォーカー』を連載中。

中学受験を考えた時に読む本先生、この「問題」教えられますか?