連載 「国語力」が、中学受験を左右する!

「普通はこう捉える」。物語文を正しく解釈するためのヒント|「国語力」が、中学受験を左右する!

専門家・プロ
2021年1月25日 水溜 兼一(Playce)

本連載では、国語の講師として、中学受験を目指す子どもたちを長年指導している南雲ゆりか先生が、国語力アップにつながるさまざまな方法を紹介します。

物語文の内容を正しく捉えるためには、主観を排除して客観的に読むことが欠かせません。そのためには、「普通はこう捉える」という力をつけることが必要です。そのためのヒントを南雲先生に聞きました。

内容を正しく理解するために欠かせない「普通はこう捉える」とは?

物語文を客観的に捉えるためには常識的な解釈、つまり「普通はこう捉える」という“約束事”を知っておくことが大事です。自分流の解釈では内容をきちんと把握できず、問いに正しく答えることも難しくなります。では、「普通はこう捉える」とはどういうことなのか? ふたつの例を挙げて説明します。

迷子になった子どもがお母さんを見つけた途端に泣き出した場面で、「泣いている心情」を問う問題が出たとき、「お母さんに会えて嬉しくて泣いている」と答える子がいます。この心情理解が全く的外れというわけではありませんが、答えとしてはいまひとつです。「お母さんに会えて安心したことで緊張が解け、これまでこらえていた心細さや不安が一気にこみ上げてきたから」という答えの方が一般的です。

物語文の中で、主人公が「子どものころに、ひじきの煮物やイワシの丸干しをよく食べさせられた」と述べる部分があった場合、これは何を意味しているのでしょうか? これらはミネラルの豊富な食材なので、「子どもの健康を願う親の思いの象徴」という解釈が成り立ちます。しかし、主観的な読み方しかできないと、「きらいなものを食べさせる、いやなお母さんだ」などと捉えてしまう子もいます。

上記の他にも、少年少女が主人公の物語文では、男子が女子にそっけないふりをしたり意地悪をしたりする場面もおなじみです。このような態度を取るのは、相手のことが嫌いだからとは限りません。むしろ相手に好意があるがゆえにそのような態度をとってしまうケースが多々あります。

また、相手に対していつも強い態度に出る子の心情について、「相手より自分の方が上だと思っているから」ではなく、「相手に対して劣等感を強く抱いているから」が正しい解釈の場合もあります。文脈にもよりますが、いずれも文章をそのまま受け取って主観的に考えていては内容を正しく捉えられません。

物語文を読み解くためには、象徴表現や比喩表現についても、「普通はこう捉える」という力が必要です。下記に挙げたように、生き物や植物、天気の様子が、普通は何を表しているか知っておかなければいけません。

スズメが鳴く
ひばりが鳴く
ひぐらしが鳴く 晩夏・夕暮れ
雑草 目立たなくても精一杯生きている・くじけることなく力強く生きている
雨が止んで晴れ渡る 登場人物の憂鬱な気持ちが消える・困難やトラブルが解決する

このような“約束事”を知らないと、たとえば、ひぐらしをミンミンゼミのように「うるさい」「真夏」「元気がある」といったイメージで捉えてしまい、情緒が読み取れないことがあります。

家庭学習や親子の会話のなかで少しずつ教える

「普通はこう捉える」という“約束事”をもとに登場人物の心情を読み解いたり、象徴表現・比喩表現を理解できたりするかどうかは経験によるところが大きいのですが、小学生は人生経験がまだ少なく、特に大人の心情理解などは難しいものです。

ところが、なかにはあまり指導しなくても、「普通はこう捉える」ことを理解している子もいます。そのような子はたくさん読書をしているケースが多く、いろいろな物語文に触れることで、「普通はこう捉える」という力を自然に身につけていきます。しかし実体験が乏しく読書量も少ない場合は、親が教えてあげる必要があります。

子どもといっしょにテキストを読んで間違った捉え方をしていたら教えたり、親が、自分も似たような経験をしたことがあれば話したりしてあげる。さらに、前述のような、迷子になった子どもがお母さんを見つけて急に泣き出す場面が出てきたときは、「子ども同士で遠出して日が暮れてしまい、走って帰って家に着いた瞬間に泣くのも同じ気持ちからだよね」などと、似たような例を教えてあげることもおすすめです。

学習以外に普段の親子の会話のなかで教えることもできます。たとえば娘さんが、「クラスの〇〇くんがすぐ私にちょっかいを出してくる」と言ったときは、「あなたに関心があるからわざとそういうことをしてくるのよ」と伝えるといった具合です。

「普通はこう捉える」という力をつけるうえで、漫画やドラマも案外役に立ちます。たとえば漫画では、朝の描写で「スズメが鳴いているシーン」が時折出てきます。また、本当はさみしがりやで人恋しいのに強がってツンツンしてしまうキャラクターもおなじみです。物語文で似たような描写が出てきたときに、「あ、あの漫画と似ているな」と思い出すことで読解の助けになると思います。

学習にせよ親子の会話にせよ、心情理解や象徴表現・比喩表現を教えることを毎回意識する必要はありません。少しずつさりげなく教えてあげる姿勢を大事にしていただければと思います。


これまでの記事はこちら『「国語力」が、中学受験を左右する!

※記事の内容は執筆時点のものです

南雲ゆりか
南雲ゆりか 専門家・プロ

南雲国語教室(東京都文京区)主宰。「正確に読む力、伝える表現力」の育成をモットーに小学生の指導にあたっている。東京都生まれ。横浜市の小学校教諭を経て、大手中学受験塾の国語科専任教師に。10年間、最難関コースの指導を担当するとともに、模試や教材の作成にも携わった。主な著書に、『笑って合格する!「中学受験」必勝法』『中学受験の合否を決める! 考える力がつく「国語」勉強法』(いずれもダイヤモンド社)『名探偵コナンの12才までに身につけたい本物の漢字力 1026字』(小学館)がある。現在、朝日小学生新聞で「楽読み楽解き国語の時間」、朝日新聞EduAで「国語のチカラ~読解力アップの教科書~」を連載中。

この記事の著者

雑誌・新聞の編集・ライターを経て、現在は、通信教育企業のキュレーションサイトや大学案内のライティングなどを担当。