今が子育ての一番おもしろいところ|下剋上受験著者 桜井信一さんに聞く 中学受験の「新」常識【6】
オンライン塾「下剋上受験塾」主宰。中卒の両親のもとで育ち、自らも中卒になる。 娘の下剋上のために一念発起して小5の勉強からやり直す。塾には行かず、父娘の二人三脚で偏差値を41から70に上げ、100%不可能とされた最難関中学「桜蔭学園」を目指した。その壮絶な受験記録を綴った『下剋上受験』はベストセラーに。 2017年1月には待望のドラマ化。学習講座「桜井算数教室」「国語読解記述講座」では、のべ2000人の親子が参加し人気を博した。2020年、オンラインの「下剋上受験塾」を立ち上げた。
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親は子供を見て状況を判断する役目を
――中学受験における親の役割とはなんでしょうか。
親には「判断する人」であってほしいです。今は塾やオンラインなどいろいろなツールがありますが、どれも半年続けて変わらなければ半年後も変わりません。たとえば塾に通って成績が上がらなくても、子供は楽しければそのまま続けたいと言いますよね。様子を見たままなんとなく受験まで過ごすのではなく、親としてはそのやり方でいいのか判断してあげないといけないのではないかと思います。
今のやり方を続けて良いものか、きちんと判断するためには親が子供の理解度を見極めなければなりません。だから中学受験は親がつきっきりで見てあげてほしいです。
――子供の理解度を親が見極めるというのは難しそうに聞こえますが…。
子供の理解度を見極めるには親も勉強内容を理解する必要がありますからね。勉強が苦手な親御さんにとってはとくに難しいと思います。
でも親ができない問題を子供だけに勉強させるのは虫が良すぎる気がしませんか。同じバツでも問題を読み違えただけなのと根本的な理屈がわかっていないのとでは大きく違います。一緒に学ぶ気持ちでやってみれば子供の弱点や理解度、気持ちがもっとわかるのではないでしょうか。
子供の勉強には待つ時間も必要
――親がつきっきりで見る場合、気をつけることはありますか。
小学4年生からのペース配分ですね。4年生から本格的に受験を意識するからか、はじめから気合が入りすぎてしまうことも多いような気がします。4年生は個人差が大きいので、子供のペースで勉強を進めることが大切です。
逆に5年生は中だるみしてしまうのでもっとエンジンをかけてほしいと思います。入試では5年生の内容からたくさん出題されますからね。6年生になってから焦るのではなく、5年生でしっかりと受験態勢をつくってください。
――4年生で気合が入りすぎてしまうのはなぜだと思いますか。
ペース配分がうまくできていないからだと思います。子供の学力は少しずつ伸びていくものだと思っている人が多いのではないでしょうか。4年生の段階で5年生の先取り学習までしようとする親御さんがいるのも、できることはどんどん先にやるべきだという考えからかと思います。
でも実際は学んだことが身につくまでにはタイムラグがあります。時間をかけてためていったものがいくつもつながって、あるとき一気に学力が伸びるというイメージです。
とくに算数はかためたコンクリートブロックを縦に積み上げるのではなく、軽石を増やしていくようなものとイメージしてください。軽石のようにスカスカな状態でも数を増やしていくと、あとから横軸でつながっていく。数が増えてつながるまでは待つ時間が必要です。完ぺきを求めず長い目で勉強を見守ってあげましょう。
――先取りしたり完ぺきに積み上げたりするのは良いことだと思っていました。
すべてきちっとすることが正しいと思い込んでいる人も多いですが、几帳面すぎるのは良くありません。「きちっとして損はない」と言われますが、そのやり方では子供がバテてしまいます。先取りしたり積み上げたりするのは子供ですから。
全然わからなくていいものと今日中にわからないとだめなものを分けて考えていきましょう。正しさではなく子供の姿を見てあげてください。
今が子育てのおもしろいところ
――親は子をしっかり見るべきという事ですね。
子供に向き合うのは大変だと思いますが、それもずっと続くわけではありません。中学受験を支える親御さんは、子供の将来まで人生すべてを背負っているように感じているのではないでしょうか。でも実際には親ができるのは大学の入口へ届けるまでくらいだと思うのです。だからこそ中学受験のこの時期につきっきりで見てあげてほしいな、と。
小学校低学年まではとにかく子供をかわいがる子育てですが、小学校高学年から中高生までは子供の人生を左右する子育てです。そのあとは子供にしてあげられることなんてどんどん少なくなっていきますよ。今が子育ての一番おもしろいところ。せいいっぱい向き合って悔いのない子育てを、そして楽しい子育てをしてください。
※記事の内容は執筆時点のものです
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