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氷、水、水蒸気。「水の状態変化」を考えてみよう|なるほどなっとく 中学受験理科

専門家・プロ
2021年3月03日 水溜 兼一(Playce)

学習範囲が広く、難しいイメージがある理科の中学入試問題。難関校に多くの子どもを合格させてきたカリスマ講師・小川眞士さんが、子どもの理科力を育むためのヒントを伝えます。

入試理科では、理科的思考力が求められます。子どもの理科的思考力を養うためには、普段から身の回りのいろいろな事象に興味を持ち、その原因を理科的視点で捉える姿勢が大切です。今回は、さまざまな事象の中から「水」にフォーカスして、小川先生にお話いただきます。

入試でも取り上げられる「水の状態変化」

「水」は、私たちにとって身近な物質の一つです。水は、冷やすと氷になり、熱すると水蒸気になります。物質の状態が、固体・液体・気体と変化することを「状態変化」といいます。中学入試でも取り上げられるテーマですが、水の状態変化の問題では次のグラフがよく扱われます。

グラフでは、水はAB間は固体の氷、CD間は液体の水、EF間は気体の水蒸気の状態です。BC間は、氷がとけているときで、水と氷が同時にある状態です。DE間は、水が水中で水蒸気になっている(沸騰)している状態で、水と水蒸気が同時にある状態です。料理のときに鍋の中でお湯がポコポコ沸いているあの状態ですね。上のグラフのBC間で水温が0℃のまま変化しないのは加えた熱が氷をとかすために使われ、DE間が水温100℃のまま変化しないのは加えた熱が水を沸騰させるために使われるからです。

氷→水→水蒸気の変化を分子レベルで考える

みなさんは、氷が水になり、水が水蒸気になるとはどういうことか考えたことがありますか? その原因を探るには、水を細かな分子レベルで見てみる必要があります。水一滴を細かくしていき、これ以上細かくすると水の性質がなくなるまで小さくしたものを水の分子と言います。つまり、水の分子とは、水をつくる最小の粒です。その大きさは、約2Å(オングストローム)です。(1Åは1㎝の1億分の1)。

もう少し分かりやすく説明すると、水の分子を約1億倍すると2㎝になります。1円玉の直径は2cmで、この長さを1億倍すると2000㎞となり北海道から鹿児島ぐらいまでの長さになります。つまり、日本列島と1円玉の大きさの割合は1円玉と水の分子の大きさの割合となります。

さて、水の分子の動きをわかりやすく伝えるために、水の分子一つひとつを、みなさん一人ひとりに置き換えて説明します。

固体(氷)は、図のように皆さんが、授業中に席に座っているような状態です。多少動いているものの、整然と並んでいますね。液体(水)は、休み時間に教室の中をみなさんがあちこち動いているような状態です。気体(水蒸気)は、校庭でみなさんがいろいろなところを飛び跳ねている状態と考えられます。

つまり固体では、分子はそれほどエネルギーを持たず、互いにきちんと並んでいます。ここに熱エネルギーを加えると、分子は少しずつ運動が激しくなり、やがてバラバラに動くようになります。これが液体の状態です。

水の沸騰と体積

水(液体)に、さらに熱を加えると水の分子運動がより活発になり、気体、つまり校庭を飛び跳ねる感じになります。このとき水中のいろいろなところで一つ一つの分子がバラバラになって飛び出していくようになります。これが沸騰で、水中で水が水蒸気になることです。

これらのことから、固体→液体→気体となるにつれて、水の分子(みなさん)が動く範囲が広くなることがわかりますね。ちなみに、固体から液体、液体から気体へと変化しても、もともとの分子の数も重さも変わりませんが、動く範囲が広がります。ここで分子が動く範囲が広がることで、水が水蒸気になるときには体積が1700倍にも増えるのです。

水は水面でも水蒸気になっています。これは蒸発といい、コップに入れていた水がいつの間にかなくなってしまう現象です。蒸発も沸騰も同じように水が水蒸気になる現象ですが、蒸発は水面で、沸騰は水面ではなく水中で水が水蒸気になる現象です。

水中で水が水蒸気になると、水中で体積が増加するので、そのぶん水面が上昇します。ここで水面には大気圧(空気の重さによる圧力)がかかっています。水が水蒸気になるとき体積は大きくなります。ここで、水が水中で大きくなろうとする力が水面にかかる大気圧の力を上回ったときはじめて水は水中で水蒸気になります。そのとき大きなエネルギーが必要となります。このエネルギーは1gの氷が水になるときに必要なエネルギーである約80カロリーの約6.8倍となる540カロリーとなります。ちなみに1カロリーとは1gの水が1℃上昇するのに必要な熱量です。

気圧って何? ―― 空気にも重さがある

普段意識することはありませんが、実は空気にも重さがあります。空気1Lの重さは約1.2gです。水1Lの重さは1kgなので空気の重さは水の約3/250です。普段私たちは空気の底に住んでいて、私たちの上には厚い大気の層があります。その厚さぶんの空気の重さが私たちにかかっています。1気圧は海抜0mの海水面にかかる空気の圧力で、1気圧の空気の重さは1㎠あたり約1㎏のとなります。気圧は高いところに上がることで高度(海抜)が上がれば、その上の空気の層が薄くなるので低くなります。たとえば高さが3776mの富士山の山頂では0.63気圧しかありません。富士山の山頂では水面を押す力が少なくなるので水が水中で水蒸気になりやすくなります。このため富士山の山頂で水を温めると88℃ぐらいで沸騰します。

ここまで水の状態変化について考えてきました。「なぜ変化するのか?」を考えることで、分子や体積、気圧といった事柄を理解することにもつながります。このように一つの事象をじっくり掘り下げることが、他の単元を学ぶことにも役立つのです。


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※記事の内容は執筆時点のものです

小川眞士
小川眞士 専門家・プロ

小川理科研究所(東京都豊島区)主宰。都内の中学校教諭を経て、四谷大塚進学教室理科講師に。開成や桜蔭の特別コースを約25年間担当、コース生28人全員が開成中学に合格した実績を持つ。教務主任や副室長も務めた。2009年4月に小川理科研究所を開設。主な著書に、『中学受験 理科のグラフ完全制覇』(ダイヤモンド社)、『これだけ理科』(森上教育研究所スキル研究会)、『カンペキ小学理科』(技術評論社)がある。

この記事の著者

雑誌・新聞の編集・ライターを経て、現在は、通信教育企業のキュレーションサイトや大学案内のライティングなどを担当。