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雲や雪はなぜ白く見える? 身の回りの「色」に注目してみよう|なるほどなっとく 中学受験理科

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2021年2月24日 水溜 兼一(Playce)

学習範囲が広く、難しいイメージがある理科の中学入試問題。難関校に多くの子どもを合格させてきたカリスマ講師・小川眞士さんが、子どもの理科力を育むためのヒントを伝えます。

入試理科では、「理科的思考力」が求められることを前回の記事でお伝えしました。では、子どもの「理科的思考力」を養うためにはどうすればいいのか? 小川先生は、普段から身の回りのいろいろな事象に興味を持ち、理科的視点で捉える姿勢が大切だと言います。そこで今回は、さまざまな事象の中から「色」にフォーカスしてお話いただきます。

「理科的思考力」は、普段の生活のなかで養える

近年の入試理科では、仮説、観察・実験、結果の考察について述べた文章を読み、条件を整理しながらさまざまな問いに答える問題が増えています。また、小学校や塾では習わないテーマを扱った問題も出題されます。これらの問題を解くためには、普段から身の回りの事象を「理科的視点で考える力」を養う必要があります。

「理科的視点で考える」とはどういうことかというと、身の回りで起こる現象には、その原因がありますから、それを考えてみることです。ところが今の子どもたちは、「なぜそうなるのか」を自分で考えてみる姿勢が弱いと感じます。また、単純に知識として、塾のテキストなどに書かれた原因と結果を覚える傾向があり、受験勉強においても「暗記すればよい」という風潮を生み出しています。

しかし中学や高校の中には、観察や実験に力を入れ、仮説から結果まで生徒自らが考えて調べる授業に力を入れているところもあります。また、大学入試も今後は記述問題などを通して、受験生の思考力を問う問題が増えていくことが予想されます。ですから家庭では、小学生のうちから理科的視点で考える力をお子さんにつけさせることを意識していただきたいと思います。

理科的視点で考える力をつけるためには、科学館や博物館などに出かけてみることもおすすめですが、普段の生活の中でもこの力を養うことは十分可能です。ぜひ、身の回りの事象についてなぜそうなるのかを親子で考え、調べてみてください。

なぜ、ものが白く見えるのかを考えてみる

理科的視点を養う題材の一つとして、身の回りにあるものの「色」に注目することもおすすめです。たとえば、白色。空に浮かぶ雲、ろうそくを吹き消したときに出る煙、普段飲んでいる牛乳、夏に食べるかき氷、冬の景色を銀世界に変える雪、これらはすべて白く見えますね。では、なぜ白く見えるのか、考えたことはありますか?

雲は水蒸気が上空で小さな水滴や氷の粒になって浮いたものです。水や氷はかたまりだとほとんど透明に見えますが、その細かい粒に光が当たると白く見えます。雪も小さな氷の結晶なので白く見えます。同様に、冷蔵庫でできた氷のかたまりをかき氷にすると、やはり白く見えます。牛乳が白く見えるのは、脂肪などの小さな粒子がたくさん漂っているからです。

では、ろうそくを吹き消したときに出る煙が白く見えるのはなぜでしょう? ろうそくは炎の熱でとけた”ろう”(液体)が芯を伝わり、炎の内炎で気体となり、この気体が燃えています。ろうそくの火を消すと、内炎でできていた”ろう”の気体が冷やされて液体や固体の小さな粒になり、それが白い煙となって見えます。

ここですばやくこの”ろう”の気体を含む白い煙に火をつけると、図のように火がろうそくの芯の部分に飛ぶように移動してろうそくに火がつきます。

さて、水や氷のかたまりは白く見えませんよね。ではなぜ雲をつくる水や氷、ろう、脂肪の小さな粒が白く見えるのでしょうか。それは細かい粒それぞれに光が当たると、光がそれぞれの粒で乱反射する(さまざまな方向に跳ね返る)からです。

光は鏡などの物体に当たると反射します。この時、光が鏡に入る入射角と反射するときの反射角は同じになります。鏡のように平らな面に光線が当たると、当たった光線が同じ方向に反射するので、きれいに反射した光線となります。しかし、光線が当たった面がでこぼこだったり曲面だったりすると光線はいろいろな方向に反射してしまいます。このような反射を乱反射といいます。

光が当たった物体が見えるのはその物体が光を乱反射しているからで、物体に青や赤の色が付いて見えるのは、その物体がその色を乱反射させているからです。本記事で取り上げている水滴などは光を乱反射しているので白く見えます。

同様の現象は他にもあります。たとえば透明のガラスを粉々に砕くと、ガラスの粉が白く見えるのも同じ理由によるものです。また、晴れていても都会の空は白っぽく霞むことがあるのに対し、田舎の空は真っ青です。その理由は、都会の空気は排気ガスや煙などの小さな粒がたくさん浮かんでいて、日光が当たると乱反射するからです。

このように「ものが白く見える」という現象一つとっても共通する原因があります。そして共通する原因がわかることで、他の白く見える事象に出合ったとき、「もしかしたら、この事象も同じ原因かもしれない」と推測することができます。また、たとえば雲でも、黒っぽく見える積乱雲を目にしたとき、「ものが黒く見えるのはなぜなのか?」と他の色について思考を巡らすこともできます。一つの事象の原因を探ることで、考える力がつき、そこから知識が広がっていくのです。


これまでの記事はこちら『なるほどなっとく 中学受験理科

※記事の内容は執筆時点のものです

小川眞士
小川眞士 専門家・プロ

小川理科研究所(東京都豊島区)主宰。都内の中学校教諭を経て、四谷大塚進学教室理科講師に。開成や桜蔭の特別コースを約25年間担当、コース生28人全員が開成中学に合格した実績を持つ。教務主任や副室長も務めた。2009年4月に小川理科研究所を開設。主な著書に、『中学受験 理科のグラフ完全制覇』(ダイヤモンド社)、『これだけ理科』(森上教育研究所スキル研究会)、『カンペキ小学理科』(技術評論社)がある。

この記事の著者

雑誌・新聞の編集・ライターを経て、現在は、通信教育企業のキュレーションサイトや大学案内のライティングなどを担当。

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