連載 「国語力」が、中学受験を左右する!

2021年入試分析 国語の問題はどう変化したか|「国語力」が、中学受験を左右する!

専門家・プロ
2021年3月24日 水溜 兼一(Playce)

本連載では、国語の講師として、中学受験を目指す子どもたちを長年指導している南雲ゆりか先生が、国語力アップにつながるさまざまな方法を紹介します。

2021年入試の国語の問題はどのような傾向があったのでしょうか? 南雲先生が問題分析を通して注目したポイントを伝え、これから受験を目指すご家庭に向けてアドバイスします。

説明・論説文のテーマに「コロナ禍」が登場

今年はコロナ禍の影響により、例年とは異なる学習環境のなかで入試を迎えました。授業の進行に与えた影響などを考慮して難易度が下がるのではという予想もありましたが、国語の入試問題は全体的に例年よりも特段易しかったという印象はありません。素材文や選択問題の長文傾向も変わらない印象です。

今年ならではの特徴として注目したのは、説明文・論説文でコロナ禍に言及した文章が取り上げられたことです。たとえば、早稲田中ではソーシャルディスタンスを取りながら他者とどう連携していくかを述べた文章が出ました。また、海城中ではドイツのメルケル首相の国民へのスピーチが扱われました。コロナ禍による社会の変化や今後の生き方について考えさせる文章が多く、コロナの収束がまだ見えない状況を考えると、今後もコロナ禍に言及した素材文は引き続き取り上げられるでしょう。

近年の入試問題は、社会で起きている問題について述べた新書などから出題されることが多いので、ニュースや子ども新聞などを見て情報を得ることを心掛けてください。たとえば、コロナ禍の及ぼす影響として、格差社会、コミュニケーションのあり方、経済、産業構造の変容などを論じているものには目を通しておくべきです。また、オリンピックも行われる見通しなので、スポーツ、他国との交流や異文化理解、グローバリゼーションなどにもアンテナを張っておきたいところです。

物語文では「親の心情」を考える問題

物語文は少年少女が主人公で、友情をテーマにした作品が相変わらず主流です。しかし、今年の入試問題では、父親や母親が主人公の作品を読んで“親の心情”を読み取らせる問題が目立ちました。たとえば、駒場東邦中では登校拒否の子を持つ母親の心情を、青山学院中では自店の経営に失敗した父親の心情を問う出題がありました。大人の心情を読み解く問題は、近年増える傾向にあります。普段から読書のバリエーションを広げる、親子の会話のなかで大人の心情を伝える、といったことが必要でしょう。

物語については、中学入試でよく出題される作家の新刊および、今年の入試で扱われた作品も引き続き出題される可能性が高いので、時間の許す限り読んでおきたいところです。

身近なことがらを取り上げた問題や、受験生の体験を記述する問題

従来の物語文や説明文・論説文の問題と異なるものとして、横浜雙葉中では味噌汁の調理方法を切り口にした問題が、共立女子中では手紙の書き方をモチーフにした問題が出たことも注目すべきポイントです。これらは小学校の家庭科と書写(書き方)の授業で習う内容です。手紙の形式については、塾の教材でも一度は触れますが、繰り返し学ぶわけではありません。「学校で学ぶこともしっかり身に付けてほしい」という中学校側の意図を感じました。

記述問題では、素材文の内容について、受験生自身の体験を交えて答える問題も出ています。このような問題は、暁星中、頌栄女子学院中、東洋英和女学院中などでよく出題されますが、今年は増加しました。たとえば、世田谷学園中では「私が大人になった瞬間」がテーマの素材文を読んで、受験生が大人に一歩近づいたと思った瞬間とその理由を記述させる問題が出ました。国語の入試において記述問題の出題は減っていないので、今後も記述対策はぬかりなくやっておく必要があります。

少し前の入試では、大学入試改革を鑑みてグラフの読み取りや教科横断型の問題を出す学校もありましたが、そのような問題は減少しています。今年の大学入学共通テストの国語の問題は、従来のセンター試験と同じような問題構成でした。中学入試もしばらくは従来型のオーソドックスな国語の問題が大多数を占めると思われます。

語句知識や漢字の問題が変化。積極的に語彙を増やす努力を

語句の知識問題は、いろいろな学校で出題されています。読解の本文中に傍線を引き、その意味を問う形式のものが大変多く見られます。吉祥女子中では、「しれっと」「うかつに」「安請け合い」の意味を選択肢から選ぶ問題が出ました。このような問題は、日ごろから大人と会話したり文章を読んだりしている子にとっては簡単だと思いますが、いずれも小学生が日常的に使う言葉ではありません。配点はさほど高くありませんが差がつきやすく、1点を争う入試ではぜひ正解できるようにしておきたいものです。

漢字については、これまで普通の書き取り問題を出していた学校が、大学入学共通テストと同じような出題をし始めています。たとえば、浦和明の星中です。「シュ長」「円バン」「前テイ」など素材文に出てくる単語の一部がカタカナ表記になっています。問題では、カタカナで表記されているのと同じ漢字を含むものを選ばせます。

■例
シュ長→
ア:評価にシュ観が入る
イ:祖母にシュ芸を習う
ウ:へんやつくりを部シュという
エ:寒さに強くなるよう品シュ改良をする

語句の意味を問う問題は、今後もいろいろな学校で出題されるので、語彙力のテキストはもちろん、耳慣れない言葉に出合ったら意味を確認しておくなど、積極的に語彙を増やす努力をしてください。言葉や漢字をただ暗記するだけでなく、実際に使う力も求められています。例文ごと書き写す「語句ノート」を作成することもおすすめします。


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※記事の内容は執筆時点のものです

南雲ゆりか
南雲ゆりか 専門家・プロ

南雲国語教室(東京都文京区)主宰。「正確に読む力、伝える表現力」の育成をモットーに小学生の指導にあたっている。東京都生まれ。横浜市の小学校教諭を経て、大手中学受験塾の国語科専任教師に。10年間、最難関コースの指導を担当するとともに、模試や教材の作成にも携わった。主な著書に、『笑って合格する!「中学受験」必勝法』『中学受験の合否を決める! 考える力がつく「国語」勉強法』(いずれもダイヤモンド社)『名探偵コナンの12才までに身につけたい本物の漢字力 1026字』(小学館)がある。現在、朝日小学生新聞で「楽読み楽解き国語の時間」、朝日新聞EduAで「国語のチカラ~読解力アップの教科書~」を連載中。

この記事の著者

雑誌・新聞の編集・ライターを経て、現在は、通信教育企業のキュレーションサイトや大学案内のライティングなどを担当。