連載 しあわせな中学受験

学習意欲をどう育む? 最終学歴よりも、最新学習歴の更新が大事|しあわせな中学受験にするために知っておきたいこと

専門家・プロ
2021年3月31日 中曽根陽子

私は最近話題のラジオアプリ、Clubhouse(クラブハウス)で「マザークエストナイト」というルームを開いています。1回目のゲストは、いもいも教室のイモ二イこと、栄光学園のカリスマ数学教師・井本陽久先生をお招きしました。そして、先日開催した2回目では「最終学歴より、最新学習歴の更新」を謳われている本間正人先生をお招き、学習意欲の育て方について伺いました。今回はそこで話題に上がった内容から一部を紹介します。

最終学歴の獲得よりも、最新学習歴の更新

教育学を超える学習学を提唱されている本間先生は、これからの時代は特に「最新学習歴の更新」が不可欠だと言います。なぜなら、学校で教育を受ける時間は人生でわずかな時間だからです。

以下の図は横軸が年齢、縦軸が時間(1日24時間)を示しています。学校に通って、教科学習をする時間は図の中の濃いオレンジ色の部分です。人生100年時代といわれる昨今、社会に出たあとの時間の方が圧倒的に長いことを示しています。加えて、これから先はより一層社会の変化も激しくなることが予想されます。濃いオレンジの期間(学校で学んだ時間)だけを頼りに、人生を生きていくのは難しくなっているのです。

20世紀は何だかんだで、良い大学から良い企業へ就職するのが成功という価値感で、より高い最終学歴を持つことが幸せへの切符だと信じられてきました。しかしVUCA(※)の時代です。今、良い企業だとしても、未来もそうあり続けるとは限りません。変化に対応し、技術革新についていける会社は、持続的に繁栄していける可能性がありますが、過去の成果に甘んじて、そのやり方をずっと踏襲していると変化に立ち遅れることになりかねません。

※VUCA:Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つの単語の頭文字からなる造語。将来の予測が困難になっている状態を示す

人も同じです。今ほど不確実性がなく、変化のスピードもゆっくりで、寿命も長くなかった時代には、最終学歴の切符でなんとかなったのかもしれません。しかしそうではない今、過去の最終学歴の”貯金”でずっと生きていくのは無理があるのです。

仕事で結果を出していくためにも、激変する社会についていくためにも、社会に出てからも学び続け、自分自身をアップデートしていくことが欠かせません。ましてや、これから社会に出ていく子どもたちは、私たち以上に学び続けること ―― つまり学習歴を更新し続けていくことが欠かせないということです。自ら学ぼう、学び続けようという意欲が大切です。

学ぶ意欲の根本は、興味・関心

では、学ぶ意欲はどこから生まれるのでしょう。「必要に迫られて……」ということも、もちろんあります。試験が目の前に迫っているとか、その知識がないと仕事を失うとなれば、否が応でも勉強もします。でも意欲というのは、評価や報酬より興味や関心があるときのほうが高まるし長続きします。

多くの親御さんが、子どもがやる気を見せないことに悩んでいるようですが、そのやる気はもしかしたら、「親が向いてほしい方向のやる気」を期待していることも多いのではないでしょうか。たとえば「学校の宿題やテスト勉強などへの意欲を持ってほしいと思っている。でも子どもは、ゲームや遊びなどほかのことにはやる気を見せるけれど、勉強には意欲を示さなくて困る」というように。

しかし本間先生は、「ゲームも学習のひとつ。そのゲームの中に、その先のなにかにつながる“種”があるかもしれない」と言います。実際、オンラインゲームの中では世界中の人とつながって、コミュニケーションを取りながらゲームをするので、コミュニケーションを取るために子どもが自ら翻訳機能を使いながら会話をしていた、なんてもこともあるわけです。ゲームから世界が広がり、将来の仕事につながる可能性もおおいにあります。

なので、本間先生は「ゲームのやりすぎには注意が必要ですが、子どもが何に関心を示しているのかをよく知り、さらにその先に世界が広がるような会話をすることが大切」と、ゲームを否定せず、コミュニケーションを取ることをすすめます。

つまり子どもの興味・関心を否定せず、そこからさらに広げたり深めたりできるような質問をしたり、関連のあることを見せたりして、子ども自身の学ぶ意欲が高まるガイドをするのが親の役割というわけです。

子どもの学習意欲を高めたい? まずは親自身が最新学習歴の更新を

最新学習歴の更新は子どもだけでなく、大人の私たちにも必要なことです。eラーニングの進歩で、全国・全世界どこにいても、自分の時間に自分の学び方で学習することが可能になってきているのですから、ここからは更新し続けた人と、何もしなかった人との差は広がるばかりです。

まず私たち自身が、学習意欲を保って最新学習歴を更新し続ける姿を見せることこそが、子どもの学習意欲を高める早道なのではないでしょうか。なにも難しいことではありません。たとえば今ある残り物の材料で、おいしい料理ができるかを工夫することだって立派なアップデートです。

みなさんもコレまでに強く意識はしていないかもしれませんが、仕事や生活を通して、日々新しい情報を得ながら、自分を更新してきたはずです。これから、どれだけ楽しみながら学習歴の更新ができるか、お子さんと競ってもいいかもしれませんね。「子どもに学んでほしいと思ったら、自分が学ぶことから」これが、この日の結論でした。


これまでの記事はこちら『しあわせな中学受験にするために知っておきたいこと

※記事の内容は執筆時点のものです

中曽根陽子
この記事の著者
中曽根陽子 専門家・プロ

教育ジャーナリスト。小学館を出産のため退職後、「お母さんと子供達の笑顔のために」をコンセプトに数多くの本をプロデュース。子育て中の女性の視点を捉えた企画に定評がある。教育雑誌から経済誌、紙媒体からWeb連載まで幅広く執筆。中学受験に関しては「受験を親子の成長の機会に」という願いを込めて『1歩先行く中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』『後悔しない中学受験』(共に晶文社)『子どもがバケる学校を探せ』(ダイヤモンド社)などを執筆。教育現場への豊富な取材や海外の教育視察を元に、講演活動やワークショップもおこなっており、母親自身が新しい時代をデザインする力を育てる学びの場「Mother Quest」も主宰している。近著は『成功する子は「やりたいこと」を見つけている 子どもの「探究力」の育て方』(青春出版社)

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