連載 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

中堅校志望の悩み[3]宿題の答えを写していたら? ―― 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

専門家・プロ
2021年4月12日 やまかわ

中学受験と聞くと、難関校を目指す受験がどうしてもイメージされます。しかし、そうではない、あるいはそのやり方に疑問をもつご家庭は少なくないでしょう。この連載では、『ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す』の著者である亀山卓郎先生に、親子で疲弊しない中学受験をテーマにさまざまなお話を伺います。

中堅校受験で抱えがちな悩みを取り上げ、解決策を紹介していきます。今回は次のふたつのケースについて見ていきましょう。

・宿題の答えを写していたら?
・先生とのなれ合いが心配で……

宿題の答えを写していたら?

【ケース1】小学5年生の子をもつ共働きの親御さん
子どもの勉強を見る時間がなかなかとれません。宿題をやっているように見えるものの、どうやら答えを写しているような気がします。自分で問題を解いて、自己採点して、間違えた問題を復習して、といった学習習慣を身につけてほしいのですが……。答えを隠して叱りつけるのも、なんか違うような気がして困っています。

間違いは「成長のチャンス」

宿題の答えを写してしまう、というのはできるだけ早く直したいことですね。ただ、その前に親御さんに考えてほしいことがあります。「間違いはダメなもの」と思っていませんか? そもそも間違った問題について叱られてばかりの子は、「また間違えたら怒られちゃうから、答えを写しておこう……」と考えてしまうものです。

そこで「間違ったことを叱ったことがあるかも」と心当たりのある方は、まずは間違えた問題は“成長のチャンス”と考えてみてください。特に今回のお悩みのように「問題を解く → 子どもが自分で採点する → 間違えた問題を復習する」といった自発的な学習サイクルで子どもに勉強させたいのであれば、子どもが間違えた問題に対し、まずは親御さんがそれを「ポジティブに捉えてあげること」がはじめの一歩です。

子どもに“騙される”

私の塾(進学個別桜学舎)でも、宿題を丸写ししてくる生徒がときどきいます。ただ、こうした生徒をむやみに叱りつけることはしません。「怒られちゃったから、次はもっと『見つかりにくい方法』を探そう」と考えてしまうなど、大人がただ叱るだけだと逆効果になるケースが多いからです。

こうしたとき大切なのは、「大人の目はごまかせない」ということをきっちりと理解させること。そのためには、大人が子どもにあえて“騙されてみる”ことが必要です。たとえば子どもが答えを丸写ししているのを知っていても、あえて注意しない。「途中式もちゃんと書けているし、正解もしてるね」と、まずは満足しているように振る舞うのです。

その後、宿題を写しているような子は塾の小テストや模試で散々な点を取ってしまいます。ここが、チャンスです。「いつもは宿題ができてるのに、このテストではどうしてできなかったの?」と聞いてみます。「緊張してできなかった……」「ド忘れしちゃった」など言い訳が出てくるかもしれませんが、今回は親が折れず、「結局は宿題をちゃんとやっていなかったということだよね?」といった話にもっていくのです。

このとき私であれば、「あれだけ信用してたのに、オレを騙していたってことか。残念だな」といった形で生徒に向き合います。そのうえで「ずっと宿題の答えを写していたよね。いつになったらその姿勢を変えるか、オレはずっと待っていたんだよ」と、大人はすべてお見通しといったことを伝えます。多くの場合、こうしたステップを踏むと大きく反省し、学習態度を改めていきます。

「身近な人を騙してしまった」といった気持ちは、その後の行動を自分から大きく変えるきっかけを子どもに与えます。親御さんとしては、怒りたい気持ち、そして注意したい気持ちをまずはグッとこらえ、はじめのうちは“大人な対応”を心掛けてみてください。そしてタイミングを見て、ガツンと子どもに雷を落としてあげるのです。一見すると遠回りに見えても、こうしたステップを踏んでいけば、親が気にかけなくても子どもはしっかりと目の前の宿題に向かうようになっていきます。

先生とのなれ合いが心配で……

【ケース2】個別指導に通っている小5の子の親
子どもが先生となれ合いになっていないか心配です。生徒を担当する講師が学生講師のようです。子どもは先生のことを慕っているようですが、成績がなかなか上がりません。このまま同じ先生で大丈夫でしょうか?

なれ合いは決して悪いことではない

まずお伝えしたいのが、なれ合いは決して悪いことばかりではないということです。たとえば塾の先生が好きで「塾に通うのが楽しい!」と感じる子は少なくありません。私の塾では、2時間自習室にこもったものの、結局は友達や先生との話が楽しすぎて30分しか勉強できなかった、といった子がときどきいます。ただ、こうした子は塾に来るのを楽しみにしているようで、授業がない日も自習室に来ることを続けるうちに、勉強に集中できる時間が1時間、2時間と少しずつ増えていきます。つまり、始めこそなれ合いだとしても、子どもにとって塾に通うきっかけとなるのであれば、それはむしろポジティブに捉えても大丈夫ななれ合いといえるのです。

今回のケースのように、個別指導の先生となれ合いになっているように見えても、子どもが楽しく塾に通っているのであればまずは第一段階としてはOKです。そこがクリアできてはじめて、塾で学んだ成果が成績に表れているかといった点を考え始めます。

確認してほしいポイント 

手前味噌かもしれませんが、私の塾の学生講師のなかにも、いわゆる「プロ講師」に匹敵するだけの力量を持つ講師がたくさんいます。子どもたちと年代が近いということもあり、お兄ちゃん、お姉ちゃんとして慕われ、子どもと信頼関係を築いているケースも少なくありません。

そのため学生講師だからといって一概に不安がる心配はないかもしれませんが、ベテランの講師と比べるとどうしても心配に感じてしまう親御さんがいるのも理解できます。こうした場合には塾に相談して全く構いませんが、そのときにまずは確認していただきたいことがふたつあります。

宿題ができているか

まず、子どもがしっかりと宿題に取り組めているか確認してみてほしいと思います。例えていうと、塾の授業はお医者さんの診察を受けるようなもの。そして宿題は、処方された薬を飲むことと似ています。このとき宿題をやっていないというのは、薬を飲んでいないのと一緒。特に中学受験は、家庭の協力がどうしても必要です。まずは塾で出された宿題に子どもがしっかりと取り組んでいるかチェックしてみてください。

「受験コンセプト」からずれていないか

そもそもどうして中学受験を始めようと考えたのか、子どもに進学させたい学校はどこだったのかなど、はじめに決めた「受験コンセプト」から今の考えがずれていないかといった点も確認してほしいと思います。

「受験ノート」をつくるのなかでもお伝えしましたが、受験を始めた理由などを常に心に留めておくことは欠かせません。しかし、色々な情報やウワサなどに流され、はじめこそ「子どもがイキイキと過ごせる学校であれば偏差値は気にしない」と考えていたものが、いつの間にか“偏差値が第一”になっていた、という話はよくあります。このように受験コンセプトからずれていってしまうと、少しでも良い環境、少しでも良い講師 ―― と考えていってしまい、結局はそもそも”良い講師”とは何か、といったことも考えないまま闇雲に「上」を目指して行ってしまうことになります。これでは、親子ともに消耗してしまうことでしょう。

そこで「この先生で大丈夫かな……」と不安に思ったときこそ、まずは受験コンセプトに立ち返ってほしいと思います。そのうえで目標を親子で改めて確認し、「まずはこれをできるようにしようね」といった小さな目標を乗り越えていくことを目指しましょう。

先生を変えたり、塾を変えたり、といったことは一見すると“特効薬”のように映るかもしれませんが、その副作用は小さくありません。上へ上へと目指すのではなく、まずは落ち着き、いまの環境でできることに目を向けてみてください。ちなみに子どもを叱ったり、勉強を教えようとしたりと、こうした焦りを親が子どもにぶつけてしまうと中学受験は上手くいきません。子どもの様子を冷静に把握し、ときに塾との話し合いを重ねたうえで、子どもと決めた目標に向かって後押しをしてあげましょう。


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※記事の内容は執筆時点のものです

亀山卓郎
亀山卓郎 専門家・プロ

かめやま たくろう|明治学院高等学校、成城大学卒業。大手塾・個人塾などで教務経験を積んだ後、2007年に転居のため千葉県及び江戸川区の塾を閉鎖し、台東区上野桜木で「進学個別桜学舎」をスタート。首都圏模試の偏差値で60を切る学校への指導を専門に「親子で疲弊しないノビノビ受験」を提唱している。TJK東京私塾協同組合員、第一薬科大学付属高校上野桜木学習センター長。YouTube「下町塾長会議」構成員。著書「ゆる中学受験ハッピーな合格を親子で目指す」(現代書林)、「めんどうな中学生(わが子)を上手に育てる教科書」(ブックトリップ)、構成・問題監修「LIZ LISA Study Series中1/中2」、監修「おっぱっぴー小学校算数ドリル」(KADOKAWA)

この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。