連載 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

高校入試、大学入試のいま ―― 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

専門家・プロ
2021年4月16日 やまかわ

中学受験と聞くと、難関校を目指す受験がどうしてもイメージされます。しかし、そうではない、あるいはそのやり方に疑問をもつご家庭は少なくないでしょう。この連載では、『ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す』の著者である亀山卓郎先生に、親子で疲弊しない中学受験をテーマにさまざまなお話を伺います。

中学受験を考えている親御さんのなかには、大学入試までを見据えて子どもの進路を考えている方が少なくありません。これ自体は、子どもの将来をしっかりと考えているという点で素晴らしいことです。しかし、もしもそのプランが親世代の“受験感覚”をもとに設計されたものだとしたら、それは少し危険かもしれません。なぜなら高校入試や大学入試は、親御さんが想像する以上に変化しているからです。私の塾(進学個別桜学舎)では高校受験、大学受験の対策もしていますので、今回は趣向を少し変え、高校・大学入試の「いま」に焦点を当ててお伝えします。

高校入試 ―― 中1から「受験スタート」

私立高校の入試は、中学の内申点はほとんど関係ない。入試本番の一発勝負で高得点を取れば合格できる。こうした考えがかつては主流でした。中3の一学期まで部活をがんばって、そのあと全力で勉強し合格を勝ち取る ―― といったプランであっても合格に間に合う子が多かったのです。

しかし、現在はそうはいきません。高校受験での内申点の比重が高まっていることもあり、中1から通知表の成績を上げ、受験に向けた行動を早め早めに取らなければ、高校入試の本番で大きなハンデを背負ってしまう可能性があるのです。

たとえば一部のトップ校を除き、都内のほとんどの私立高校では「併願優遇」という制度を一般入試で実施しています。

併願優遇
志望する高校が設けた内申点の基準を満たす受験生が利用できる制度。学校によっては入試本番の点数に30~40点ほど上乗せでき、合格にかなり有利に働く。都立高校との併願が可能で、その都立高校に合格すれば私立は辞退できるが、落ちた場合には併願優遇を利用した私立高校への入学が義務づけられている(一部、私立を第一志望にできる併願優遇制度もあり)

現在、都内の私立高校の受験を考える際は次のふたつを押さえておくのが基本です。

・併願優遇が利用できる学校から志望校を選ぶ
・志望校の併願優遇が受けられるように内申点を高く保っておく

実際、都内の私立高校を併願で受ける受験生のほとんどが併願優遇を利用しています。なお、併願優遇を受けられる内申点の基準は主要5科目で18~20が一般的。そのため高校受験を考えている場合には、3年間で「オール4」以上をキープすることがひとつの目安となります。一方で、いわゆる“平均”とイメージされる「オール3」であった場合には、併願優遇を利用できる学校は実はほとんどありません。つまり内申点が悪ければ悪いほど、受験する学校の選択肢が狭められてしまうのです。

学力だけでは厳しい現実も

私の塾に、高校入試の模試で偏差値65をとる子がいました。しかし彼は、通っていた中学校からオール4以上の成績をもらえず、併願優遇を実施していない高校も受けることに。結果、ほとんどの学校で不合格。二次募集でなんとか都内の男子校に滑り込みましたが、終盤までもつれ込む苦しい受験でした。このように、模試で偏差値を満たしていても、学校側が求める内申点を満たしていなければ現在の高校入試はかなり厳しいのが現実です。特に都内の高校入試においては、内申点をどれくらい持っているかで、合格が望める学校、望めない学校がかなりはっきりしてしまう傾向にあります。

高校入試を考える場合には、できるだけ早い段階から内申点を高く維持しておくことが大切です。中3から頑張って内申点を上げようと考えても、すでに手遅れのことが多いものです。できれば中1のころから定期テストで確実に得点を取り、提出物を期日通りに出し、授業態度もきっちりとしておく。こうした意識が、高校入試を有利に戦う上で特に求められるでしょう。

大学入試 ―― 「推薦」が主流に

大学入試も変化しています。かつて、多くの私立の進学校では国公立や早慶上智の合格率を上げるために指定校推薦を避け、生徒たちも「推薦は逃げ」という考えを持っていました。しかし近年では、合格定員の半分近くを「推薦枠」が占める大学が増え、一般入試の合格枠は減少傾向にあります。そのため多くの生徒は、学校推薦型選抜(推薦入試)や総合型選抜(AO入試)などを目指しています。学校推薦型入試や総合型選抜を狙う場合には、高校受験と同じく「内申点」が重要なカギを握ります。

学校推薦型入試(推薦入試)
出身校の校長の推薦を受けることで出願できる入試。大学の出願条件をクリアした生徒が受けられる「公募制」、大学が指定した高校の生徒を対象とした「指定校制」のふたつに大きく分かれる。
総合型選抜(AO入試)
エントリーシートなどの書類や面接、プレゼンテーションなどを経て、その生徒の能力や適性を総合的に評価する入試。

戦い方が変わってきた

かつては高2の秋、あるいは部活を引退した3年の夏から大学受験の予備校に通い始めるのが一般的でした。しかし現在は高1から塾に通い、学校の授業の復習などをきっちりおこなって成績を上げるのがひとつのセオリーになっています。たとえばG-MARCH(※)以上を目指すのであれば3年間内申点をきっちりとる、そうでない場合は自分の内申点と照らし合わせて推薦合格が見込める志望校を探す。そして推薦が取れなかった場合に備えて受験勉強もしておく ―― こうしたプランが大学受験の定石になりつつあるのです。

私立の中高一貫校に通う生徒も油断はできません。特に高校の授業をわからない状態のまま放置していると内申が悪くなる可能性があり、大学受験の選択肢が狭まってしまうリスクがあります。難関私立大学の定員減少の流れもあり、入試で一発本番の実力勝負に打って出るリスクも高まっています。こうした事情から、高校の授業を補習してくれる塾に通う生徒が増えている傾向も見られます。学習のペースメーカーとなってくれる塾に通い、定期テストで結果を残し続けることで内申点を上げよう、といった流れは今後も加速していくことでしょう。

※G-MARCH:学習院大学、明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学の6つの大学の総称

中学受験は、ある意味「純粋」な戦い

このように見てくると、中学入試だけが実は“純粋な実力”が反映される入試ではないかと私は思います。そして「内申点」という不確定要素が志望校選びに影響する高校受験、大学受験と異なり、中学受験ではある程度フラットに志望校を選ぶこともできます。中学、高校、大学、それぞれの入試の「いま」を冷静に踏まえ、お子さんにとってベストな進路を考えていきましょう。

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※記事の内容は執筆時点のものです

亀山卓郎
亀山卓郎 専門家・プロ

かめやま たくろう|明治学院高等学校、成城大学卒業。大手塾・個人塾などで教務経験を積んだ後、2007年に転居のため千葉県及び江戸川区の塾を閉鎖し、台東区上野桜木で「進学個別桜学舎」をスタート。首都圏模試の偏差値で60を切る学校への指導を専門に「親子で疲弊しないノビノビ受験」を提唱している。TJK東京私塾協同組合員、第一薬科大学付属高校上野桜木学習センター長。YouTube「下町塾長会議」構成員。著書「ゆる中学受験ハッピーな合格を親子で目指す」(現代書林)、「めんどうな中学生(わが子)を上手に育てる教科書」(ブックトリップ)、構成・問題監修「LIZ LISA Study Series中1/中2」、監修「おっぱっぴー小学校算数ドリル」(KADOKAWA)

この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。