中学受験ノウハウ 連載 親子のための、「探究」する中学受験

4~5年生から知っておきたい! 過去問の使い方【探究×過去問―後編】|親子のための、「探究」する中学受験

専門家・プロ
2021年4月21日 中学受験ナビ 編集部

変化の激しい時代でも活躍できる人材を育成するために始まっている教育改革。「思考力・判断力・表現力」が重要だとする方針で注目が集まっているのが「探究型学習」や「アクティブ・ラーニング」です。とはいえ中学受験にはどんな影響があり、どう対応していけばよいのか、不安や疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。この連載では、「探究×受験」を20年以上実践している知窓学舎の塾長矢萩邦彦先生に、次代をみすえた中学受験への臨み方についてうかがいます。

過去問を入試対策だけに使うのではなく、子どもの探究思考を高めるために使う方法があります。本記事では国語・算数・理科の3教科について、その方法をご紹介します(社会科については【探究×過去問―前編】 に掲載)。「入試に出るからやる」ではなく、「知りたい・やってみたい」という子どもの探究心を育む。そのための過去問の使い方を、大手進学塾を経て探究塾を主宰する矢萩邦彦先生に伺いました。

探究×過去問 ――「国語」のポイント

中学受験塾では6年生の夏休み明けから取り組むことが多い過去問ですが、4~5年生のうちから向き合うことで探究心を高め、自発的・主体的な学習につなげることができます。

「国語」の過去問は、まずはさまざまな学校の過去問を集めた一冊を選んで、多様な問題を知り、親しむことが大事です。パラパラとめくって「気になるものから読んでみる」でOK。問題を解くためではなく、読むために買ってみるのが入口です。はじめから問題を解く必要はありません。文章に対して「好き・嫌い」の観点で素直に読んでみましょう。自分の「興味」をきっかけに読み始めることが重要です。

興味を持てるテーマや文章、問いに出会ったら、それは親子にとって格好の対話ネタです。「この文章の続きはどうなると思う?」「どんな展開なら納得できる?」などを話しながら、思考していくスタイルを親子で取り入れることをおすすめします。

こうした体験を4~5年生のうちに繰り返していると、問題文への関心や理解力が高まります。次第に「問題を解いてみたい!」「自分にも解けそうな気がする!」という気持ちが出てくるでしょう。そのタイミングが問題に取り組むベストタイミングです。こうしたアプローチの仕方は過去問に限らず、学び全般に通ずるものです。「試験に出るから仕方なく」ではなく、主体的に問題に取り組む姿勢を育むことが大事なのです。

4~5年で問題文を味わう体験をしておくと、6年生になる頃には過去問で「自分が好きな文章を出題する学校か」、「問題文を選ぶ学校のセンスと、自分の好みが合う学校か」といった”嗅ぎ分け”ができるようになります。つまり、学校と自分の相性がわかるということです。「相性がいい学校に入りたい」という気持ちは、受験勉強でも大きな後押しとなると思います。

探究×過去問 ――「算数」のポイント

算数は4教科のなかでも唯一「積み上げ型」です。たとえば足し算ができないと掛け算ができない、掛け算ができないと割り算ができない……というように、一度つまずいてしまうと次の段階へ進むのが難しい教科です。

苦手意識のある子ほど基本を重点的にトレーニングしましょう。過去問でいうと、計算問題、一行問題、大問の【1】、この3項目をミスなく回答できることを目指しましょう。大問【2】以降は、複雑な応用力を問うものも多いので、それらができないことは気にせず、基礎問題でしっかり得点を重ねることが重要です。

算数が好きな子ならば、応用問題のタイプや計算問題が多いか少ないかなどといった過去問の傾向を確認し、自分のやりやすい問題を出す学校を把握しておくのがよいでしょう。

ここまでは受験ありきの話ですが、算数は過去問に取り組む前に注意点があります。

過去問に手を出す前に、算数に対する子どもの興味や意欲、日ごろの算数レベルに注目しておくことです。

算数は4教科のなかでも苦手意識を持つ子が多い教科です。前述したように積み上げ型で、好きな部分や興味ある分野から入る探究的なアプローチをしにくい教科でもあります。単純計算などは「何のため」などの目的がないまま手法だけ教えている状態になるので、計算そのものを楽しめる子はさておき、意味を見出せずつらく感じてしまい、苦手意識を抱える子も多いのです。

とはいえ、中学受験シーンで算数を外して考えるのは難しい。

こうした前提を踏まえ、思い切った言い方をするなら、子どもが算数の過去問を見て「あまりにも興味を持てない」「苦痛だ」というなら「中学受験はしなくてもいい」という判断もあるということです。

中学受験はつらい経験をするためのものではなく、子どもが自分の成長を実感しながら主体的に臨んでこそ価値があります。親はその視点を忘れてはいけません。

もちろん、算数に苦手意識があっても受験への意欲があり、苦痛とならずに臨めそうならばあきらめる必要はありません。基本問題で確実に得点するという目標からチャレンジしてみてください。

探究×過去問 ――「理科」のポイント

理科は他の3教科の複合的要素があります。たくさんの分野があり、文章読解、暗記、計算、グラフ・表の読解など、教科をまたいだ多くの要素が必要になります。

それらの要素は相互に関わっているので、たとえば「振り子」に興味があると関連して計算力が伸びたり、実験が好きなら関連してグラフの読解力が上がるなど、興味あるテーマが基礎力も引き上げるという流れが生まれやすい教科です。

このように「興味」からスタートして、結果的に総合力が高まっていく流れはまさに探究的です。したがって、理科の過去問は「好きなところからやる」でOK。4~5年生でも興味のある分野がみえているなら、過去問はさまざまな問題の切り口と出会い、思考を深めるよいツールとなります。また、理科は過去問の出題傾向から学校との相性も見やすいので、多くの問題に触れることで、志望校選びの参考にできます。

探究×過去問 ――まとめ

ここまで、探究的アプローチで過去問と向き合うポイントをご紹介してきました。重要なのは子どもの興味関心に沿っているかという点です。過去問は多くの学校のさまざまな問題に触れることのできるアイテムです。どんな点に興味を持って、おもしろさを感じているのか、子どもの個性や指向を知り、学びのモチベーションを高めるツールとして活用することを目指してみてはいかがでしょうか。


これまでの記事はこちら『親子のための、「探究」する中学受験

※記事の内容は執筆時点のものです

矢萩邦彦
矢萩邦彦 専門家・プロ

実践教育ジャーナリスト・知窓学舎塾長・株式会社スタディオアフタモード代表取締役CEO・教養の未来研究所所長。1995年より教育・アート・ジャーナリズムの現場で「パラレルキャリア×プレイングマネージャ」としてのキャリアを積む探究型学習・想像力開発・パラレルキャリアの第一人者。15000人を超える直接指導経験を活かし「受験×探究」をコンセプトにした統合型学習塾『知窓学舎』を運営。「現場で授業を担当し続けること」をモットーに、実践教育ジャーナリスト・教育カウンセラー・探究学習コンサルタントとしても活動している。グローバルビジネス学会・日本アクティブ・ラーニング学会・日本産業カウンセリング学会・キャリアコンサルティング技能士会所属。著書に『中学受験を考えた時に読む本』(編集著:洋泉社)、『先生、この「問題」教えられますか?』 (石川一郎・矢萩邦彦著:洋泉社)など。Yahoo!ニュースで『越境ウォーカー』を連載中。

中学受験を考えた時に読む本先生、この「問題」教えられますか?