中学受験ノウハウ 連載 親子のための、「探究」する中学受験

中学受験する?しない? わが子の「最適解」の見つけ方【前編】|親子のための、「探究」する中学受験

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2021年5月06日 中学受験ナビ 編集部

変化の激しい時代でも活躍できる人材を育成するために始まっている教育改革。「思考力・判断力・表現力」が重要だとする方針で注目が集まっているのが「探究型学習」や「アクティブ・ラーニング」です。とはいえ中学受験にはどんな影響があり、どう対応していけばよいのか、不安や疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。この連載では、「探究×受験」を20年以上実践している知窓学舎の塾長矢萩邦彦先生に、次代をみすえた中学受験への臨み方についてうかがいます。

中学受験をするか・しないかについて、何を判断基準にするかは悩む家庭も多いもの。本人の希望や親の主義、周囲の環境……さまざまな要因はありますが、大事なことは子どもが主体的にポジティブに臨む体験にできるかどうかです。子どもの個性を尊重し、成長の機会とするための「親のアクション」について、大手進学塾を経て、探究塾を主宰する矢萩邦彦先生にうかがいました。

中学受験「する」or「しない」の判断基準とは?

受験をするのは子ども本人なので、自分の意思や希望で決めることが理想ではありますが、中学受験をするかどうかは多くの場合親がリードして決めているのが現状でしょう。一般的な発達段階から考えれば、小学生は目の前にあることで判断したり、”今“興味があることへ情熱を向けることは得意ですが、それが将来のどんなことに結びつくかを実感できる年齢ではないからです。

6年生くらいになるとある程度ものごとを抽象化する力がついてくるので、今と未来を結びつけられるようになり、進学について自分で考えることができる場合もありますが、そのタイミングで「受験したい」となっても、6年生での入塾では進学塾のスケジュールからはずれてしまうため、受験対策がしづらい傾向にあります。こうした受験システムの構造上、なかなか本人の意思にゆだねられる時期まで受験するかどうかの判断を待てないというのはジレンマですよね。

では親としては、受験するかどうかの判断基準をどこにおけばいいでしょうか。まずは、中学受験とは「つらい勉強をして乗り越えるもの」ではなく、「より居心地のいい場所を選ぶための選択肢を得るもの」という共通認識を親子で持つことをおすすめします。

そのうえで、本人が受験に挑戦することに前向きであるかどうかが最も重要な判断基準です。子どもの「興味がある」「やってみたい」という気持ちが出発点になっていることが大切なのです。
反対に、親の押し付けや周囲からのプレッシャーで判断することは絶対に避けるべきです。

子どもの状況に合わせた声がけからスタート

中学受験に対して前向きなマインドを引き出すためには、子どもの状況にマッチした声がけが大事です。

たとえば「公立校が合わなそう」「学校の勉強が物足りなさそう」「丁寧にケアしてくれる環境のほうがよさそう」など、中学受験で公立以外の進学を考えるきっかけは人それぞれです。中学受験がどうして「よりよい居場所の選択肢」になり得るのかを親子で合意形成しておくことが基本です。

「もっと自分に合う場所があるかどうか探すことができるよ」
「学区で決まっている学校だけじゃなく、校舎・友達・先生を選ぶこともできるってことだね」
「どこの学校に行くかで、出会う人や過ごす場所が変わるよね、どう思う?」

このような視点から話し合ってみてください。偏差値で比較するのではなく「自分が居心地よいと感じられるのはどんな環境か?」を考える機会とするのです。日ごろの興味・関心や、もっとこうしたいという願望など、自分の内面を振り返る機会になります。

自分の意思が見えると、それに合わせた進路を「中学受験で選択肢を増やして自分で選ぶことができる」という気づきにつながります。そのような対話を繰り返す中で、主体的なマインドがセットされるのです。

また、こうして考えた結果、なじんだ友達環境を望むなどの本人の意思が確認できたなら、そのまま公立へ進学するという選択でも全く問題ないということも覚えておいてください。

「決めたんだから最後までやりなさい」は間違い

中学受験を「する」と親子の合意形成がとれたら、受験生ライフスタートとなりますが、注意したいのは親の思考停止です。

「一度始めたからには最後までやめないで受験させよう」

ついこう考えてしまう方も多いかもしれませんが、子どもの現状を把握して改善しようという意思を放棄した「思考停止状態」かもしれません。

中学受験のゴールは合格ではありません。子どもが主体的に、自分の成長を実感し、振り返りや試行錯誤をしながら取り組む、そんな探究的体験になってこそ意味があります。
「合格」ではなく「自分の選択肢や可能性を増やすこと」をゴールとして認識し、親子で話し合いながら、子どもにとっての最適を探っていくものです。

受験勉強をしていく中で、受験というやり方は合わない、もっと他にやりたいと思うことができたなど、状況が変化したらその都度軌道修正をするという意識を持っておきましょう。

「始めたからには最後まで」「ここまでお金を払ってきたのにやめたらもったいない」そんな気持ちは親が思考停止して、やり方を押し付けていることになってしまいます。そうすると不幸な中学受験になりかねません。

「軌道修正は発生して当たり前」と認識し、子どもにフィットする進み方をしているかどうかを常に観察し、対話することです。
受験生を持つ親は、このことの重要性を忘れないでほしいと思います。


これまでの記事はこちら『親子のための、「探究」する中学受験

※記事の内容は執筆時点のものです

矢萩邦彦
矢萩邦彦 専門家・プロ

実践教育ジャーナリスト・知窓学舎塾長・株式会社スタディオアフタモード代表取締役CEO・教養の未来研究所所長。1995年より教育・アート・ジャーナリズムの現場で「パラレルキャリア×プレイングマネージャ」としてのキャリアを積む探究型学習・想像力開発・パラレルキャリアの第一人者。15000人を超える直接指導経験を活かし「受験×探究」をコンセプトにした統合型学習塾『知窓学舎』を運営。「現場で授業を担当し続けること」をモットーに、実践教育ジャーナリスト・教育カウンセラー・探究学習コンサルタントとしても活動している。グローバルビジネス学会・日本アクティブ・ラーニング学会・日本産業カウンセリング学会・キャリアコンサルティング技能士会所属。著書に『中学受験を考えた時に読む本』(編集著:洋泉社)、『先生、この「問題」教えられますか?』 (石川一郎・矢萩邦彦著:洋泉社)など。Yahoo!ニュースで『越境ウォーカー』を連載中。

中学受験を考えた時に読む本先生、この「問題」教えられますか?