中学受験ノウハウ 連載 親子のための、「探究」する中学受験

中学受験する?しない? わが子の「最適解」の見つけ方【後編】|親子のための、「探究」する中学受験

専門家・プロ
2021年5月14日 中学受験ナビ 編集部

変化の激しい時代でも活躍できる人材を育成するために始まっている教育改革。「思考力・判断力・表現力」が重要だとする方針で注目が集まっているのが「探究型学習」や「アクティブ・ラーニング」です。とはいえ中学受験にはどんな影響があり、どう対応していけばよいのか、不安や疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。この連載では、「探究×受験」を20年以上実践している知窓学舎の塾長矢萩邦彦先生に、次代をみすえた中学受験への臨み方についてうかがいます。

中学受験をするか・しないかの判断は、子どもが主体的なモチベーションで、受験に対して前向きになれるかどうかが最も重要な基準になるとのことでした(詳しくは前編へ【中学受験する?しない? わが子の「最適解」の見つけ方【前編】 )。そのうえで、受験勉強を進めるなかでは子どもの状態や意思に応じてやり方・考え方を「軌道修正」していくことが大切。後編では「軌道修正」するときのポイントや、マインドセットについて、大手進学塾を経て探究塾を主宰する矢萩邦彦先生に引き続き伺っていきます。

「軌道修正」はネガティブじゃない

受験勉強を進めるなかで「受験が合わないかも……」「もっと他にやりたいことができた」となる場合もありますよね。前編では、そんなときに、その現実を受け止めず「一度始めたら、最後までやりなさい」というような考え方ではいけないというお話をしました。中学受験のゴールは「合格」ではなく「可能性と選択肢を増やす」ことであるのを忘れてはいけません。

たとえば「受験をやめたい」と言われても、焦ったり怒ったりせず、まずは受け止めてください。そしてどんな軌道修正ができるか親子で一緒に考えましょう。それが探究的思考の基本です。「途中でやめると逃げ癖がつく」と心配する方も多いですが、やめることが「サボり目的」になる時に、ネガティブになるのです。

「この方法は自分には合わないことがわかった」

「だから合うものを見つけに行きたい」

こうしたベクトルであれば、逃げ癖ではなく改善・アップデートになります。

「いやだから」「無理だから」という発言で終わらせず、何をいやだと思っているのか、どうしたら自分にとってもっとよくなるのか、それを考えるポジティブな機会にするのです。

ポジティブにやっていくということは、やりたいことを徐々に認識していく作業の連続です。その過程を体験することで、探究心を育むと同時に、子どもに自分のアップデートを実感させることが大事なのです。

やめたい理由をヒアリングしていくと、案外「塾の友だちとケンカした」なんて原因の場合も多々あります。そんなときは、塾の先生に相談することで、すぐに解決する場合もあります。落ち着いてちゃんと子どもと対話することは改善に不可欠ですね。

探究心が高まる「声がけ」と「マインドセット」

中学受験はよく親子「二人三脚」だと言われますが、子どもに張りついて勉強を見てあげるということではありません。何より親が集中すべきは、子どもが主体的でポジティブな感情でいられるような声がけとマインドセットです。

それぞれのポイントをまとめてみます。

声がけ

●「今までできなかった□□□ができるようになったね!」など、できるようになった点を認識させる。
●「はじめてわかったこととか、『へー!』と思ったところはどこ?」など、学びのなかで面白いと感じていることを引き出す。
●「今はどんな感じ? 次はどんなやり方で進もうか?」など、現状の本音を聞いて、よりよいアクションを一緒に考える。

こうした声がけによって以下のようなマインセットをめざします。

マインドセット

●自分は中学受験への挑戦を通して、前よりも成長している。
●うまくいかないときは、試行錯誤すれば解決策を探すことができる。
●自分の言動を振り返ることは、よりよい選択の判断材料になる。

上記のマインドセットができると、偏差値や合否だけにとらわれずに、自分のアップデートを実感しながら中学受験に向き合うことができます。

よりよい状態をめざして、どう変えていこうかと考える。振り返りをして意味づけして次に生かす。この繰り返しが探究学習の本質であり、自立して豊かに生きるために必要な力です。中学受験という機会に、進む道や進み方を親子で一緒に考えましょう。お互いに意見を言いながら、その過程を真剣に楽しんでほしいと思います。

勉強を教えることよりも、こうしたプロセスに本気で親も関わることで、中学受験はとても意味のある体験になっていくのです。

中学受験は「自分の場選び」を探究できるチャンス

僕が主宰する知窓学舎では、「学校選び」の前に「楽しいと感じる視点や分野を見つける」ことから中学受験につなげることが多いです。

たとえばいろいろな学校の入試問題をながめてみて「この問題面白いな」というポイントが見つかったとしたら、「こういう問題を出す学校はどんなところだろう?」と調べてみたりします。

逆に、「出題の仕方がいやだな……」という場合も、「なんでいやなんだろう、どんなところが面白いと思えないんだろう」と考えてみたりします。

どんなことを「楽しい・興味深い」と感じるのか認識しながら振り返っていくと、自分なりの判断基準がみえてくるので、それを繰り返しながら自分の軸を作りつつ進んでいくのです。その過程で「この学校が気になる、自分に合いそうな場だ」となれば中学受験を検討するステップに入ります。

このフローだと「自分の場選び」をするために受験するというモチベーションが明確なので、主体的なスタンスをキープしやすくなるはずです。ご家庭でも、子どもの自分軸を一緒に探っていこうという意識はぜひ持っていていただきたいと思っています。

自分はどんな方向に進みたいのか? どんな場を目指したいのか? 「自分の場選び」は中学受験に関わらず、高校・大学・社会人と、人生のどんなステージでも重要なテーマです。自分軸を探究する絶好のチャンスとして中学受験をとらえることができれば、合否に一喜一憂するだけではない、中学受験に向き合う我が子の「最適解」に近づくことができるのではないでしょうか。


これまでの記事はこちら『親子のための、「探究」する中学受験

※記事の内容は執筆時点のものです

矢萩邦彦
矢萩邦彦 専門家・プロ

実践教育ジャーナリスト・知窓学舎塾長・株式会社スタディオアフタモード代表取締役CEO・教養の未来研究所所長。1995年より教育・アート・ジャーナリズムの現場で「パラレルキャリア×プレイングマネージャ」としてのキャリアを積む探究型学習・想像力開発・パラレルキャリアの第一人者。15000人を超える直接指導経験を活かし「受験×探究」をコンセプトにした統合型学習塾『知窓学舎』を運営。「現場で授業を担当し続けること」をモットーに、実践教育ジャーナリスト・教育カウンセラー・探究学習コンサルタントとしても活動している。グローバルビジネス学会・日本アクティブ・ラーニング学会・日本産業カウンセリング学会・キャリアコンサルティング技能士会所属。著書に『中学受験を考えた時に読む本』(編集著:洋泉社)、『先生、この「問題」教えられますか?』 (石川一郎・矢萩邦彦著:洋泉社)など。Yahoo!ニュースで『越境ウォーカー』を連載中。

中学受験を考えた時に読む本先生、この「問題」教えられますか?