連載 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

今の子どもに驚かされることと関わり方 ―― 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

専門家・プロ
2021年6月10日 やまかわ

中学受験と聞くと、難関校を目指す受験がどうしてもイメージされます。しかし、そうではない、あるいはそのやり方に疑問をもつご家庭は少なくないでしょう。この連載では、『ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す』の著者である亀山卓郎先生に、親子で疲弊しない中学受験をテーマにさまざまなお話を伺います。

今の子どもはモノゴトを広く捉え、勉強に励んでいます。そのため「昔ながらの感覚」で親御さんが接すると、子どもを十分に理解できない可能性も。親御さんとしてはいつも通りの息子・娘かもしれませんが、実は彼ら・彼女らは知らないところで大きく成長しています。今回は、私が今の子どもに驚かされることについてお話します。

今の子どもに驚かされること

  • 情報収集の早さ
  • 見ている世界の広さ

情報収集の早さ

今どきの子はインターネットに慣れているからか、情報収集が本当に早い。私の塾(進学個別桜学舎)ではタブレットを常備していますが、わからないことがあるとググって調べる様子は日常的です。タブレットを触る手つきも慣れている様子で、大人より入力も早く、さらにはタブレットに入っている電卓や方位磁針などのアプリを軽々使いこなしている様子を見ると「デジタル世代だな……」と感心してしまいます。

「わからない言葉はネットで検索」といった習慣は、社会や理科などの科目で大いに役立ちます。たとえば、社会の授業で「輪中」という言葉を習ったとしましょう。輪中とは「木曽三川の河口付近にある、水害から守るために堤防で周囲を囲まれた集落地域」なのですが、文字だけの情報ではイメージが湧きにくいですよね。そんなときに「輪中」とネット検索して画像を見れば、輪中のイメージがすっと頭に入ってきます。このように、ネット検索をもとに画像や動画と合わせて知識を定着していけるのは「デジタル世代」ならではの勉強法といえ、受験勉強においても大きなメリットです。

ネット検索のリスク

一方で、インターネットで検索しただけで成績がグングン上がるということはありません。事実、「検索するだけで答えが見つけられる」と思っている子は往々にして成績が伸び悩みます。

特に算数や国語の場合、ネットで見つけられる情報はあくまで“ヒント”にすぎず、答えではないことがほとんど。たとえば「速さ・距離・時間」の計算問題が解けなくて、インターネットで解き方を検索したとしましょう。このとき面倒くさがりの子は、検索した情報のなかから公式を見つけ出し、その公式を丸暗記しようとします。しかしこれでは、「速さ・時間・距離」を理解したとはいえません。速さに時間を掛けるとどうして距離が出るのか。距離を時間で割るとなぜ速さがわかるのか ――。こうした理屈を自分なりに理解できないと、応用問題などが出た際に太刀打ちできないのです。

国語に関しても同様です。たとえば読解問題に出てきた語句を検索すると、その語句がいくつかの意味を持っている場合があります。このとき、一番上にあった意味をただ闇雲に当てはめても意味がつながらないこともあるでしょう。この場合には、まずはすべての意味を一通りチェックしたうえで、「この文脈なら、どの意味を当てはめるのが自然かな」と考える必要があります。

たしかにインターネットは便利で、使いこなせたほうが勉強にも有利に働きます。しかしインターネットは、あくまで勉強を助ける“ツール”。検索してヒットした情報だけを鵜呑みにしていては、むしろ「何も考えない」という習慣が身についてしまうとも言えます。親御さんとしては、子どもがネットを使うことはある程度許容しつつ、もしもネットだけに頼りきりになっている様子が見られた場合には、「これってどういう意味?」と自分の言葉で説明させてみても良いかもしれません。

見ている世界の広さ

最近の子どもに驚かされることとして、「見ている世界が広い」ことも挙げられます。「子どもだから何も知らないはず」「難しいことはわからないだろうな」と大人が高を括っていると、実は子どものほうが良く知っていた……なんてことも珍しくありません。

たとえばSDGsやLGBTなど、世界的に広く認知されている概念を小学校でしっかりと習っているからか、環境問題について考えたり、差別や平等についての話題に敏感だったりする子が多い印象です。なかには「人権について学べる学校に入りたい」と話す生徒もいます。そしてこうした社会課題についての知識は、中学受験では時事問題と絡めて問われることが一般的。特に公立中高一貫校の作文問題、または難関校では頻出です。中堅校でも一般常識として問われるケースもあるので、世界的な話題に関心があるということは受験に有利に働く可能性も高いでしょう。

もちろん平等や差別の問題などについて考え、学びを深めていくということは、色々な立場の人の考えを理解することにもつながります。その意味で今の子どもたちは、多様性が求められる社会で生き抜いていくための“術”を手に入れているともいえるのです。

思考の偏りには注意

色々な情報にアンテナを張り、それらに興味を持っていくことは大切なことです。しかし、そこはまだまだ子ども。スポンジのように何でも吸収していくのは褒められるべきことですが、これは逆にいうと「何でも吸収し過ぎてしまう」ともいえます。つまり「教わったことは絶対に正しいこと」と妄信してしまうリスクがあるのです。

特に、社会問題について勉強していくと「自分は多様な考えを尊重している」と考えがちですが、実は特定の意見に傾っていることは少なくありません。どんなことにも言えますが、大切なのは「良い」「悪い」で判断するのではなく、それぞれの考えを踏まえつつ「自分なりの考え」を見つけていくこと。ですから、表側を学んだら裏側を学ばないといけないですし、下を学んだら上も学ばないといけません。気づかぬうちに他方の意見を攻撃している……なんてことがないように、さまざまな情報にイヤでも触れてしまう今こそ「フラットな視点」を持つことを強く意識する必要があるのです。

そしてこうした視点を持つ大切さは、家のなかでも教えていくことができます。たとえば、子どもが学校の友達関係について話してくれたときや、親子でニュース番組を見ているとき。「その子はどんな気持ちだったんだろうね?」「この人は、どうしてこんな行動をしたと思う?」といった形で、相手の立場に立って考える機会を意識的につくってあげることで、世の中をフラットに見ていく視点が磨かれていきます。

「本当の姿」に目を向けよう

勉強に集中していない子どもの様子を見て、ついイライラしてしまう親御さんも多いかもしれません。しかし少しだけ冷静になってみると、子どもは親の知らないところで大きく成長しているものです。そこで、イラっとしてしまうときこそ「こんなに早く情報にアクセスできるのか」「こんな考えもできるようになったんだ」といったように、まずは良いところに目を向けてみましょう。想像以上に成長していたこと、そして「この子なりに頑張っているのかもしれないな」と気づくことができれば、今まで以上に落ち着いて子どもと向き合えるようになるはずです。

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※記事の内容は執筆時点のものです

亀山卓郎
亀山卓郎 専門家・プロ

かめやま たくろう|明治学院高等学校、成城大学卒業。大手塾・個人塾などで教務経験を積んだ後、2007年に転居のため千葉県及び江戸川区の塾を閉鎖し、台東区上野桜木で「進学個別桜学舎」をスタート。首都圏模試の偏差値で60を切る学校への指導を専門に「親子で疲弊しないノビノビ受験」を提唱している。TJK東京私塾協同組合員、第一薬科大学付属高校上野桜木学習センター長。YouTube「下町塾長会議」構成員。著書「ゆる中学受験ハッピーな合格を親子で目指す」(現代書林)、「めんどうな中学生(わが子)を上手に育てる教科書」(ブックトリップ)、構成・問題監修「LIZ LISA Study Series中1/中2」、監修「おっぱっぴー小学校算数ドリル」(KADOKAWA)

この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。