ユウシン先生
中学受験ノウハウ 連載 我が子に中学受験をさせる親が知っておくべき100のこと

011 中学受験に向いている子って?向いていないと感じられたら受験はやめる?|我が子に中学受験をさせる親が知っておくべき100のこと

専門家・プロ
2023年9月25日 ユウシン

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人気YouTubeチャンネル「ホンネで中学受験」のユウシンさんによる、動画&テキスト連載! お子さまの中学受験を考える親御さんにぜひ知っていただきたいことを、ユウシンさんならではのやわらかくあたたかい語り口でお伝えしていきます。

こんにちは。ユウシンです。

「うちの子は、中学受験に向いているのだろうか?」
中学受験を考えた時、どの親御さんも最初に抱く疑問だと思います。

受験に向いている子・向いていない子。
このテーマに関するテキストや動画、世の中にたくさんありますよね。
それらを見て、「ああ、うちの子は無理そうだわ」なんてガッカリしている方もいらっしゃるかもしれません。

今回の記事では、僕の考える「受験に向いている子」の特徴をあげながら
じゃあ、それらを持たない子に対して、保護者はどんなアプローチをすれば良いの?
という視点で考えていきたいと思います。

それでは、いきましょう!

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中学受験に向いている子が持つ4つの特徴

まず、僕が考える「向いている子」が持っている力をあげていきます。

【理解力】

いわゆる「地頭」ともいわれるのが、この理解力です。
授業を聞いたり文章を読んで、その内容を適切に理解できるかどうか。この力は、中学受験にチャレンジする上で最低限必要なものといえます。

【素直さ】

中学受験は周囲のサポート無しには成り立ちません。しかし、子ども自身にそのサポートを享受する姿勢がなければ、受験生活は茨の道になってしまいます。

親御さんや塾の先生のアドバイスをすんなり受け入れられる。大人から言われたことに、まずはとにかく取り組んでみる。
こういった素直さを持つ子なら、受験を成功させられる可能性はグッと広がります。

【勉強がキライじゃない下地】

中学受験がうまくいく家庭の特徴のひとつに「子どもが勉強ギライじゃない」という点が挙げられます。

愛する我が子には、より素晴らしい教育の機会を与えたい。
より質の高い環境で学ばせ、より輝く未来を手に入れてほしい。

こういった親の熱い想いが、個々の適正や成長速度に合わない早期教育と勉強の押し付けを生み、結果的に子どもを「勉強ギライ」にしてしまっている……。残念ながら、中学受験の世界では特に珍しくないケースでもあります。

勉強に対して、すでに拒否感を覚えてしまった子を受験に向かわせるのは、子どもにとっても親御さんにとっても大きな苦痛が伴います。
中学受験をスムーズに進めるためには、子どもは「勉強が好き!」とまではいかなくても、「キライじゃない」程度はクリアしておきたいポイントです。

こちらの連載8回目の記事でも詳しくお伝えしているので、今まさにお子さんの学習への姿勢に不安を感じている方は、確認のためにもぜひ読んでみてください。

【やり抜く力】

ここでいう「やり抜く力」については、連載2回目でメインテーマとして取り上げました。粘り強さ、根気強さといった言葉に置き換えられます。

弱点をカバーするにはどうする?

さて、あなたのお子さんは、ここまで挙げた4つの要素すべてを兼ね備えているでしょうか?

……なんて訊いてみましたが、全部ばっちり揃っているスーパーキッズは滅多にいないので安心してください!

中学受験に大切なのは、足りないことにガッカリすることではありません。「足りないと感じられるポイントを、いかに補強するか」という視点を保護者さんが持つことなんです。

理解力が不足している子・勉強が嫌いな子に必要なのは「成功体験」の積み重ね

まず、通っている塾のレベルはお子さんに合っていると言えますでしょうか?授業にちゃんと付いていけているでしょうか?

もしも不安があるようなら、進度がゆっくりな塾や個別塾、家庭教師など、学びの場を変えることも検討してください。宿題も、集団塾から出されたものを闇雲にこなすのではなく、その子の理解度に合わせて親御さんが取捨選択してあげる必要があります。

理解力に合わない塾に無理して通わせ続けると、「私はデキない人間だ」「僕は頭が悪いんだ」と本人は自信を失い、子どもの自己肯定感が下がっていきます。

子どものためを思って始めた中学受験が、子どもを勉強ギライにする原因になってしまっては元も子もありません。
「人それぞれのペースで大丈夫」「他人と比べなくて大丈夫」ということを実体験させるためにも、その子に合った環境で勉強することが大切です。

分かるようになった。できるようになった。

そんな成功体験の積み重ねができる場所で、「勉強は面白い!」という気づきと喜びをシャワーのように注いであげましょう。

素直になれない原因は親子関係にあり?

親のアドバイスを素直に受け入れられない子への対策としては、良好な親子関係の構築が第一の解決策です。

前回の記事でテーマに挙げた「お子さんがホンネを話せる対等な親子関係」は、子どもが素直でいられるかどうかを左右する重要なファクターです。親が子どもの意見を押しつぶしてしまう封建的な力関係の元では、素直さなんて育まれませんよね。それどころか、子どもの嘘や隠し事が常態化してしまいます。

何を言っても子どもの心に響かない、子どもが何を考えているのか分からない……。お子さんとの関係性に悩むご家庭は、まずご自身のこれまでの言動を思い返してみてください。

子どもの意見を否定し続けていたり、プロセスではなく結果だけを褒めていたり。もしも何か思い当たるフシがあれば、お子さんへの向き合い方を少しずつ変えてみてほしいです。

また、反抗期など成長過程が背景にある場合は、家族以外の大人の言うことなら聞く、というパターンが案外多いので、勉強への声がけや学習サポートは塾の先生に任せてしまうのもひとつの手でしょう。

やり抜く力は、中学受験を通して身につけられれば問題ナシ!

発揮するのは大人でも至難の業なのが「やり抜く力」。
最後まで物事をやり抜くためには、強靭な心の強さが必要です。これを幼い子どもに求めるのは酷な話です。

「うちの子はすぐに諦めるから……」なんて悲観しないでください。
むしろ、中学受験というチャレンジを通して、これからの未来を生きるために必要な「やり抜く力」を育てていこう。そんな風に考えていただければと思います。

親の「寛容さ」がキーワード

これまで、中学受験に向く要素を「本人の資質・能力」といった面で考えてきました。大雑把にまとめてしまうと、子どもの精神年齢の高さに大きく関わっているといえそうですね。

ところで、学習面で早熟さを感じさせるお子さんって、非常に稀なケースです。例えば低学年のお子さんが家庭学習に取り組めないからといって、「この子は精神的に幼いから中学受験には向いていない」とあっさり判断してしまってはもったいない。

学習のシーンだけでなく、遊びや習い事など普段の様子を通して、お子さんの性格や気質を感じる瞬間ってあると思うんです。
例えば、パズルは完成させるまで絶対やめないとか、リフティングが目標回数できるまでずっとボールを蹴っているとか、「この子は負けず嫌いなんだな」「集中力がものすごいな」と感心したことはありませんか?

もし何か1つでも、子どもの意志の強さを感じたような記憶があれば、その子は中学受験を成功させる大きな可能性を秘めていると僕は考えます。

また、よく皆さんが気にされる【受験への子どもの熱意】も、すぐに結論付けないで大丈夫。

「志望校が定まればモチべーションはUPします」「最終学年になれば自然とエンジンがかかります」なんてアドバイス、よく耳にしますよね。僕もよく言います(笑)。

けれど残念なことに、あらゆる手を講じて子どもの気持ちを盛り立てようと努力したけれど、結局本人は入試当日までアクセル全開にならなかった……という例だって、確かに存在するわけです。

もちろん、本人がやる気を持って勉強に励むのが中学受験の理想的な姿です。けれど、この【やる気】、決してマストだとは考えないでください。

小学生は未熟な部分が多分にあります。大局的なモノの見方ができません。中学受験を明確にイメージできなくったって仕方ない。「今頑張れば、将来こんなにいいことがあるよ」と言われたところで、ピンと来ないのも当然です。

それなのに、学校以外に塾まで行って勉強している。出された宿題をこなしている。
これだけで充分褒めるに値すると思いませんか?

人は【将来】を考えられるようになった時にはじめて、【目標】を掲げて自ら努力することができます。
そして、この切り替えのタイミングがいつやって来るかは人それぞれです。小学生時代には来ないかもしれない。中高に入ってから、大学生になってから、もしかしたら成人後にようやく自分事として未来と真剣に向き合えるようになるかもしれません。

その「いつか」を待って、長い目で見守ることが保護者のサポートといえるのではないでしょうか。

もしかすると、今のお子さんの状態は理想からは程遠いかもしれない。
けれど、彼らが彼らなりに走ることができているのなら、その頑張りをシンプルに受け止めてあげてほしいと思います。

大人は、中学受験への向き・不向きを子ども本人の資質や性格で判断しようとしがちです。
けれどそれ以上に重要な要素として、結論を早急に求めすぎない「親の寛容性」が挙げられるのではないでしょうか。

まとめ

今回の記事では、中学受験に向いている子の特徴についてお話ししました。

もちろん、ここで挙げた以外にも、受験前に身についていると望ましい力、勉強をスムーズに進めやすい性格などは確かに存在します。
けれど、何が何でも難関校合格!といったゴール設定でない限り、中学受験をするにあたって「絶対に向いていない」という子はいないと僕は考えています。

まだ幼い子どもです。欠けている部分はあって当たり前。
足りない所にだけフォーカスして「ああ、ダメだ。うちは向いていない」と諦めないでくださいね。

また、もしご家庭側に中学受験に【向いていない】とされる事情があっても、それをフォローしようという親御さんの意志さえあれば、大抵の場合なんとかなります。

例えば、ご両親の仕事が忙しく、物理的にサポート時間が取れないご家庭なら、お金を払って外部のサービスを最大限活用するのもアリです。中学受験は絶対に親が伴走しないといけないルールがあるわけではありません。
そして、勉強中はテレビや動画を点けっぱなしにしない、下の兄弟が騒がしければ塾の自習室をフル活用するなど、勉強に集中できる環境を整えるための家族全員の協力も必要です。

中学受験に向いているかどうかを判断する最も大切なポイントは、受験勉強を通して子どもに寄り添い、受け止め、ともに成長しようとする親御さんの愛情とおおらかさこそにあると僕は考えています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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※記事の内容は執筆時点のものです

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