連載 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

Withコロナ、2回目の夏休み ―― 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

専門家・プロ
2021年7月27日 やまかわ

中学受験と聞くと、難関校を目指す受験がどうしてもイメージされます。しかし、そうではない、あるいはそのやり方に疑問をもつご家庭は少なくないでしょう。この連載では、『ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す』の著者である亀山卓郎先生に、親子で疲弊しない中学受験をテーマにさまざまなお話を伺います。

コロナ禍となり、2回目の夏休みを迎えています。塾業界では“天下分け目”といわれる時期ですが、今年の夏を有意義に過ごすためにはどのようなことを心がけるべきなのでしょうか。昨年のコロナ禍において試行錯誤するなかで私が学んだこと、そして反省を含め、中堅校受験を考える親子が今年の夏休みに意識したいポイントをお伝えします。

苦手を後回しにすると、痛い目に……

私の塾・進学個別桜学舎では中堅校受験を専門にしていますが、中堅校を受ける子の場合、夏休みは「弱点の克服」がひとつのテーマです。つまり、今まで勉強してきたなかで「わからなかったこと」や、「なんとなく後回しにしてきたこと」を徹底して身につけていく時間に充てています。しかし昨年を振り返ると、オンラインが中心だったこともあり、講師の目が対面よりも十分に行き届かない、という課題に直面しました。合宿でみっちりと生徒の側について勉強を教える機会も奪われてしまったこともあり、なかには苦手な箇所をスルーする子がいたりと、わからないものを「わからないまま」にしてしまう子が一定数出てしまいました。こうした子は苦手な箇所を後回しにした“つけ”が秋以降に出て、例年の生徒よりも苦戦している様子が見られたのです。

まだまだ予断は許さない

今年の受験生は対面授業がメインとはなっていますが、いつ状況が変わり、オンライン授業になるかわかりません。離れていても授業を受けられるのがオンラインのメリットではありますが、距離が離れているからこそ講師の細かなケアが受けにくく、苦手を見て見ぬふりする子が増えてしまうのも事実。たとえば昨年は、小6の夏時点で算数の約分の意味がわかっていなかったり、分数の掛け算と割り算を混同してしまったりしている子も見られました。

繰り返しにはなりますが、特に小6で中堅校を考えている子に関しては、この夏休みは苦手分野を克服し、基礎を盤石にできる最後のチャンスです。親御さんとしては、塾の先生と相談して苦手分野を特定するなど、克服すべき点をはっきりさせた上で、まずは細かいことを着実にこなしていくことに子どもの目を向けさせてあげてください。

夏休みでモチベーションを切らさない

夏休みは苦手克服を中心に勉強に励んでほしいと思いますが、一方で中堅校を目標にしている子の場合には、難関校を志望する子のように過去問にゴリゴリと手を付けていく必要はまだありません。過度な我慢をすることなく、あくまでノビノビと受験に臨んでほしいものですが、そのためには「リフレッシュの時間」も必要です。ちなみに私の塾の子たちは、例年どおり、習い事をしながら夏期講習に臨んでいる子が多いですね。「夏までは野球で忙しくて土日は勉強ができません」という子もいますが、習い事が良いリフレッシュになっているのか、練習がない日は一生懸命勉強している様子が見られます。

ワンランク上の志望校を考えてみる

モチベーションを高く保って夏期講習に臨むためには、リフレッシュの時間とともに、子どもの実力よりも“ワンランク上”の志望校をあえて設定してみるのもおすすめです。特に中堅校志望の家庭は、高望みを極端に恐れてしまう傾向があり、偏差値60以上になった途端に志望校から外してしまうケースが少なくありません。もちろん「どうしても行きたい学校がある!」というのであれば無理強いはしませんが、一方で夏の時点で合格がある程度見えている学校を選んでしまうと「一生懸命勉強しなくても大丈夫」と考え、モチベーションが一気に下がってしまう子もいます。

こうした状態にならないように、たとえば「通学1時間以内」「テニス部が強い学校」といったように条件を並べ、その条件に当てはまる学校をまずは絞り込んでみましょう。その上で偏差値順に並べてみると、現時点で合格が見込める学校、または今後の頑張り次第でなんとか合格が狙えるかもしれない学校が見えてくるはずです。そして可能であれば、その「手が届きそうな学校」にも目を向けてみてください。仮に難関校に分類されるような学校だったとしても、その学校を目指すことは子どものモチベーションアップ、そして成長という面で決して無駄にはなりません。

入試本番を迎えるまでに、時間はまだあります。今は偏差値にとらわれず、まずは子どもが楽しく通学できるか、といった点を中心に学校を探していきましょう。私の塾でも、最終的に偏差値60以上の学校に合格する子もいます。高い目標を設定することでやる気を出す子も多いので、この夏はぜひ、選択肢を広く持つことも意識してみてください。

親子で過ごす時間が長い今こそ絆を深めるチャンス

夏休みは、家族で過ごす時間が増える時期です。特に昨年、そして今年と、コロナ禍により家族旅行などが叶わないことも多く、必然的に家にいる時間が長くなってしまうことも多いでしょう。一向に勉強しない子どもにイライラしてしまうこともあるかもしれませんが、ここは少し冷静になり、「子どもの様子がいつも以上に見える」といった点でポジティブに捉えてみてください。そして親御さんは、子どもを“諭す”ような時間もつくってみてほしいと思います。

特に夏休みは、勉強にやる気が出なかったり、苦手な箇所をなんとなく後回しにしてしまい、場合によっては「やったよ」とウソをついたり、ごまかしたりする姿勢が見えることがあるかもしれません。こうしたときは、親の腕の見せ所。勉強に向き合う姿勢、噓をつくことがどれだけ悪いことかなど、親の考えを子どもに話してあげる時間をつくってみてください。こうした役割は、本来塾が担うことではありません。子どもに「人生観」を伝えるのは、いつだって親の役割。そして子どもというのは、どこまでいっても親に関わってほしいと思っているものです。つまり「親が自分を見てくれている」という安心感によって、心穏やかに勉強に打ち込む“土壌”が子どものなかにつくり出されるのです。

コロナ禍の夏休み、子どもと一緒にいる時間が長い今こそ、子どもに注意力散漫な様子が見られたら一旦腰を据え、親としての考えを伝える場をつくってあげましょう。もちろん、まずは子どもの頑張りを認めた上で、「目の前のことを頑張れない人が、将来頑張れるわけないだろう」といったことをはじめ、親としての考えを真剣に伝えてあげてください。親の考えをしっかり理解している子は、中学受験を良いかたちで迎えられる傾向もあります。ぜひ、今年の夏を親子の絆を深める時間にも充ててみてくださいね。

悩める親御さん向けセミナー開催!
「ゆる中学受験コミュニティ」>>詳細はこちら

主催:進学個別桜学舎


これまでの記事はこちら
親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

※記事の内容は執筆時点のものです

亀山卓郎
亀山卓郎 専門家・プロ

かめやま たくろう|明治学院高等学校、成城大学卒業。大手塾・個人塾などで教務経験を積んだ後、2007年に転居のため千葉県及び江戸川区の塾を閉鎖し、台東区上野桜木で「進学個別桜学舎」をスタート。首都圏模試の偏差値で60を切る学校への指導を専門に「親子で疲弊しないノビノビ受験」を提唱している。TJK東京私塾協同組合員、第一薬科大学付属高校上野桜木学習センター長。YouTube「下町塾長会議」構成員。著書「ゆる中学受験ハッピーな合格を親子で目指す」(現代書林)、「めんどうな中学生(わが子)を上手に育てる教科書」(ブックトリップ)、構成・問題監修「LIZ LISA Study Series中1/中2」、監修「おっぱっぴー小学校算数ドリル」(KADOKAWA)

この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。