連載 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

「ゆる中学受験」に込めた思い[後編] ―― 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

専門家・プロ
2021年7月14日 やまかわ

中学受験と聞くと、難関校を目指す受験がどうしてもイメージされます。しかし、そうではない、あるいはそのやり方に疑問をもつご家庭は少なくないでしょう。この連載では、『ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す』の著者である亀山卓郎先生に、親子で疲弊しない中学受験をテーマにさまざまなお話を伺います。

進学個別桜学舎で塾長を務める亀山卓郎先生のコラム「親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」」の連載が、おかげさまで50回目を迎えました。そこで亀山先生が提唱され、そして著書のタイトルにもされている「ゆる中学受験」について、改めてそこに込められた思いを2回に分けてお聴きします。

今回は前編に続き、後編です。

勉強は面白い 人生は面白い

―― 亀山先生の著書『ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す』の巻末には、「勉強は面白い 人生は面白い」との一文が記されています。この言葉の真意について、改めて教えていただけますか?

まず私の話で恐縮ですが、10代の頃は自分の興味のあることだけ勉強して、やるメリットがないと判断した勉強はほとんどしない学生でした。当然ながら好きな科目は点数が取れる一方で、嫌いな科目は成績が悪かった。そうは言っても受験勉強となれば嫌いな科目も勉強しないといけないので、自分なりに「わかる部分」「わからない部分」を分析しつつ、わかる部分を増やしながら受験をなんとか乗り越えました。そして受験勉強のなかで培われた「自分で勉強していく力」は、その後の人生でもムダにはならなかったんです。

たとえば私はバンド活動で食べていこうと本気で考えていたことがありましたが、上手くいかず、紆余曲折の末に、以前勤めていた塾を引き継ぐ形で塾経営を始めることにしたんですね。でも、はじめは生徒がまったく集まらなかった。塾をこのまま続けていくためにどうすればいいか、本当に悩みました。こうしたとき、突破口になってくれたのも「勉強」だったんです。

―― 勉強されたことで、塾の生徒が増えていったんですね?

そうですね。ただ、自分で塾の経営を勉強するといっても限界があるので、まずは人のお知恵を拝借しようと思ったんです。いろんな先生の勉強会に顔を出して、塾の経営について一から学んでいきました。そして学んだ内容を塾の経営に反映させていくと、少しずつ生徒の数が増えていったんですね。

このとき実感したのが、知識を手に入れると、多くのメリットやチャンスが舞い込むということ。そして何より、知らないことに出会い、新しいことを知るのは純粋に「楽しい」ということ。

そもそも勉強は受験のためにあるものではなくて、もっと広い意味、たとえば「自分の見える世界を広げる役割」を持っていると思うんです。私も何度も経験してきましたが、知識を手に入れると、見えてくる世界が本当に変わります。そして「勉強=受験に合格するためのもの」という風潮に警鐘を鳴らす意味でも、私はあえて著書のなかに「勉強は面白い 人生は面白い」といったメッセージを盛り込みました。

人生は長い階段

――「勉強は将来の役に立つ!」と子どもに教えても、なかなか理解してくれずに苦労する親御さんも多い印象です。

そこは、親の腕の見せ所でしょうね。「勉強をすると世界が違って見えてくる」と先ほどお伝えしましたが、これはわからなかった問題を一問解けるようになるだけでも実感できるものなんです。たとえば図形の問題が解けなくて頭を抱えていた子が、補助線をたった1本引いただけで「解けた!」とうれしそうな表情を見せることもあります。このように、ほんの少しの気づきだけでも違った世界が見えてくるということを、親御さんは子どもに伝えてあげてほしいですね。

ちなみに私は、「人生は長い階段なんだよ」と母に言われて育ちました。目の前の階段を一段二段と上ってみると、新しいステップが目の前に現れます。そのステップが細いのか太いのか、暗いのか明るいのかは上ってみないとわかりません。このとき「頂上が見えなくて不安だから上りたくない!」と嘆く人は、ずっと下にいるまま。同じ場所に立ち止まっていても何も見えてこないので「とりあえず上ってみなさい」といった教えでした。私はこの教えを今でも大切にしていて、やりたいことができたら、まずは挑戦してみるようにしています。

―― たしかに亀山先生は、塾の経営・塾講師としての一面のほかに、「ゆる中学受験コミュニティ」の開催やラジオ出演、さらにはYoutube「下町塾長会議」への出演や小島よしおさんのYouTubeの監修まで、多方面でご活躍されています。

おかげさまで環境に恵まれ、さまざまな活動に参加させていただいています。一方で「いつまで塾講師として働いていけるんだろう」と不安に感じたことや、ピンチを経験したことも一度や二度ではありません。しかしその度に勉強しつつ、「どうしようか」と考え、対応力や行動力を磨いてきた気がします。今となっては辛い日々も含め、行動した先に道が広がるという点でもやっぱり「人生は面白い」と思っていますね。

こうした経験を踏まえ、私の塾の運営会社・株式会社VISITUSの理念を「For your marvelous future」としました。marvelous(マーベラス)には「素晴らしい」という意味がありますが、語源的には「想像しえない」という意味もあります。本人も想像しえなかったような、素晴らしい未来を見つけるお手伝いをしたい。こうした想いを理念として記しました。

私の塾にも、いわゆる“勉強アレルギー”の子はたくさんいます。でも、少しでもいいから勉強する楽しさ、知らなかったことを知る楽しさを感じてほしい。そして「marvelous」な未来を切り拓いていってほしい。こうした思いを胸に、子どもたちと日々触れ合っています。

―― 子どもを導くために、親御さんとしてはどのような役割を果たせば良いでしょうか?

学者、医者、役者、芸者、易者のそれぞれの役割を理解することが大切です。これは、代々木ゼミナールで理事長を務められていた高宮行男さんも予備校講師に必要なこととして伝えていた言葉ですが、親御さんが意識しておいても損はありません。

まず子どもに勉強を教える以上、勉強がわかる人でなくてはなりません。つまり「学者」です。そして、子どもの様子を見てアドバイスができる。まさに診察して処方箋を出すような「医者」のような資質も欠かせないでしょう。さらには子どもの興味を引く「役者」、楽しく学べる場をつくる「芸者」の役割も必須。そして「あなたにはこんな未来が待ってる。だから頑張ろうね」と子どもを後押しする占い師のような役割、いわゆる「易者」としての力も忘れてはいけません。

このように、子どものやる気を引き出すためにはさまざまな力が必要です。つまり、一朝一夕に子どものやる気が上がることはないということ。親御さんとしては、せっかくの受験というチャンスを「合格のためのもの」と短期的に考えず、色々な顔や役割を意識しつつ、ぜひ「教育」という長期的な視点で捉え直してほしいと思います。

「ゆる中学受験」を広めていきたい

―― 最後に、亀山先生が見据える「未来」を教えてください。

ひとつでも多くの家庭に「ゆる中学受験」の理念を広める。これが、目指す未来ですね。ありがたいことに、私の塾に来てくれる親子からは「桜学舎に通って本当によかった」と言ってもらえることがあります。一方で、まだまだ“前時代的”な中学受験に苦しめられている親子は少なくない。私自身、これまでは「まずは自分ができる範囲で」と思っていましたが、「ゆる中学受験」の理念が少しずつ広まり、拠点を置く台東区以外の場所からも共感の声や反響をいただくようになったことで、「ゆる中学受験」をこれまで以上に広めるのが自分の果たすべき役割、という思いに至りました。そして「ゆる中学受験」に共感いただける方が増えれば、これまでの中学受験の“常識”を覆せるだけの大きな力が生まれる、と確信しています。受験に悩む親子を、少しでも減らす ――。この夢のために、変わらずアクションを起こし続けていきたいですね。

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※記事の内容は執筆時点のものです

亀山卓郎
亀山卓郎 専門家・プロ

かめやま たくろう|明治学院高等学校、成城大学卒業。大手塾・個人塾などで教務経験を積んだ後、2007年に転居のため千葉県及び江戸川区の塾を閉鎖し、台東区上野桜木で「進学個別桜学舎」をスタート。首都圏模試の偏差値で60を切る学校への指導を専門に「親子で疲弊しないノビノビ受験」を提唱している。TJK東京私塾協同組合員、第一薬科大学付属高校上野桜木学習センター長。YouTube「下町塾長会議」構成員。著書「ゆる中学受験ハッピーな合格を親子で目指す」(現代書林)、「めんどうな中学生(わが子)を上手に育てる教科書」(ブックトリップ)、構成・問題監修「LIZ LISA Study Series中1/中2」、監修「おっぱっぴー小学校算数ドリル」(KADOKAWA)

この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。