連載 『二月の勝者』で考える中学受験のリアル

「入試直前の壮行会」これってホント?|『二月の勝者』で考える中学受験のリアル

専門家・プロ
2021年12月18日 西村創

テレビドラマ『二月の勝者-絶対合格の教室-』の内容を受験指導専門家の西村創さんが「実際の現場ではどうなのか」という視点で考察します。

※原作やテレビを見ていない方の完全ネタバレにならないように留意していますが、本コラムでは内容の一部分を紹介しています。予備知識なく原作漫画や録画したドラマを楽しみたいという方は、先にそちらを見ることをおすすめします

受験指導専門家の西村創です。今回はTVドラマ『二月の勝者』の12月18日放送の第10話(最終回)を題材に、塾現場を知る者として「実際はどうなの?」といった点をお伝えしていきます。

[考察]入試直前の壮行会

今回の考察シーンは、受験直前、最後の授業が終わった後に「壮行会」と称して、各講師から生徒たちにエールを送るシーンです。

こちら実際のリアル度は100%です。

各塾では、ドラマと同じように受験直前、最後の授業が終わった後に「壮行会」と称して、各講師から生徒たちにエールを送る会が行われます。

そこで、『二月の勝者-絶対合格の教室-』考察の最終回である今回は、実際に私が、受験直前の生徒に話してきたことを再現してみましょう。

とうとう全部の授業が終わって、これがみんなが集まった教室で話す最後の機会になってしまいましたね。

明日、受験校の校門前では多くの塾が、戦国武将みたいにそれぞれの塾の旗を掲げて、やってきた塾生達に「がんばれよ!」「がんばってね!」って、声をかけてて、圧倒されるかもしれないから、そのときにつぎの言葉を思い出してほしい。

入試は、別に、がんばらなくていいからね。

がんばろうというのは、いままで解いてきた入試過去問とは違う解き方になるということ。入試本番で、今までと違うことをしたら、せっかく今まで積んできた練習を生かせなくなっちゃうからね。

入試って「アンケートに答えに行くようなものだ」と思ってくれればいい。決められた時間のなかで、聞かれたことがわかれば答えを書き込んで、聞かれたことがわからなければ、つぎの質問に進むだけだから。

がんばる必要ないし、集中する必要もないからね。集中しすぎると、残りの時間が迫っていることに気づかないで、ひとつの問題に時間かけすぎて、残った問題は手をつけずに終了、だなんてことが起きる。

ただし、今から言う3つのことは、受験が始める前にもう一度思い返して、試験中に頭から抜けないようにするんだよ。

ひとつめは、時間配分。

入試が始まったら、いきなり最初の問題に取りかかっちゃだめだよ。

いったん、目を紙から離した状態で、どんな問題が出されているか、いままで解いてきた過去問と比べて変わったところはないか、ざっと全部の問題を眺めよう。解き始めるのはそれからだ。

周りから早くも答えを書き込む音が聞こえてくるけど、「あ〜あ、みんな緊張して先走っちゃって」というふうに思っていればいい。

そして、ひとつ大問が終わるたびに、時計を見て残り時間をしよう。今のペースで解いていけばいいのか、もう少しだけ早く解き進める必要があるのか、時間調整しよう。

決して、全く見ないで終わってしまう問題を残さないようにね。

時間配分を意識しよう。

ふたつめ。「受験はアンケート」って言ったよね。

アンケートだから、聞かれたことに、出された条件どおりに、ちゃんと答える必要がある。

何をどのように答える質問なのか。

問題文中の「何に」にあたる言葉、「どのように」にあたる言葉に線を引いたり丸で囲んだりして、見た目にわかりやすくしよう。

そうすれば、緊張して頭が真っ白になって脳が働かなくなっても、目が何をすればいいのかを、知らせてくれる。

聞かれたことに、出された条件どおりに、ちゃんと答えるために、問題文へチェック入れをしよう。

3つめは、テスト時間が残ったら、バカバカしいほど見直そう。

雑すぎてバツにされそうな字はないか、マスをずらして書いてしまっていないか、「ア」を選択したつもりが解答欄には「イ」だなんて書いていないか、指差し確認しながら確認しよう。

記述以外で空欄になっている回答欄があれば、なんでもいいから書き込むんだよ。当たる可能性あるから。

特に記号問題を空欄にするのはもったいない。まったくわからなければ「イ」って書いておこう。一番早く書けるからね。時間が余ったら、とにかく見直そう。

ひとつ、つねに時間配分を意識すること。
ふたつ、問題文へのチェック入れをすること。
3つ、時間が余ったら、バカバカしいほど見直すこと。

これができれば、1科目1問なら5点、2科目なら10点、それが各科目であれば数十点分プラスになる。これは、合格するインパクトのある点数だよ。

受験はみんな緊張して、80%くらいの力しか出せないからね。君らはさっき言った3つのことを守って、普段の100%の力を出せれば、結果的に120%の力を発揮することになる。

だから、がんばるとか気合とかはいらなくて、冷静に、淡々と、3つのことを守ってアンケートに回答してこよう。

そして、もう最後だから、もっと大事なこと言うね。

みんなもうね、受験、成功してるんだよね。

なぜなら勉強する習慣も身についたし、短時間で集中して勉強に取りかかる姿勢も身につけたし、いろんな方向から物事を見られるようになったし、勉強のおもしろさを知ることができた。

受験は、挑戦すればそれだけ不合格の可能性が高まるけど、不合格になっても、それで人生が不利になるだなんて決まらないし、いや、むしろ「なんで不合格になったか」を振り返って受け止めれば、合格するよりも大きく成長できるからね。

第三志望でも第四志望でも、そこに入学したからこそ、そこでトップをめざして、大学受験で成功した先輩たちもいくらでもいる。

どこの学校に進学するかということよりも、入った学校で何を学ぶか、受験勉強とかそんな狭い尺度でなくて、これからの人生に影響を与えるような、人や本やできごとに出会えるか、将来の指針とすることができるものを見つけられるか、ということのほうが、たかが受験の合否より、よっぽと大事だからね。

では、明日から入試だけど、これまで解いてきた過去問と同じように答えてくればいいから。

では、いってらっしゃい!

ということで『二月の勝者-絶対合格の教室-』考察の最終回は、実際に私が受験直前の生徒に話してきたことを再現してみました。入試を目前に控えている小6生とその親御さんの参考になれば幸いです。

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※記事の内容は執筆時点のものです

西村創
この記事の著者
西村創 専門家・プロ

早稲田アカデミー、駿台、河合塾Wings、栄光ゼミナール、明光義塾などで指導歴25年以上。新卒入社の早稲田アカデミーでは入社初年度に生徒授業満足度全講師中1位に輝く。駿台ではシンガポール校講師を経て、当時初の20代校長として香港校校長を務め、過去最高の合格実績を出す。河合塾Wingsでは講師、教室長、エリアマネージャーを務める。また、全国の中学校・高校でのセミナー講演、書籍執筆などに携わる。著書は『中学歴史が面白いほどわかる本』(KADOKAWA)の他多数。「にしむら先生 受験指導専門家」としてYouTube配信中。