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【前編】志望校、受験校をどう選ぶ?|なるほどなっとく 中学受験理科

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2022年5月27日 水溜 兼一(Playce)

学習範囲が広く、難しいイメージがある理科の中学入試問題。難関校に多くの子どもを合格させてきたカリスマ講師・小川眞士さんが、子どもの理科力を育むためのヒントを伝えます。

中学受験で学校選びに悩む方は少なくないでしょう。数ある学校の中からわが子に合った学校をどのように選べばいいのか? 長年、受験生を指導されてきた小川先生に2回にわたりお話を伺います。前編は、第一志望と第二志望以降の学校選びについてお伝えします。

偏差値が届いていない……。それでも第一志望校を受験してもよい?

──学校選びはどのようなことが検討要素になりますか?

まず、中学受験をする前提として、高校受験をさせたくない、同じ学校で6年間一貫して教育してほしい、公立中学に行かせたくない、などといった想いがあると思います。そのうえで、進学校にするか、付属校にするか、男女共学か別学かといったことが検討の要素になってくるでしょう。

──志望校選びについて、昔と今とで異なる点があれば教えてください

昔は「何が何でも、わが子を開成に入れるんだ!」といったように、必死で最難関校を目指すご家庭も珍しくありませんでした。今はそこまでするご家庭は少なくなった印象です。「難関中でなくても、私立の一貫校に行ってくれれば」と考える親御さんも増えてきましたね。ただそうはいっても、受験勉強のスタート時は、偏差値表を見て、とりあえずレベルの高い学校に子どもを入れたいと考える方が多いですよね。

───御三家や人気の難関校に憧れるご家庭は多いですか?

そうですね。多いと思います。それは決して悪いことではなくて、受験勉強のスタート時は、現時点よりかなり偏差値の高い学校に憧れたって構わないんです。目標に向かって努力するプロセスが大事なわけですから。プロセスを経ながら、親子で「この学校もいいよね」という学校を決めていけばいいのです。

──受験勉強に取り組む過程で現実が見えてきて、志望校を考え直さないといけないこともあります。それでも第一志望校は変えないという選択肢はありますか?

私は、子どもが「どうしても第一志望校を受けたい!」と言うなら、受験して構わないと思います。

たとえば6年生の夏ぐらいまでの成績では、第一志望校の合格可能性が高かったのに、秋以降、下がったとします。そうなると入試直前、親御さんは「第一志望校、考え直した方がいいのかな……」と思います。でも、お子さんの意思が固いのであれば、私は基本的に第一志望校を受けることをおすすめします。

ちなみに情報開示をしない学校もありますが、中学受験でも「繰り上げ合格」ということがあります。これは、入学辞退者が出た場合に、合格ラインに届かなかった受験生を繰り上げて合格とするものです。たとえば最難関とされる開成も、毎年一定数の繰り上げ合格を出しています。

「難関校に合格最低点ギリギリで入学して、その後の授業についていけるのか?」と心配される方もいますが、私はその心配は杞憂だと思います。そもそも難関校を受ける子たちは、極端な学力の差はないんです。ギリギリの得点での合格……心配になる気持ちはお察ししますが、合格する子たちの学力差は、親御さんが心配するほどではありません。中学・高校でしっかり学んでいけば、成績は伸びます。私の教え子の中にも、繰り上げ合格で開成に入った子が何人かいますけど、もちろん平均より上の成績で卒業しました。

中学受験は、「いかに効率よく勉強したか」「得点を確実に積み重ねることができたか」で合格が決まる部分があって、残念ながらあれもこれも必死で勉強したのに受からないことがあるんですね。不合格イコールその学校に入る学力がないとは言い切れないのが、中学受験の難しさでもあります。

受験勉強は効率よく?

──話がちょっとそれますが、中学受験は“効率よく勉強すること”が大事?

受験勉強は、大量の教材や問題集に取り組むことになりがちです。入試問題の変化に対応する格好で、塾で学ぶことは年々増えています。塾ではあの学校でこんな難問が出た、あんな難問が出たと、毎年いろいろな問題を研究して、それをカリキュラムに反映します。ずっといたちごっこですね。そういった状況ですから、「あれもこれも対応しなきゃ……!」という考え方で勉強していてはキリがなくなります。ですが実際はそうした考え方、やり方をしている家庭が少なくありません。

また、子どもは得意な教科や単元は進んで勉強しますが、苦手なものは後回しにしがちです。入試までの時間は限られてますから、本来は得意なものよりも、苦手なものに力を入れるべきです。90点取れている教科を95点取れるようにするよりも、40点しか取れない教科を60点にする方が楽ですから。

ところが子どもたちは、得意教科ばかりに時間をかけてしまう。しかも、いくら得意な教科でも成績には波がありますから、これまでテストで90点取れていたのが、あるときは70点しか取れなかった……ということも起こり得ます。すると、「得意教科なのに点が取れなかった……!」と、さらに勉強しようとする。これではいつまでも苦手教科が苦手なままです。

今の受験生を見ていると、得意教科も苦手教科も、勉強をやり過ぎているなと感じることがあります。「そこは20%ぐらいの力をかければいいのに……」という箇所にも一生懸命なんです。その姿勢が悪いということではありませんけど、効率的に勉強するのって、やっぱり大事ですよね。

──どうしたらいいんでしょうか……?

子どもがどの教科や単元を重点的に勉強したらいいかを冷静に判断する人が必要です。まずは、身近で子どものことを見ている親が判断できるといいですね。もしくは、塾の先生と相談して、やるべきことを明確に絞るかです。

合格のためには、ほとんどの受験生が解けないような難問はできなくてもいいから、正答率が高い問題を取りこぼさない。これが基本です。すべての教科で高得点を目指したい、まんべんなく成績を伸ばしたい気持ちもわかりますが、まずは極端に点が取れない教科をなくすことを意識してみてほしいです。

子どもに合う学校とは?

──志望校選びの話に戻ります。第二志望以降の学校はどうすればよいでしょう?

第二志望以降の学校の選定は重要です。子どもは第一志望校のことに目が向きがちなので、その学校に受からなかったらどうするか、セーフティーネットを考えるのは親の役目です。

避けていただきたいのは、偏差値だけを基準に受験校を決めることです。よく「偏差値65の壁」などと言われますが、偏差値が62、3と65の学校で、どれほど大きな違いがあるのでしょうか?

通学にものすごく時間がかかって体力を消耗する、子どもの学力と合格者のレベルがあまりにかけ離れている、子どもの性格と学校の教育方針が真逆だ……などといった、あきらかに合わない要素がない学校なら、その学校は選択肢になると思います。親御さんはアレコレ心配されますが、不思議なもので、子どもたちは進学した学校に馴染んでいくんです。だから、お子さんのことを信頼してほしいなと思います。

そういう意味でいうと中学受験は、親の方が「あのとき〇〇中学に受かっていれば……」とか「○○中学も受けておけば……」と、学校選びのことでいつまでも悔やまれる方が多いです。

こういうと元も子もないですが、学校が子どもに合うかどうかは、入ってみなければわかりません。親が思う、子どもに合った学校に入れたつもりでも、担任の先生と合わない、友達とうまくいかない、学校の雰囲気と合わないといったことなどはありえますから。

──学校が子どもに合うかどうかは結果論という……。

「子どもが行ってはいけない学校」というものはないと思います。一番良くないのは、「あなたの成績では、この学校しか行けないんだよ」と、その学校のレベルが低いようなニュアンスを込めて親が子どもに話すことです。

受験の結果、価値があるのにもかかわらず親がその価値を見つけることができない学校に行かされる子どもは可哀想に思います。中学受験はそういうケースが少なくありません。志望校のことをちゃんと理解したうえで、いくつかの学校を子どもに提示し、「どの学校もいい学校。受かったらどこに行ってもいいよね」と言って受験させるのが望ましいですよね。

そして、志望校選びは基本的に子どもの意見を優先してほしい。子どもに行きたい学校があるなら、その意見は尊重すべきです。もし、志望校選びで「親としてどうしても譲れない部分がある……」というなら、それは遠慮せず素直にお子さんに伝えて、じっくり話し合うべきでしょう。

後編につづく


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※記事の内容は執筆時点のものです

小川眞士
小川眞士 専門家・プロ

小川理科研究所(東京都豊島区)主宰。都内の中学校教諭を経て、四谷大塚進学教室理科講師に。開成や桜蔭の特別コースを約25年間担当、コース生28人全員が開成中学に合格した実績を持つ。教務主任や副室長も務めた。2009年4月に小川理科研究所を開設。主な著書に、『中学受験 理科のグラフ完全制覇』(ダイヤモンド社)、『これだけ理科』(森上教育研究所スキル研究会)、『カンペキ小学理科』(技術評論社)がある。

この記事の著者

雑誌・新聞の編集・ライターを経て、現在は、通信教育企業のキュレーションサイトや大学案内のライティングなどを担当。