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理科学習では、何を覚えるべきか?【後編】|なるほどなっとく 中学受験理科

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2022年7月15日 水溜 兼一(Playce)

学習範囲が広く、難しいイメージがある理科の中学入試問題。難関校に多くの子どもを合格させてきたカリスマ講師・小川眞士さんが、子どもの理科力を育むためのヒントを伝えます。

理科は暗記教科と考えている親御さんは多いようです。しかし小川先生は、「暗記すべき事柄は限られていて、その数はみなさんが思っているよりも少ない」と言います。では、何を覚えるべきなのか? 前編に続きお伝えします。今回は化学と地学(天体)分野を例にお話しいただきます。

化学分野で最低限覚えるべきこととは?

化学分野で最低限暗記しなければいけないものは、12種類の水溶液と9種類の気体の特徴です。

水溶液については、酸性・中性・アルカリ性、水溶液に溶けているもの(溶質)の名前やにおい、リトマス紙やBTB溶液といった指示薬の変化などを正確に覚えなければなりません。

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気体については、色・におい、空気より重いか軽いか、水に溶けるかどうか、助燃性・可燃性などの特徴を覚えます。

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化学分野では、下記のような気体の発生グラフを覚えようとする受験生がいますが、それはあまり意味がありません。

入試では上記のほかにも、二酸化マンガンに過酸化水素水を加えて酸素を発生させたり、石灰石に塩酸を加えて二酸化酸素を発生させたり、二つの物質から気体を発生させる実験がテーマになることがあります。しかし、入試問題で示される表やデータをきちんと読み解けばグラフは作成できます。また、入試で提示される気体の発生グラフは、上図と同じものが出るとは限りません。

グラフを覚えることではなく、気体の発生や中和などについて理解し、その時にできる表やグラフの数値の意味を理解することと、表で量が変化している部分やグラフが曲がっている部分の意味などを理解することが大事です。

天体は何を覚えるのか?

覚えることを絞るという点で、もう一つ、地学分野の天体を例に紹介します。天体は苦手な受験生が多い単元です。入試で苦戦する原因の一つは、いろいろな星の名前や動きを個別に覚えているからです。入試問題では太陽と星を統合した問題が出題されることがありますから、星の特徴を覚えたうえで太陽の動きと関連づけて理解する必要があります。但し、星といっても最低限覚えなければいけないのは次の10の星座・星です。

冬の代表的な星座……おおいぬ座、こいぬ座、オリオン座

おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオン、オリオン座のベテルギウスを結んでできる三角形を「冬の大三角」と言います。

オリオン座は、一等星が2つと、二等星の三つ星があります。また、オリオン座の2つの一等星のうち、ベテルギウスは表面温度が低いため赤色で、リゲルは表面温度が高いため青白い色をしています。オリオン座の真ん中の三ツ星は、春分と秋分の日の太陽と同じく真東から出て真西に沈みます。

おおいぬ座のシリウスは夜空の恒星の中で最も明るい星です。

冬の大三角の上にはふたご座があります。ふたご座には夏至の日の太陽が来る夏至点があり、夏至の太陽と同じ動きをします。

夏の代表的な星座……こと座、わし座、はくちょう座、さそり座

こと座のベガ、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブを結んでできる三角形を「夏の大三角」と言います。さそり座は、南の低い空に見えます。さそり座の横には いて座 があります。いて座には冬至の太陽が来る冬至点があり、冬至の太陽と同じ動きをします。

北の星……北極星、北斗七星、カシオペヤ座

北極星は、地球の地軸の延長線上の遥かかなたにあり、地球から見ると動かないので、あらゆる星の動きの基準になります。北極星の高度は緯度と同じとなります。北斗七星とカシオペヤ座は北極星をはさんでほぼ対象的な位置にあります。この二つの星座は北極星を見つけるためのものでもあります。

上記の星座や星について基本的な特徴を覚えたら、透明半球で太陽と星座の動きを関連づけて覚えます。

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星座は地軸を中心に動き、すべての星座は春分と秋分の日の太陽に対して平行に動くことや、星の動きは1年中変わらないこと、太陽は季節によっていろいろな星座の動きと重なることが理解できると思います。

上図で春分と秋分の太陽は真東から上がり真西に沈み、春分の太陽が来る春分点がある うお座や、秋分の太陽が来る秋分点がある おとめ座 、そして真東から出て真西に沈む三つ星を含むオリオン座は同じような動きをします。冬至の太陽は、冬至点がある いて座 やそのそばの さそり座 、冬の大三角では南中高度の低い おおいぬ座 の星とほぼ同じように動き、夏至の太陽は、夏至点のある ふたご座 の星とほぼ同じように動きます。

入試では、北極や赤道での太陽や星座の動きを問う問題が出題されることがあります。前述した内容を理解できていれば、あとは星の動きを観測する場所の緯度が変化するだけなので、透明半球の中心と北極星を結ぶ線を緯度に合わせて、透明半球を傾ければ動きがわかります。

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上図から、北極では地平線と並行に太陽や星が動き、赤道では地平線と直角に動くことが理解いただけると思います。北極付近で夏至にあたる時期に、太陽がまったく沈まない白夜や、冬にはまったく太陽がのぼらない期間があるのはこういった理由があります。

今回は、化学と地学分野を例に理解した上で覚えるべきことをお伝えしましたが、理科のどの分野でも何をどのように覚えるべきかを見極めることが大切です。


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※記事の内容は執筆時点のものです

小川眞士
小川眞士 専門家・プロ

小川理科研究所(東京都豊島区)主宰。都内の中学校教諭を経て、四谷大塚進学教室理科講師に。開成や桜蔭の特別コースを約25年間担当、コース生28人全員が開成中学に合格した実績を持つ。教務主任や副室長も務めた。2009年4月に小川理科研究所を開設。主な著書に、『中学受験 理科のグラフ完全制覇』(ダイヤモンド社)、『これだけ理科』(森上教育研究所スキル研究会)、『カンペキ小学理科』(技術評論社)がある。

この記事の著者

雑誌・新聞の編集・ライターを経て、現在は、通信教育企業のキュレーションサイトや大学案内のライティングなどを担当。