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4教科の中の理科の位置づけ 国語と算数が優先? 理科と社会との関連は?|なるほどなっとく 中学受験理科

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学習範囲が広く、難しいイメージがある理科の中学入試問題。難関校に多くの子どもを合格させてきたカリスマ講師・小川眞士さんが、子どもの理科力を育むためのヒントを伝えます。

中学入試に向けた学習では基本的に、国語・算数・理科・社会の4教科を学びます。このなかでどの教科を優先的に学習すべきか。理科と社会の関連についてもお話を伺いました。

国語と算数が優先か

── これまでに小川先生にいろいろなお話を伺ってきましたが、「理科は5年生から本腰を入れても間に合う」と、以前おっしゃっていました。そうなると4教科の中で、国語と算数を優先すべきなのでしょうか?

理科と社会は後回しでOKと言うつもりはないですが、まずは「読み、書き、そろばん」(そろばんは、計算力をつけるという意味)が、きちんとできていないとマズいですね。英語の学習でも日本語ができていないと、英語力が伸びないと言われますが、それと同じことです。

読む力、書く力、計算力というのは、中学受験だけに留まらず、中・高・大と学んでいくための基礎となるものです。これらは一朝一夕には身に付きません。小学校4、5年生ぐらいまでは、国語と算数の学習を特に重視して、しっかりと力を養う必要があります。そのために理科と社会の学習が後回しになってしまうのは仕方がない部分もあります。

ただし、後回しと言っても、中学受験の理科と社会は、とにかく最後に覚え込めばいいというものではありません。この2教科は暗記すればなんとかなるというものでもないんです。

── 理科・社会は覚えるだけでは入試に対応できないのですね。ちなみに、国語・算数の力は、理科の問題を解くうえで、どう関連するのでしょう?

理科の問題を解くには、文章を読み解く力と計算力が必要です。

特に近年の入試の理科問題は、リード文や問題文が長文化する傾向にあります。リード文と問題文の文字数が合計で約9500文字にもなる麻布中の理科問題などは、一見すると国語の読解問題のようです。ここまで顕著でなくても、難関校のリード文・問題文の文字数の平均は約5000字です。書かれている内容を理解して整理して、要点をきちんとつかむことが、解答するための第一歩となります。

計算力は言わずもがなです。てこやばね、気体の発生、電気など、正確に計算できないと解けない問題が当たり前のように出題されています。

算数が得意な子は、理科もできる?

── 計算力の話が出ましたが、算数・理科は理系科目ですよね。そうすると、算数が得意な子は、理科も得意だったりしますか?

理科に必要な算数の力は部分的で、大事なのは計算力です。計算力というと漠然としてるというなら、「正確に四則演算できること」と言ってもいいです。たとえば、理科の問題を比で解く子もいますが、比を知らなくても正確に四則演算ができれば問題は解けます。だから「算数ができれば、理科も」とか、「理系だから、算数と理科はできるはず」などと、ひと括りにするのは語弊があるんです。

実際、理系・文系という区分けではなく、算数と社会は得意だけど、国語と理科は苦手という受験生はときどき見かけますし、相談を受けることもあります。

──算数・社会が得意で、国語・理科が苦手、という組み合わせは意外です。

そのような子は、いろいろなパターンを覚える学習方法で、かつ算数ばかりに力を入れている可能性が高いです。その算数の学習はどのようにしているかというと、とにかくたくさん問題を解く。解答パターンを体にしみ込ませるといった学習です。このような学習方法は、覚えたところをチェックするような塾のテストでは得点できますし、同様に覚えたことを尋ねられることが多い社会の問題も正解できます。しかし、初見の文章を読み解かなければならない国語の問題や、思考力を問う理科の問題は解けないのです。

もちろん、ひたすら問題を解いてパターンを体にしみこませるのも入試攻略の方法のひとつですから、このような学習方法を完全に否定はしません。しかし、特に難関校では、ただパターンを覚えるだけでは解けない問題が出る傾向が強まっています。算数も社会も思考力が必要な問題はあるはずですから、このような学習方法一辺倒では入試は厳しいと感じます。

─ちなみに4教科の中で、理科だけ苦手という子はいますか?

理科だけ成績が極端に悪いという子はたまにいます。そういうケースは、そうなってしまった大きな原因が必ずあります。たとえば、ある特定の単元の問題がほとんどできなくなって、それを全体的に苦手だと解釈して理科の勉強が嫌になってしまった子がいました。でも、ほかの3教科はできて理科だけできない場合は、理科はできるようになります。そのような場合は、嫌いになった原因をきちんと特定して、再度、正面から取り組むようにします。

これとは逆に、理科だけが得意という子もいます。そのような子は理科が好きだから、理科の勉強ばかりしていて、他教科には力を入れていません。だから得点が上がらないわけです。でも、理科的な思考力は身についているはずですから、その思考力を国語や算数にも生かせるようになると成績がアップすると思います。

理科学習のポイントは

── 「理科は5年生から本腰を入れて学習しても間に合う」というお話がありました。でも、さまざまな単元があって学ばなければいけないことが多いイメージがありますが……。

今は新4年生、あるいはそれよりも下の学年から塾に通って理科の授業を受ける子も多いですが、以前は大手塾でも理科は5年生から授業をスタートしていた時代がありました。それでも受験には間に合っていたんです。たしかに理科はいろいろな単元があってそれぞれ内容が異なりますが、入試のために理解すべきことは各単元とも限られています。その限られた内容をどれだけしっかり理解できるかがカギです。

なんでも暗記しようとせず、まず原理原則をきちんと理解すること、そして最低限覚えるべきことをきちんと覚えること。

その際の判断基準としてわかりやすいのは、生物名なら演習問題で頻繁に出てくるものや、小学校の教科書で扱っている生物です。また、基本原理としては小学校の教科書で扱っている実験結果の整理や、塾の教材などで基本事項にあたる内容です。

たとえば 以前のコラム「理科学習では、何を覚えるべきか?【前編】 」で、生物を例に説明しましたけれども、実際入試問題に出てくる生物は、あまり名前を聞いたことがないものが取り上げられることは少なく、教科書に度々出てくる生物なんです。もちろん難関中の入試問題を中心に例外的なケースもあります。ただそういった場合は、問題文やリード文で説明がなされることが多い。だから、過去問演習で仕上げるのが大事ということになります。過去問演習では、どのような問題が扱われたのかを確認して、理科的思考を測る良問を解くことが大事です。

過去問演習のポイントは、これまでにこの連載でお話していますから、ぜひ参考にしてください。

理科と社会の関連

──理科と社会は、生活に密接な印象がありますよね。この2つの教科は関連づけて学んだ方がよいでしょうか?

特別に意識して、関連づける学習をする必要はありません。でも、どちらの教科も「なぜ?」という視点は大事にしてほしいですね。

たとえば理科では、「流水のはたらき」の学習のなかで、V字谷、扇状地、三角州など、川の水のはたらきでできた地形を学びます。さらに扇状地には、「れき」と呼ばれる、比較的粒が大きい土砂が堆積することや、代表的な扇状地の一つとして甲府盆地があることも学びます。一方、社会では、甲府盆地はぶどうや桃などの果樹栽培が盛んなことを学びます。

しかし、なぜ、扇状地は果樹栽培に適しているのかについては、理科でも社会でも学ばないことが多いんです。果樹の根は酸素を大量に必要とするため、水はけがよい土地でないと育ちません。そして、「れき」が堆積している扇状地は水はけがよいから、果樹栽培に向きます。

このように「なぜ?」という視点を大事にすれば、理科と社会、双方の学びをつなげて深く理解することができます。

それと、これは私見ですが、今後の入試問題では、このような理科と社会を融合した問題は増えていくと思います。お子さんとの会話のなかで親御さんがきちんと説明できなくても構いませんから、「なぜだろうね?」と問いかける姿勢は大事にしていただきたいですね。

ほかにも、理科と社会の学習ではともに環境問題や災害などについて学びます。このようなテーマは、入試の理科では時事問題という形で取り上げられることが増えています。理科は、化学・物理・生物・地学の4分野に分けられますが、近年は、さらに時事という分野があるのではないかと思うほど、各校とも時事問題に絡めた出題が増えていますね。

理科学習では、時事問題を重点的に学ぶ機会を設ければ、理科・社会で習ったことについて理解を深めることができると思います。

※記事の内容は執筆時点のものです

小川眞士
小川眞士 専門家・プロ

小川理科研究所(東京都豊島区)主宰。都内の中学校教諭を経て、四谷大塚進学教室理科講師に。開成や桜蔭の特別コースを約25年間担当、コース生28人全員が開成中学に合格した実績を持つ。教務主任や副室長も務めた。2009年4月に小川理科研究所を開設。主な著書に、『中学受験 理科のグラフ完全制覇』(ダイヤモンド社)、『これだけ理科』(森上教育研究所スキル研究会)、『カンペキ小学理科』(技術評論社)がある。

この記事の著者

雑誌・新聞の編集・ライターを経て、現在は、通信教育企業のキュレーションサイトや大学案内のライティングなどを担当。