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[入塾前]子どもの理科的思考力を育むために、親ができること【前編】|なるほどなっとく 中学受験理科

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2022年10月14日 水溜 兼一(Playce)

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学習範囲が広く、難しいイメージがある理科の中学入試問題。難関校に多くの子どもを合格させてきたカリスマ講師・小川眞士さんが、子どもの理科力を育むためのヒントを伝えます。

「子どもにとって、小さい頃の体験は大切」と言う小川先生。いろいろな体験が、中学受験の理科学習にも大いに役立つそうです。今回は、入塾前の低学年のお子さんを持つ保護者の方向けに、子どもの理科的思考力を伸ばすためのポイントをお聞きしました。

子どもの好奇心を伸ばすよりも、邪魔しない

入塾の際に、「うちは夫婦二人とも文系で理科のことはよくわからないので、よろしくお願いします」とおっしゃる親御さんがいます。学生時代に文系だったので、子どもに理科のことを聞かれても答えられない、家庭で理科力を伸ばす方法もわからない、ということのようです。しかし、たとえ親御さんが学生時代に理科が苦手だったとしても、お子さんの理科的思考力を養う方法はあります。

そのことを考えるうえで、覚えておいていただきたいのは、“もともと理科嫌いの子はいない”ということです。どんな子も好奇心旺盛で、不思議なものや奇妙なものに興味を持ち、触れてみて、「これはなんだろう?」と考える姿勢が備わっています。私は、これこそが理科的思考力の本質だと考えます。

ところが小学校に入り、理科学習が始まり、さらに受験勉強をするようになると、「理科は苦手、理科は嫌い」という子が出てきます。このような子の大部分は大人、特に親御さんに“理科を嫌いにさせられている”と思います。小学校の中学年ぐらいまでは好奇心が特に旺盛な時期で、何でも触ったりやってみたくなったりするものです。しかし親が、「これは触ってはダメ」「そんなことをしてはダメ」と言い過ぎたり、「教科書に書いてあることをちゃんと覚えないとダメ」などと、覚えることを強要し過ぎたりすると、子どもの好奇心はしぼんでいきます。

小さい子にとって親の発言は絶対的です。言われたことを守ることも大切ではありますが、さまざまなことを禁止されることで、“自由にやってみて、触ってみて、自分なりに考えてみる”という姿勢が弱くなります。そうやって受験理科の勉強を始めると、面白さに気づくことができず、「理科の勉強は、教科書や参考書、塾のテキストを覚えて問題を解くものだ」と思うようになります。そして理科の勉強が、苦行になってしまうのです。ですから、理科が好き、理科が得意な子どもに育てるためには、子どもの好奇心を伸ばすことよりも、まずは子どもの好奇心を邪魔しないことが最も大事です。

理科の学びは自然の中、遊びの中にある

近年の中学入試の理科の問題は、どれだけ覚えているかを問うのではなく、理科的思考力を測る問題が増えています。子どもの理科的思考力を伸ばす近道は、子どもを自然の中で遊ばせることです。なぜなら、理科は自然から学ぶ学問だからです。生物はもちろん、地学も物理も化学も、自然の中のさまざまな事象について考えて、法則などを見つけることで発展してきました。

医学博士の養老孟司さんは、昆虫博士でもありますが、彼は「小さい子は昆虫採集に行かせろ」と言います。この点について、私も共感する部分が多いです。実際、昆虫採集に熱中する子は理科の力が伸びる印象があります。

どうしてなのか。昆虫採集をしていると、お目当ての昆虫を探すことになります。その時に、ただ自然の中に行くだけだと、目当ての虫は見つからないことがあります。そうすると、子どもたちは「どうしたら昆虫を捕まえられるか……」を考えるようになります。

たとえば、蝶は不思議なことに「飛ぶルート」がおおよそ決まっています。これを「蝶道」といいます。蝶を捕まえることに熱中していると、子どもたちはどこかで、この法則のような「蝶道」に気づくかもしれません。

カブトムシやクワガタは、すべての木にいるわけではありませんから、捕まえるためにどうするか、どんな木のどこにいるのかを考えて探そうとします。昆虫は大きさや形、模様がそれぞれ違いますから、どこがどう違うのかを見分ける観察眼も磨かれます。これらは理科的思考力の素地です。

昆虫採集以外にも、自然の中で遊ぶと理科的思考力が養われます。たとえば、石を積んで川の流れをせき止めて小さなダムを作る遊びがあります。水をうまくせき止めるには、流れを見ながら、どんな石をどのように置いたらいいか考えなければなりません。自然の中で遊ぶことで、法則を自分なりに見つけていく。いろいろなものを見て触れるなかで、自分の興味があることを見つけて、もっと知ろうとしていく。これらはとても素晴らしいことなのです。

なぜ体験、遊びが大切なのか?

小さい頃に自然の中で体験したことは、受験勉強でも大いに役立ちます。

たとえば、中学受験の理科では、「陸風と海風」を学びます。陸風と海風は、砂浜と海水の温度差で起こります。夏、炎天下の砂浜の上を歩くと、足の裏がとても熱いとか、その後に海に入るとかなり冷たく感じるといったことは、海水浴に行ったことがあれば体験したことがあるでしょう。その陸と海の温度差が、それぞれの風を生み出します。

しかし、子どもたちのなかには、「海に行ったことがない」という子がいます。「熱い砂浜を歩いたことも海に入ったこともない。陸風と海風のことは塾のテキストで知った」というのです。そういった子は理科の問題が解けない、などと強弁することはないですが、知識を得るという観点で、少し惜しい気がします。

理科講師は普段の授業でも、身の回りの現象を持ち出して、例え話を織り交ぜながら授業をすることがあります。経験が豊富な子は、授業で実例を出すと、「あ、それやったことがあるよ」とか、「それ、実際に見たことがある!」という反応をします。そういった子は、私が言ったことがスッと頭に入るのか、吸収が早い。しかし、経験が乏しい子は、何のことかよくわからない。理解してもらうために、こちら側もさまざまな例を出して説明をするのですが……、やはりイマイチ伝わりにくいことがあります。ですから、できるだけ五感を働かせて経験することが大事です。たとえば花火ひとつとっても、テレビで見るのと、現地で実際に打ち上げられる様子を見るのとでは、音や色の違いに気づくはずです。

理科における経験とは、国語における語彙のようなものなのかもしれません。語彙が少ない子は、国語の文章を読むときに苦労するでしょう。理科学習の場合、身体的な経験が少ないと、理解がうわべだけのものになりがちで、知識の応用も効きにくくなります。

理科的思考力とは、ただ結果を考えるのではなくて、なぜ、そうなるのか原因を考えながら結果を求めることです。自然の中は、わからないこと、不思議なことに満ちあふれています。そういったものがあるからこそ、自分なりに疑問を持って考えます。その経験が大事です。

子どもは疑問を抱いたことについて、「なんで?」と親に聞くことがあると思います。そのとき親がスラスラと答えられなくても問題ありません。「わからないなぁ、不思議だね」と言って、子どもと一緒に考えてみればいいのです。「何でだろうね?」と返事をするだけも構いません。

子どもの疑問を親が取り上げた、不思議を大事にしているという姿勢が、子どもに伝わることが大事です。授業でも「それはいい質問だね」と、私がリアクションをすると、子どもたちは嬉しそうな表情になります。

子どもが小さいうちに、できるだけ一緒に自然の中に出かけていろいろ経験させてあげてください。どの体験も、子どもの理科的思考力を伸ばすのに大いに役立つはずです。

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※記事の内容は執筆時点のものです

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小川眞士
小川眞士 専門家・プロ

小川理科研究所(東京都豊島区)主宰。都内の中学校教諭を経て、四谷大塚進学教室理科講師に。開成や桜蔭の特別コースを約25年間担当、コース生28人全員が開成中学に合格した実績を持つ。教務主任や副室長も務めた。2009年4月に小川理科研究所を開設。主な著書に、『中学受験 理科のグラフ完全制覇』(ダイヤモンド社)、『これだけ理科』(森上教育研究所スキル研究会)、『カンペキ小学理科』(技術評論社)がある。

この記事の著者

雑誌・新聞の編集・ライターを経て、現在は、通信教育企業のキュレーションサイトや大学案内のライティングなどを担当。