中学受験ノウハウ 学習 連載 なるほどなっとく中学受験理科

[入塾前]子どもの理科的思考力を育むために、親ができること【後編】|なるほどなっとく 中学受験理科

専門家・プロ
2022年10月14日 水溜 兼一(Playce)

0
学習範囲が広く、難しいイメージがある理科の中学入試問題。難関校に多くの子どもを合格させてきたカリスマ講師・小川眞士さんが、子どもの理科力を育むためのヒントを伝えます。

前回に続き、入塾前の低学年のお子さんを持つ保護者の方に、子どもの理科的思考力を伸ばすためのポイントを小川先生にお聞きしました。「自分は理科が苦手だったから、子どもの理科学習のことはよくわからない」という方も、ぜひ参考にしていただければと思います。

家庭で理科的思考力を伸ばすには?

前回自然の中で子どもが遊ぶことの大切さを述べました。しかし、親御さんのなかには、「なかなか自然の中に行く機会がつくれない」という方がいらっしゃるかもしれません。しかし、家庭でも子どもの理科的思考力を養う方法はあります。

生き物に触れるという点では、家庭で昆虫を飼ったり、花を育てたりすることは、子どもにとってとてもいい経験になります。生物について図鑑で学ぶこともひとつの方法ですが、やはり本物を見ることが大切です。昆虫は卵から成虫まで、植物は種から実がなるところまで育てて、どのように育つかを実際に確認できるとベストですね。

思考力というのは実際に手を動かして作業をすることでも身についてきます。その点では、折り紙で遊んだり、牛乳パックやストローでいろいろなものを工作したりすることも効果的です。最近はYouTubeを見て過ごす子が多いようですが、できるだけ手を動かす時間をつくってください。工作は、キットになっているものよりも、自分で材料を集めて作る方がよいでしょう。たとえうまくできなかったとしても、完成に向けてじっくり取り組んだことや、子どもたちが工夫をした点を評価してあげてください。

実際に作業をするという点では、料理のお手伝いは実践しやすいと思います。調味料を入れるとどのように味が変わるのか、火を通すことで素材がどのように変化するのかを体験するのは、子どもも楽しいはずです。料理は化学ですから、化学に身近に触れるという点で貴重な体験です。

理科的思考力を伸ばすというのは、簡単に言うと好奇心をいかに育てるかです。子どもの好奇心を育てるためには、五感を働かせる場面をできるだけつくることを意識してみてください。

経験によって生まれるものとは?

子どもがさまざまな経験をしていくなかで、「自分はこれが好きだ」というものが見つかると最高です。なんでも満遍なくできる必要はありませんし、飽きてしまう物事があっても構いません。「いろいろやってみたけど、自分はこれがやりたい」と、一つのことを深く追求しても理科的思考力は身に付きます。大切なことは、子どもの「好き」を止めさせないことです。

経験をすると、わからないことがたくさん出てくると思います。わからないことがあることは悪いことではないですし、なんでもすぐに疑問を解決する必要もありません。不思議なことや、奇妙なことは、そのまま自分のなかに持っておくことが大事です。理科の勉強をしていく過程で、「あのとき疑問に思っていたことの答えは、これだったのかも!」と、「?」が「!」に変わる瞬間があります。すると学んだことがより頭に定着するようになります。

中学入試の理科の問題は、近年は思考力を問う問題が増えていますし、中学以降の学びにおいても自分で考える力は必須です。ある事象を考えるときにはいろいろな情報が入ってきますが、それをいかに自分の頭で処理できるかが大事です。そのためには、自分の中に基準、モノサシを持っていないと難しいものです。その基準になるのが経験です。

経験が少ないと、「誰かが言っていたから、こう思う」とか、「テレビで見た。こういうものなんでしょ?」という思考になりかねません。つまり、小さいうちから、まわりに与えられたものや、ただ覚え込まされたもので基準をつくってしまう。そうなると、常に誰かの意見と目の前の事象を比較することになります。人によってモノの考え方や捉え方は千差万別ですから、基準、モノサシがぐらぐらと揺らぎますし、「あなたの意見はなんですか?」などと問われたときに答えに窮してしまうのです。

やはり、小さい頃の体験が充実しているほうが、学ぶことが自分ごと化されやすく、授業で習う内容や、先生の話との類似性、違いにも気づきやすい。自分の経験と照らし合わせて、どこが同じで、どこが違うのかを考えることは、理科を深く理解していうえで大切なのです。

文系親でも子どもの理科的思考力は伸ばせる

前回、今回と、小さいお子さんの理科的思考力を養う方法を紹介してきました。親御さんが「自分は文系で理科は……」と思っていらしても、できることはたくさんあることがおわかりいただけたのではないでしょうか。小学校に入学したら、子どもが学校で何を教わってきたか聞いてあげるだけで構いません。子どもは親に話すことで学んできたことを整理します。

最後に、子どもがいろいろ経験するなかで、「褒めること」を忘れないでください。親はどうしても、子どものダメなところに目が行きがちです。じつは、子どもを褒めることは意外と難しく、子どもをきちんと見ていないと適切な言葉が出てきません。小さい頃は、「よくできたね」「すごいね」というシンプルな言葉だけでも子どもは喜びますが、大きくなるにつれて自我が出てくるので、「親は自分を褒めることで、何かをさせようとしているのか?」と子どもは勘ぐることもあります。ですから、具体的にどこがいいのかをきちんと見つけて褒めてあげてください。親のひと言は子どもにとって大きいです。お子さんへ掛ける言葉を意識することも、子どもの好奇心や理科的思考力を伸ばすポイントです。

※記事の内容は執筆時点のものです

0
小川眞士
小川眞士 専門家・プロ

小川理科研究所(東京都豊島区)主宰。都内の中学校教諭を経て、四谷大塚進学教室理科講師に。開成や桜蔭の特別コースを約25年間担当、コース生28人全員が開成中学に合格した実績を持つ。教務主任や副室長も務めた。2009年4月に小川理科研究所を開設。主な著書に、『中学受験 理科のグラフ完全制覇』(ダイヤモンド社)、『これだけ理科』(森上教育研究所スキル研究会)、『カンペキ小学理科』(技術評論社)がある。

この記事の著者

雑誌・新聞の編集・ライターを経て、現在は、通信教育企業のキュレーションサイトや大学案内のライティングなどを担当。