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地学分野の「太陽の動き」を理解するために必要な2つのこととは?|なるほどなっとく 中学受験理科

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2022年11月24日 水溜 兼一(Playce)

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学習範囲が広く、難しいイメージがある理科の中学入試問題。難関校に多くの子どもを合格させてきたカリスマ講師・小川眞士さんが、子どもの理科力を育むためのヒントを伝えます。

中学受験の理科の地学分野の問題では、日本における春分・秋分、夏至、冬至の太陽の動きを問われることがあります。さらに、日本だけでなく、南半球や北極・南極などでの太陽の動きを聞かれることもあります。太陽の動きをどのように理解すればいいのかを小川先生に聞きました。

春分・秋分は、昼と夜の長さが同じ?

地球は太陽の周りを約1年かけて回っていることや、地球は約1日で360度自転していることは、多くのお子さんもご存じだと思います。また、冬は夏よりも早く日が暮れる、夏と冬では物の影の長さが違うといったことを、普段の生活の中で実感することもあるでしょう。

季節によって日の長さや影の長さが変わるのは、地軸が傾いたまま太陽のまわりを公転しているからです。地軸が傾くことで地球のさまざまな場所によって太陽の光の当たり方が変わります。ちなみに地軸の傾きは、公転している面に垂直な方向に対して、23.4度です。

 

夏至の頃には、太陽の光があたる角度が北半球で高く(南半球で低く)なります。逆に冬至の頃には、北半球で低く(南半球で高く)なります。もしも地軸が傾いていなければ、いつでも春分・秋分と同じように太陽があたる角度は同じです。

ところで、みなさんは春分と秋分はどんな日だと思いますか?

「昼と夜の長さが同じ日」と答える方がいらっしゃいますが、じつは違います。なぜなら、日の出は、太陽の上端が地平線(または水平線)に接する瞬間のことをいい、日の入りは太陽が地平線(または水平線)に沈み切った瞬間を指します。日の出から日の入りまでを昼とするので、春分・秋分の日は、昼の時間が、おおよそ12時間8分となり、昼が夜より長くなります。春分と秋分の日は、正しくは、太陽が春分点と秋分点(※)を通る日で、この日は太陽が真東から出て真西に沈みます。

 

 

※春分点・秋分点:天の赤道と黄道との交点のうち、黄道が南から北へと横切る点を春分点といい、北から南へと横切る点を秋分点という。

さて、太陽は東から出て西に沈みますが、毎日必ず一度、真南を通過します。太陽が真南に来たときの角度を南中高度といいます。北半球の南中高度は、下記のように求められます。

春分・秋分の南中高度:90-その土地の緯度

夏至:春分・秋分の南中高度+23.4(地軸が傾いている角度)

冬至:春分・秋分の南中高度-23.4(地軸が傾いている角度)

たとえば東京は北緯36度なので、

春分・秋分の日の南中高度:90-36=54度

夏至:54+23.4=77.4度

冬至:54-23.4=30.6度

となります。

太陽の動きで間違えやすいこととは?

太陽の動きを理解するためには、まず、下図のような透明半球をイメージしてください。プラネタリウムの丸い天井のようなものです。そして、東西と南北それぞれを結んだ線が交わるところに自分がいて、空を見上げていると仮定します。

 

では、この透明半球に、春分・秋分、夏至、冬至それぞれの太陽の動きを書き込んでみましょう。私は授業や保護者会でこの問題をよく出すのですが、下記のように答える生徒や保護者の方が多く見られます。

 

どこかがおかしいのですが、お気づきでしょうか?

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小川眞士

小川眞士

  • 専門家・プロ

小川理科研究所(東京都豊島区)主宰。都内の中学校教諭を経て、四谷大塚進学教室理科講師に。開成や桜蔭の特別コースを約25年間担当、コース生28人全員が開成中学に合格した実績を持つ。教務主任や副室長も務めた。2009年4月に小川理科研究所を開設。主な著書に、『中学受験 理科のグラフ完全制覇』(ダイヤモンド社)、『これだけ理科』(森上教育研究所スキル研究会)、『カンペキ小学理科』(技術評論社)がある。

水溜 兼一(Playce)

  • この記事の著者

雑誌・新聞の編集・ライターを経て、現在は、通信教育企業のキュレーションサイトや大学案内のライティングなどを担当。