中学受験ノウハウ 連載 親子のノリノリ試行錯誤で、子供は伸びる

ポジティブな声かけとネガティブな声かけ、どっちがよい?―― 親子のノリノリ試行錯誤で、子供は伸びる

専門家・プロ
2022年10月26日 菊池洋匡

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自ら伸びる力を育てる学習塾「伸学会」代表の菊池洋匡先生がおくる連載記事。「親子で楽しく試行錯誤することで、子供が伸びる」ということを、中学受験を目指す保護者さんにお伝えします。

こんにちは。中学受験専門塾 伸学会代表の菊池です。

寒い日も多くなってきましたね。ヒートテックを衣装ケースの奥から出してきました。

入試本番が着々と近づいてきています。本人よりも、親の方の気持ちが焦ってしまいますよね。

自分の気持ちが焦っているのに子どもの方はのんきだったりすると、ついつい「もっと勉強しなきゃ不合格になっちゃうよ」みたいな、危機感を煽る声かけをしたくなるのではないかと思います。

しかし、この声かけはモチベーションを上げる場合もありますが、下げる場合もあるので注意が必要。

もしあなたのお子さんが、下がるタイプだったら……。

模試の結果が返ってくるたびに、「このままじゃ不合格!」みたいな声をかけ続けるほどに、どんどんモチベーションが下がっていってしまいます。

それは困りますよね。

我が子は一体どっちのタイプなの?しっかり見きわめたいものです。

そこで今回は、ポジティブな声かけでやる気になるタイプと、ネガティブな声かけでやる気になるタイプについてお話ししようと思います。

目的志向型と問題回避型。お子さんの性格を見きわめよう

目標設定には、プラスなものを手に入れようとする「目的志向型」と、マイナスなものを回避しようとする「問題回避型」があります。

たとえば、宝くじやギャンブルは基本的には「目的志向型」で、成功して大きなお金を手に入れることを想像してワクワクするものです。

一方で、生命保険や火災保険は基本的に「問題回避型」となり、万が一に備えて入るものです。

では「受験に合格する」「クラスアップ」「成績アップ」といった目標はどうでしょうか?

これらの目標達成へ向けたお子さんの動機付けに、「目的志向」「問題回避」のどちらがより強く作用しているのかは、人によって異なります。

ですから、まずはお子さんの考え方を確認しましょう。

親子で簡単!タイプ診断

我が子はどちらの傾向が強いのか、診断する方法はいたって簡単。「あなたにとって受験とは何?」と聞いてみてください。

お子さんが言ったことを紙にメモしましょう。

あわせて自分も「あなたにとって子どもの受験とは何ですか?」と聞かれたら何と答えるかを考えて、紙に書き出してみるのです。

お子さんとあなたのパターンはどちら?

ではさっそく診断していきましょう。

「将来やりたい仕事につけるようにするため」

「私立中学校の良い環境で素晴らしい6年間を過ごすため」

といった答えは「目的志向型」です。

それに対して、

「将来食べるのに困らないようにするため」

「不合格になったら恥ずかしいから」

「近所の公立の中学校が荒れていて行かせたくないから」

といった答えは「問題回避型」ですね。

お子さんはどちらの回答がよりたくさん出てきましたか? そして、あなたのタイプとは一致していましたか?

2つのタイプで異なる「やる気アップ」に向けたアプローチ

この2つのタイプは、モチベーションが上がる状況が異なります。

目的志向型目標が達成できそうな状況でモチベーションが上がり、問題回避型目標達成が危機的な状況でモチベーションが上がります。

心理学者による実験

このことがわかるおもしろい実験を、モチベーション研究で有名なコロンビア大学の心理学者ハイディ・グラント・ハルバーソン博士が行いました。

実験内容は、参加者に難易度の高いパズル的なゲームをプレイさせるというもの。そして、無事にゴール達成できた参加者には、ご褒美を与えるというルールです。

ゲームはグループを2つに分け実施。そしてそれぞれのグループで、ご褒美がもらえる方法の伝え方に変化を付けました。

Aグループ

「成績に関わらず4ドルを与えるが、上位30%に入った場合には追加で1ドルを与える」 → 目的志向の意識付け

Bグループ

「成績に関わらず5ドルを与えるが、上位30%に入れなかった場合には1ドルを差し引く」 → 問題回避の意識付け

どちらのグループも、上位30%に入ると5ドルが、それ以下の場合には4ドルが得られることに変わりはありません。

しかし、「1ドル多く稼ぐ」という目標を目指すのは同じですが、その捉え方に違いが生まれました。

Aグループでは「頑張れば手に入る1ドルを稼ぐ」という目的志向型の意識を植え付けられ、Bグループには「もらえるべき1ドルを守る」という問題回避型の意識が植え付けられたのですね。

意識付けが異なるだけでこんなに変わる

作業が半分経過したところでいったん中断させ、その時点の成績が上位30%に入っているかどうかのフィードバックを個別に伝えました。

その直後、実験参加者たちに成功の見込みとモチベーションをたずねたところ、植え付けられた意識のタイプによって反応が異なりました。

上位30%に入っていたと伝えられた実験参加者たちは、Aグループでは成功の見込みとモチベーションがどちらも大きく上昇。一方、Bグループでは、成功の見込みは変化しておらず、モチベーションは低下するという結果に。

次に、上位30%圏外と聞いた参加者たちの様子も見てみましょう。

Aグループでは、成功の見込みとモチベーションがやや低下。一方、Bグループでは、成功の見込みが劇的に下がりましたが、モチベーションは急上昇していました。(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022103100914550

目的志向型と問題回避型の違い

この結果をわかりやすく整理してみましょう。

目的志向型と問題回避型で、やる気になる状況が違うというのがお分かりいただけたと思います。

自分のタイプと子どものタイプが同じであれば良いですが、違うときには「自分ならこの声かけでやる気になる」と思った声かけは逆効果になるので特に気をつけたいですね。

設置目標に向かって一直線!目的志向型にはポジティブな声かけを

最後にもう少し詳しく声かけの方法をお伝えしておこうと思います。

目的志向型は、まずはポジティブな声かけで夢をふくらませることから始めてください。

その目的・目標が達成できたらどんなに素晴らしいかイメージをしましょう。たとえば、志望する学校がどんなところが素敵か、入学したらどんなことをしたいか、親子で折に触れて話し合うようにですね。

理想がイメージできれば困難も乗り越えやすい

まずは理想の姿をしっかりイメージすること。その上で、「そのためには何が必要か」「乗り越えなければいけない困難は?」「具体的にはどのように勉強を進めていくか?」ということを考えるようにしましょう。

具体的な超えるべきハードルや対策について考えれば、目的を達成する可能性が高まり、モチベーションが上がっていきます。

慎重で無理はしたくない問題回避型。理想の姿を気付かせることでさらに飛躍

次に、問題回避型の場合ですが、模試の結果が悪いなど、目標達成が危機的状況であれば、その状況の確認をするとモチベーションが高まるので大丈夫だろうと思います。

困るのは順調な場合で、「このままいけば大丈夫」となるとモチベーションが低下しやすいです。

これはあまり望ましくないですよね。

問題解決後の自分の未来にワクワクさせる

ですので、そうした場合には目標を考えさせ、目的志向型に誘導していきましょう

問題回避的な思考が強い子は、「怒られたくない」「失敗したくない」といったことに意識を集中しすぎて、「自分がどうなりたい?」という目標が思い浮かばないことも多いです。

そういう場合には、まずは回避したい「問題」について考えることから始めます。

  1. 何が問題なのか?
  2. なぜそれが問題なのか?
  3. どういう状態が理想的なのか?

という順に考えると、手に入れたい理想の状態=目標に気付きやすくなります。

問題を解決した結果どうなりたいのかという目標をしっかり決めることで、それが達成できそうな状況にワクワクできるように誘導していきましょう。

以上、タイプ別の声かけでした。

お子さんの性格に合った声かけでサポートしよう

あらためてですが、同じ声かけでも、お子さんの性格や目標に対しての考え方によって、プラスに働くこともあればマイナスに働くこともあるというのは、とても怖い反面、おもしろいですよね。

あなたのお子さんに合うのはどんな声かけでしょうか?

今回もまた、試行錯誤してみてくださいね。

それでは。

 

※記事の内容は執筆時点のものです

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菊池洋匡
この記事の著者
菊池洋匡 専門家・プロ

中学受験専門塾 伸学会代表。開成中学・高校・慶應義塾大学法学部法律学科を卒業。算数オリンピック銀メダリスト。大学生時代にアルバイトで塾講師をはじめ、情熱を持って取り組むうちに、子供たちの成績を上げるだけでなく、勉強を楽しむ気持ちや困難を乗り越え成長していくマインドを育てる方法を確立。その後、15年の塾講師生活で生徒と保護者に「勉強には正しいやり方がある」ということを一貫して伝え続ける。著書に『小学生の勉強は習慣が9割 自分から机に向かえる子になる科学的に正しいメソッド』(SBクリエイティブ)『「やる気」を科学的に分析してわかった 小学生の子が勉強にハマる方法』(秦一生氏との共著、実務教育出版)『「記憶」を科学的に分析してわかった 小学生の子の成績に最短で直結する勉強法』(実務教育出版)。

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