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中学受験のための塾ってどんな塾? 塾の種類と特徴、低学年のうちに身に着けるべきこと|低学年のための中学受験レッスン#2

専門家・プロ
2022年11月28日 宮本毅

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将来的には中学受験を目指したい。でも、子どもがまだ小さいうちは、ガリガリ勉強させるのは早い気もする。

いっぽう、中学受験業界はどんどん過熱していて、小学2年生や小学1年生から進学塾に通わせるケースも増えていると聞く。いったいいつ頃から塾に通わせればいいの?

いろいろ悩みは尽きないと思います。今回は塾の「イロハ」について、基本的な説明をまじえつつ、いつごろからどんな塾に通わせ始めればよいのか、塾以外の習いごとならどんなものがおすすめなのか、どんな力を身に着けておくべきか、など、じっくりお話ししたいと思います。

「進学塾」ってどんなところ? 普通の塾とは何が違うの?

進学塾とは?

まずは「進学塾」というものについて、ご説明していきましょう。「進学塾」とは受験指導をおこなう塾のことです。

私立中学の入試問題というものは、学校の教科書では習わないような問題が出題されます。

たとえば算数で言うと「ニュートン算」とか「時計算」といった特殊算と呼ばれるものがそれにあたります。社会などでも「日本で格差社会が進んだ理由を説明しなさい」といった問題が出題されます。こうした「学校の教科書以上の内容」について指導するのが「進学塾」ということになります。

補習塾とは?

「進学塾」の対義語としては「補習塾」があります。こちらは学校の教科書レベルのことを指導していく塾ということになります。

中には小学生に対して、中学校の学習に遅れないように英語や数学を指導する塾もありますが、こちらも「補習塾」のくくりとなります。

集団塾と個別塾、大手塾と個人塾とは?

それ以外にも「集団塾」とか「個別塾」とか「大手塾」とか「個人塾」といった言葉がたくさん出てきて、もう何が何だかわからないですよね(笑)。これについては下図のようなマトリックスで考えるとわかりやすいでしょう。

サピックスや日能研、早稲田アカデミーといった塾は上のマトリックスのAに入ります。地元の小さい塾で、黒板などを使って複数の生徒を相手に指導している塾はBゾーンです。

パーテーションや個別ブースなどで仕切って指導している塾は「個別指導」にあたります。個別指導塾の中には「1対1」ではなく「先生1人に生徒2~3人」といったところもあります。個別指導塾にも大手塾から小規模塾まであって、CからDゾーンに分布しています。

個人で生徒集めをしている家庭教師の先生はCゾーンに入ります。もちろん教室規模や指導形態によっては、境界線をまたぐような塾も存在しますが、上記の分類でまず問題ありません。

中学受験するなら、どのタイミングで進学塾に入れればいいの?

さて、では中学受験をするためにはどのくらい早く進学塾に入れればいいのでしょうか。大手進学塾の中には小学校一年生からのコースがあったりします。地域にもよりますが、中学受験をめざす子どもの多くが塾に通い始めるのは、3年生や4年生です。

周りの子たちがどんどん塾に通い始めると、どうしても焦って通わせたくなってきますよね。通塾開始のタイミングに、正解ってあるのでしょうか。

この問いに対して私はこれまで多くの取材や本の中で、以下のように答えてきました。

「小2から始めても小5から始めても、受かる子は受かるし受からない子は受かりません」

これだけ聞くと、なんだかとても絶望的な言葉に聞こえますよね(笑)。

確かに身もふたもない言い方なのですが、要は「学習に対する姿勢をきちんと身に着けておかないと、どんなに早くから進学塾に入れても成績なんて上がらないですよ。だからまずは学習に対する姿勢を身につけさせてください。逆に言うとそれさえ身につけさせておけば、小5から進学塾に入れたって間に合っちゃいます!」ということなのです。大切なのは未就学時や低学年時における取り組み方なのです。

この連載は「低学年のための」連載ですので、小学1年生、2年生の保護者のみなさんに向けてお話しします。いま焦って進学塾に入れたり、中学受験対策問題集をやらせたりするのはやめておきましょう。それよりも先にやらせて欲しいことがあります。それは次のみっつです。

  1.  計算力を身につけておく
  2.  一般常識を身につけておく
  3.  試行錯誤する力を身につけておく

それではひとつひとつ見ていくことにしましょう。

計算力は合格力。思考力だけで中学受験は乗り越えられない

最近の小学校では昔のような「スパルタ教育」が影を潜め、基礎訓練を徹底的に行う機会がぐんと減りました。

読み書きそろばんは学習の一丁目一番地だと私などは思うのですが、「アクティブラーニング」やら「思考力を育てる」やら、カッコイイことばを並べたてるばかりで、地に足のついた教育がどこかに置き去りにされてしまっているようです。それで困るのは子ども達なのに。

中学受験の算数や理科では、高度な計算力が要求されることが多いです。計算力に乏しい生徒は、算数や理科でせっかく問題の解法を思いついても、途中で計算が行き詰まり、それ以上解くことができなくなってしまいます。

よどみなく思考を継続するには、計算力というものは不可欠なのです。事実、中学受験で志望校に合格していく生徒は、入試問題の最初の計算問題でミスをすることはほぼありません。計算力の高さは、合格力と、高い相関を持っているのです。

ですから、中学受験の学習を始める前にまず身につけておきたいのは「計算力」というわけなのです。

では、どうやって計算力を身につけたらいいのでしょう。

よく「公文式はどうですか」と訊かれるのですが、私は計算力重視の観点からそれも「アリ」かなと思っています。公文式なら細かいことを気にせずどんどんやり進められますし、計算中心ですので理解力が追い付かず停滞することも少ないです。また保護者の方でも無理なく教えやすい内容ですので、子どもがつまずいたときのフォローもしやすく、親子でストレスレスです。

ただし公文さんでは通常、小学校の範囲を終えると中学校で習う分野までどんどん進めていってしまいます。中学受験を第一に考えるなら、公文を続けるのは長くても小学校分野を終えるまでと考えておかれたほうがいいでしょう。

一般常識が豊富だと、中学受験の学習内容が面白いように頭に入る

小5の地理の学習の中で、子どもたちは「促成栽培」について学びます。

促成栽培の例としては、暖かい気候を利用して夏野菜であるナスやピーマンを春に栽培するものが挙げられますが、ナスやピーマンが夏野菜であることを知らないと、そこから覚えなければなりません。知っているのと知らないのとでは、子どもの学習スピードに大きな差が生じるのです。

ですから、小さいころから親子で散歩して、「春には菜の花が黄色い花を咲かせているね」とか、「税金ってこんなところに使われているんだね」といった話を、ガンガンしてほしいんです。そうすればお子さんは大きなアドバンテージを得られるのです。

かつて理科の時間に、「たんぱく質をアミノ酸に分解するときの消化酵素のひとつにペプシンというものがある。これは体温くらいの温度ではよく働くが、90度くらいのお湯につけてしまうと、そのあと温度を下げてももう働かなくなる。ほら、ゆで卵だって冷蔵庫に入れても生卵には戻らないだろ?」と説明したことがありました。

ほとんどの生徒はそこで「あぁ!なるほど」と納得したのですが、一人だけ全く理解できない子がいました。その子はなんと、ゆで卵を冷やしたら生卵に戻ると思っていたのです!

結局その生徒は知識として覚えるしかなく、覚えるまでにも時間がかかったうえ、そのあとすぐに忘れてしまいました。学習が定着するかどうかにも大きな影響を与えてしまいますので、一般常識は絶対にバカにしないでください。

中学受験を目指すために必要なのは、案外小さなころから身につけられるもの

「つるかめ算」「旅人算」「面積図」……中学受験の算数ではさまざまな特殊算が出てきます。それらを学びきるのに、2年近くはかかってしまうほどの多さです。

もし「〇〇算」の解法を覚えていくことが中学受験の学習だとしたら、結局暗記力の高い生徒が勝つことになりますよね。

でも実際にはそんなことにはなっていません。もちろん物覚えの良い子の方が学習を有利に運べるということはありますが、それよりも大切なことは「試行錯誤することをいとわない」ことだと私は考えています。

昔、私の教え子に最終的に、名門・麻布中学に進学した生徒がいました。彼はとにかく「お勉強」的なことは大嫌いで、宿題もほぼやってきませんでした。地道に努力することが本当に苦手だったんですね。

しかし、愛読書は「頭の体操」系のパズル本で、立体パズルもしょっちゅういじっていました。もちろんルービックキューブは6面全面揃えられました。「あーでもない、こーでもない」と試行錯誤することは、全く苦じゃなかったようです。

今や将棋界を牽引する若き天才、藤井聡太さんが幼少期に「キュボロ」という知育玩具を使っていた、というのが話題になって「キュボロ」が品薄になったことがありましたね。幼少時代にどんな遊びをしたかが、後々の思考力・試行錯誤力を育てるものなのです。ですから幼少期の遊びを軽視してはいけません。

キュボロの対象年齢は「5歳~」となっていますが、非常に高度な知育玩具でバリエーションも豊富なため、小学1~2年生であっても購入を検討していただいてもいいかもしれません。……とはいえ「キュボロ」は何万円以上もする高価な知育玩具ですし、これでないとダメということはありません。

頭を使わなくても楽しめてしまうおもちゃを安易に与えないことが大切なのです。子どもたちはどうしても「デジタルゲーム」を欲しがりますが、そうした「安易に楽しめる遊び道具」を与えてしまうと、子どもたちの脳は「簡単に手に入る快楽」を求めるようになってしまい、試行錯誤することをしなくなってしまいます。

そこで提案ですが、ピタゴラスイッチのような装置を家族で作ってみるのはいかがですか? 筑波大附属駒場高校の文化祭では毎年、科学部の出し物として「ピタゴラスイッチ装置」を展示しています。部活動でピタゴラスイッチ部がある高校もあるくらいです。

市販のおもちゃならレゴがおススメです。買うなら「レゴ缶」ですね。作り方を見ながらロケットや飛行機を作るのではなく、自分で試行錯誤しながら作るのが訓練になるのです。

まとめ

中学受験の準備をするのに、なにも受験勉強を早めに始める必要はありません。

大切なのは学習に向き合う姿勢です。問題集をたくさんやらせていても、地頭のいい子にあっという間に抜かれ、かえって自己肯定感を下げるだけです。

それよりは地頭を育てる訓練をしておく方が、後々何倍も役に立ちますよ。塾の宣伝文句やママ友のマウントに焦ることなく、子育てをじっくり頑張ってください!

※記事の内容は執筆時点のものです

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宮本毅
この記事の著者
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。YouTubeチャンネル「アテナチャンネル」を運営。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)