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学校の宿題って本当に意味はあるの? 中学受験にも役立つ宿題とは?|低学年のための中学受験レッスン#3

専門家・プロ
2022年12月12日 宮本毅

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今の小学生は、塾やら習いごとやらで、毎日大忙しですよね。

スイミング、英会話、ピアノやバイオリン、ダンス、プログラミング、絵画……。

私たち親世代の子ども時代にはなかったような多種多様な習いごともあって、ついつい目移りしてしまいます。

親と同じように、子どもの目にも、さまざまな習いごとは魅力的に映るようです。

親としてはそこまで頑張らせる気はなくとも、「やりたい」と子どもに言われるがままにあれもこれもと習いごとを増やしていったら、1週間のスケジュールは目いっぱい。

小学校低学年にして、学校の宿題をやる時間すらないという状況に陥ってしまっているケースも多々あります。

そんなとき「学校の宿題って本当に意味あるの?」なんてことを思ってしまう親御さんもいらっしゃるのではないでしょうか。

無駄な宿題ランキング1位⁉ 嫌われモノ「音読」は中学受験に必ず役立つ

「無駄だなーと思う宿題ランキング」堂々一位となりそうな宿題といえば「音読」。

これは学校の教科書を「ただ読むだけ」なので、「意味ない」「時間の無駄」と感じている保護者も多そうです。提出物も何もないので、実際にやっていないのに「やりました」と言って済ませているお子さんも少なくないことでしょう。

でも実は、音読は、中学受験でも非常に重要になる「読解力」をはぐくむために、絶対に外せない訓練のひとつなのです。

人間の脳は「音読」でなければ文字を理解できない!?

動物は文字を持ちません。人類も、かつては言葉をしゃべりませんでした。

やがて、音声によるコミュニケーションをおこなえるようになり、その後、文字を持つに至りました。

諸説あるようですが、音声による言語は今から約5万年前に生まれ、文字が発明されたのは今から約5千年前とされています。

けれど、動物の肉体の進化はそんなに急激には起こりません。たとえばキリンの首が現在のように長くなるのには、1千万年以上かかったとされます。

このことから、実は人間の脳は「まだ文字情報をそのまま脳にインプットすることができない」と考えられるのです。

人類は本来、文字を読むときに、一度それを音声に変換してから、脳にインプットしている。そう考えると、黙って読んでいてもよくわからない文章を、声に出して読んでみると、内容を理解できたという経験にも納得ができますよね。

ただし、人間は、訓練を重ねることで、声に出さずとも頭の中で音を再生し、その音を脳で直接認識できるようになります。そのため、大人になると、いちいち音読しなくても文章を理解できることが増えてくるわけです。これが、「黙読」です。

「黙読」のためには「音読」の訓練が必須

その点、子どもは生きてきた時間が少ないため、まだ文章を黙読するための訓練が足りていません。

子どもが文章を理解するためには、音読が必要なのです。音読の訓練を重ねることで、文字情報を理解する力、文章の意味を理解する力が少しずつ身についていきます。これが、「読解力」です

さて、中学受験では、語彙レベル的には中学2年生~高校生くらいが読むような文章も出題されます。

入試の最中に問題文を音読するわけにはいかないので、少しでも早く・多く「音読」の訓練を重ねて、「黙読」でも難解な文章を理解できるレベルに至る必要があります。でなければ、問題を解く以前に、問題文を理解することもできずに、中学受験が終わってしまうからです。

中学受験を目指すなら、学校の宿題のみならず、ご家庭でも文章をたくさん音読させてください。音読は国語力の一丁目一番地ですぞ!

中学受験のトレンドにも合致!? 自由研究の存在意義

続いて、不人気な宿題ランキング上位に挙げられるだろう、夏休みの「自由研究」について考えてみたいと思います。

自由研究って労力と時間ばかり取られて、出来上がったものはなんだかたいしたことないし、本当にやらせる意味あるの?と多くの保護者が疑問に感じているのではないでしょうか。いまや「自由研究ビジネス」も成立する世の中、書店で売られている「自由研究キット」などを使ってチャチャッとやらせちゃおうか。それとも、親が代わりにやっちゃおうか。そんな風に考えている方もいるかもしれませんね。

でもちょっと待って! 自由研究は中学受験にはもちろんのこと、将来社会に出てから、最も必要とされる能力をはぐくむことにもつながります。絶対に子どもに取り組ませてください!

教科書の範囲を超えて出題される中学受験

現代の中学受験の入試問題は、教科書の範囲内にとどまらず「全方位」から出題されます。

たとえば、2018年の成蹊中学の社会では、鳥取・島根などの県の財政にとって、地方交付税とはどういう存在なのかを説明させる問題が出ました。また、2020年の三田国際中学の理科では、一部のウミヘビが爬虫類にもかかわらず卵を産まず、メスの体内で卵を孵化させることを説明してから、そのような性質を持つ理由を説明させる問題が出ました。

こうした問題は、知識があるかではなく、ありとあらゆることに興味関心を持ち、考える力を持っているかを問うています。高学年になってからの受験勉強だけではなかなか対応しづらいので、低学年のうちから、少しずつ備えておくといいですよね。

そこで、自由研究です。自分でテーマを考えて、調べて、考えたことをまとめる。まさに思考力の訓練そのものなのです。

自由研究で鍛えられるプレゼン力は社会に出てからも役に立つ

さて、社会に出て自分の希望する仕事をしたいと思ったときに、絶対に必要なのが「プレゼン能力」です。

リサーチして、研究して、企画書を書いて、資料を作成する。そして資料をもとに、適切に内容を伝える。この能力がないと、自分のやりたいことを上司や取引先に認めてもらえませんよね。

よくよく考えてみると、これって「自由研究」そのものじゃないですか? どんなテーマにしたらいいか考え、それに関して調べ上げて、レポートとしてまとめる。社会人にとっても必要な力なのです。

プレゼン能力を鍛え上げていくことは、中学受験にとどまらず、将来の自己実現にもきっと役立つはずです。小学生にしてその訓練ができるわけですから、避けて通るのはもったいないことです。

自由研究のテーマ決めで目的を意識する訓練を

そうはいっても、自由研究って何をやったらいいのか迷いますよね。かといって、子どものやりたいように任せていたら、だいたい「工作」のようなテーマになってしまったりします。

「工作」ももちろん、「ものづくりニッポン」を支える重要な基礎訓練ではあります。しかし、残念ながら中学受験とはつながりが薄いので、中学受験にも役立てたいという前提であれば、避けたいところ。

そこで提案なのですが、自由研究のテーマを決める家族会議を開いてみてはいかがでしょう。

家族での外出先も自由研究テーマに合わせて設定すると、単なるお出かけが社会科見学になって、一石二鳥です。もちろん夏休みの宿題が出てから旅行の計画を立てるのでは間に合いませんから、そこまで堅苦しく考えず、行った先々で「これって自由研究に使えるかもね」といった感じでもいいと思います。自由研究のネタをいろいろとためておくくらいに考えておいてください。

また、会議で子どもにプレゼンをさせれば、何をやるべきか、それに対してどう動くべきかが明確になります。

目的を意識し、それに向けて行動する力は、実は、中学受験へ向けたモチベーションの根幹です長期的には、人生に目的意識を持たせるためにも役立ちますよ。

どうしても無駄に思える宿題にはどう向き合えばいいの?

 学校の先生も、ご自身が「無駄だ」と感じているのに、それを宿題にしているわけではないと思います。いずれの宿題も何らかの効果を考えた上で出されているのでしょう。

しかしながら、「子どもたちをどう導きたいか」という目的と、「目的達成には何が必要か」という手段が、ちょっとずれてしまっているケースは確かにあります。

「目的と手段がずれている」宿題の代表的な例としては、「漢字を20回ずつ書く」といったものが挙げられます。これは漢字を覚えさせるために書かせるわけですから、1回書けば覚える子にとっては、19回は無駄な作業ということになります。

そもそも論として「20回書けば誰でもその漢字が覚えられる」わけではありません。漢字を覚えさせるために「20回書かせる」というのは、「目的と手段」の間に若干ズレが生じてしまっているわけです。

こうしたズレに気づいてしまうと、私などはすぐ「提出の必要がないなら、やったことにしてしまってもいいのではないか」などとアドバイスしてしまいたくなるのが本音ですが、小学校生活を楽しく充実したものにするために、やすやすと宿題を投げ出させるわけにはいかないというのも、親御さんとしては立派な態度だと思います。そこで、無駄に思える宿題を中学受験にも役立つ経験にするために、ぜひチャレンジしてほしいことをお伝えします。

漢字を分解して書くのは理にかなっている

漢字を20回書くことが宿題ならば、漢字を分解して、宿題を効率化してしまいましょう。

たとえば、「解」という漢字ならば、まずはマス目の左側に「角」を20回書き、そのあとでマスの右上に「刀」を20回、そして、右下に「牛」を20回書かせるのです。

「それってズルじゃないの?」と思われる方もいらっしゃると思いますが、複雑な漢字を覚える際に漢字を分解するのは常套手段です。

「漢字を覚えること」が目的なのですから、そのためにこのような手法をとるのは何ら問題ないと思います。むしろ「こんな工夫もあるのか」と発想力が鍛えられて、暗記のための様々な工夫ができるようになるのではないでしょうか。

タイムアタックで中学受験でも役立つ力を

またタイムアタックをさせてみるのもよいでしょう。

短めに目標時間を定めて、時間内にどれだけ美しい字で書けるかを競わせると、子どもは燃えてくれることもあります。時間内にきっちり終わらせることを目指すよう、お子さんを誘導してください。

時間がないからといって、字が雑になってしまったり、ミスが出てしまったりしてはダメだということも教えてください。

言うまでもなく、時間内に、ミスなく課題を仕上げる訓練は、中学入試本番で役立ちます。なおかつ、無駄に思える宿題に費やす時間も最小限で済みます。いいことばかりです。

宿題に意味が感じられないからと言って、だらだらと時間をかけてしまうのが一番もったいないのです。忙しい現代の小学生だからこそ、時間を無駄にしない意識をしっかり身に着けてあげてほしいと思います。

まとめ

学校の宿題について、お話してきました。

親から見て無駄に思えることでも、子どもたちが将来伸びていくためには、必要不可欠なものがたくさんあります。

とりわけ、読解力や、連載第2回でも重要性をお話しした計算力のような基礎力を身につけるためには、地道な努力がどうしても避けて通れません。

いっぽうで、学校もさまざま、先生もさまざま、そして子どももさまざまですので、「学校の宿題に無駄なものなど存在しない」とも言いきれないというのが、私の本音です。とはいえ、やり方ひとつで有意義な宿題に早変わりすることもあるのです。

できることなら、親御さんが上手に誘導してあげてもらいたいと思います。

※記事の内容は執筆時点のものです

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宮本毅
この記事の著者
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。YouTubeチャンネル「アテナチャンネル」を運営。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)