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横波と縦波の違いを知って、地震の揺れの伝わり方を押さえよう|なるほどなっとく 中学受験理科

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2022年12月08日 水溜 兼一(Playce)

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学習範囲が広く、難しいイメージがある理科の中学入試問題。難関校に多くの子どもを合格させてきたカリスマ講師・小川眞士さんが、子どもの理科力を育むためのヒントを伝えます。

入試理科では、理科的思考力が問われる問題が出題されることが増えています。理科的思考力を養うためには、普段から身の回りの事象に興味を持ち、その原因を考察する姿勢が大事です。

今回は、身近な事象の中から「縦波と横波」「地震」について小川先生にお話を伺います。

振り子の運動を波で表すと?

前回の記事では、「振り子の運動」について解説しました。お伝えした通り、振り子の問題を解くためには、まず「振り子の等時性」を理解することが大事です。「振り子の等時性」とは、「振り子の長さ」が同じなら、おもりの重さや、振幅の大きさに関係なく、周期(振り子が1往復するのにかかる時間)は同じになることです。

さて、「振り子の運動」は波として表すことができます。下図のような砂が入った容器が付いている振り子があって、容器から砂が落ちているとします。振り子を振り、この振り子の下に紙を置いて動かします。

 

すると、「振り子の運動」が紙の上に「波」となって現れます。振り子の一往復を一周期と言います。波もAからBまでが一周期です。振り子の振幅の大小によって波の大きさは変わりますが、振幅が変わっても周期はおなじですから、AからBまでの幅は変わりません。

「波」にはどんなものがある?

ここからは「波」について解説します。上図で示したような波形を示すものは、身の回りにもいろいろあります。例えば、池に石を投げたときにできる波や、ギターの弦の振動、他にもスタジアムで見られる観客のウェーブもそうです。このように波の進行方向に対して垂直に伝わる波を「横波」といいます。

これに対して、波の進行方向に対して平行に伝わる波を「縦波」といいます。縦波の代表的な物は音の波です。太鼓を叩くと音が聞こえるのは、太鼓の振動が空気に伝わり、空気が薄くなったり、濃くなったりして人の鼓膜まで達して、鼓膜を振動させることで音と認識します。また、お子さんの中には空気砲で遊んだことがある子がいるかもしれませんが、空気砲も縦波です。

なお、振動を伝えるもの(媒質)の密度が高いほど、振動は早く伝わります。ですから、気体よりも液体、液体よりも固体の方が早く伝わります。たとえば水、海水、鉄、空気を比べてみると、1秒間に伝わる音の速さは下記のようになります。

地震と縦波・横波の関係は?

縦波と横波が同時に発生する身近な事象の一つが地震です。地震が起こると、地面が圧迫されて、まず縦波が伝わって初期微動が起こります。この縦波は「P波」と呼ばれます。続いて、地面が上下に揺れる主要動が起こります。この横波は「S波」と呼ばれます。

P波とS波は地震計で計測します。地震計には2種類あり、下記のAはP波を、BはS波を調べるものです。少しややこしいのですが、P波の縦波は、水平方向の揺れとして観測されます。いっぽう、S派の横波は、地面が上下に揺れているので、垂直方向の揺れとして観測されます。

記事の冒頭で紹介した振り子に似ていますね。しかし、地震計はどちらもおもりは動かず、ドラムが回転しながら地面と共に動くことで地震の揺れを記録します。一つの地震について、東西・南北・垂直の三方向の地震の波を記録することで地震を詳しく分析できます。

初期微動であるP波はS波より速く伝わります。緊急地震速報は、全国各地に設置された機器でP波を捉えて、その大きさを瞬時に分析。P波が大きければ、S波も大きいだろうという前提で発出されます。しかし、震源から近い場所では二つの波がほぼ同時に来ることがあります。その場合、緊急地震速報よりもS波が早く到達してしまうこともあります。

地震について、入試ではどんな問題が出る?

入試問題で地震が取り上げられることがあります。知識事項としては、前述したP波とS波の概要や、震度とマグニチュードの違いなどを覚えておきましょう。

震度は揺れの大きさで、10段階(0、1、2、3、4、5弱、5強、6弱、6強、7)あり、それぞれ発生する揺れなどの現象や被害の目安を示しています。

マグニチュードは地震のエネルギーの大きさを数字で表したものです。マグニチュードが1大きくなるとエネルギーは32倍、2大きくなるとエネルギーは約1000倍(1024倍)になります。ちなみに東日本大震災のマグニチュードは9.0で、日本の観測史上最大規模でした。

思考問題は、グラフや図表の読み取りがメインです。下のグラフは、P波とS波について、震源からの距離と到達時間の関係を表したもので、入試で取り上げられることがあります。グラフからP波・S波の速度を求めさせたり、ある地点での地震の発生時刻や震源までの距離を考えさせたりします。

地震に限らず災害時の対応について入試問題で問われることもあります。

2022年の広尾学園小石川中学校の理科の問題では、震災で、電気・ガス・水道・スマートフォンなどのライフラインが途絶えたときに、避難先での生活を快適なものにするために、身の周りのものを材料にして道具を作るという問題が出題されました。どのような目的で、何を用いて、どのような道具を作るかを答えさせるというものです。素材となるものの特性が活かせているか、文章やイラストでわかりやすく理にかなった説明がされているかという点が問われました。

このような問題に答えるには、普段から災害を自分ごととして捉えておく必要があります。災害が起きたときにどう行動したらよいか親子で話し合っておくことで地震や気象などへの理解が深まりますし、実生活でも役立つはずです。

※記事の内容は執筆時点のものです

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小川眞士
小川眞士 専門家・プロ

小川理科研究所(東京都豊島区)主宰。都内の中学校教諭を経て、四谷大塚進学教室理科講師に。開成や桜蔭の特別コースを約25年間担当、コース生28人全員が開成中学に合格した実績を持つ。教務主任や副室長も務めた。2009年4月に小川理科研究所を開設。主な著書に、『中学受験 理科のグラフ完全制覇』(ダイヤモンド社)、『これだけ理科』(森上教育研究所スキル研究会)、『カンペキ小学理科』(技術評論社)がある。

この記事の著者

雑誌・新聞の編集・ライターを経て、現在は、通信教育企業のキュレーションサイトや大学案内のライティングなどを担当。