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2023年入試直前! 理科分野の時事問題を考える【前編】|なるほどなっとく 中学受験理科

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2022年12月19日 水溜 兼一(Playce)

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学習範囲が広く、難しいイメージがある理科の中学入試問題。難関校に多くの子どもを合格させてきたカリスマ講師・小川眞士さんが、子どもの理科力を育むためのヒントを伝えます。

2023年入試が近づいてきました。ちょうどいまの時期は、今年の時事問題をおさらいしている受験生も多いでしょう。近年の入試理科で増えている時事問題。どのようなテーマが扱われやすいのかを小川先生に聞きました。

近年増えている時事問題のテーマは?

入試理科では、世の中で話題になっている事象や問題を扱った「時事問題」が出題されることがあります。近年は、この時事問題の割合が増えています。入試問題を作成する先生方には、「いままでにない新しい問題を作りたい」「普段学んでいることが実は身近な問題に関連していることを受験生に理解してほしい」「身近な問題に関心を持って理科的な視点で考えてほしい」といった思いがあると私は感じます。

入試で取り上げられる時事問題のテーマは時代とともに変わります。かつては、光化学スモッグやダイオキシンといった公害の問題がいろいろな学校で取り上げられました。少し前は、ヒアリやセアカゴケグモが扱われました。近年、特に目に付くのは環境に関する問題です。地球温暖化、二酸化炭素などの温室効果ガス、SDGs、水素自動車、再生可能エネルギーなどがテーマになっています。環境に関する問題は、今後さらに増えると私は予想します。

災害に関する問題を扱う学校も少なくありません。地震と火山については以前から出題されていましたが、近年は毎年のように豪雨災害が大きなニュースなっています。台風とともに線状降水帯に関する問題を出題する学校が出てきました。線状降水帯は、発達した積乱雲が帯状に連なって大雨をもたらす現象です。これまでは「線状降水帯」と名称を答えさせる問題が代表的でした。しかし今後は、線状降水帯が発生するメカニズムなど、もう少し踏み込んだ問題が増えてくるかもしれません。線状降水帯については、20226月から気象庁が約半日~約6時間前までに予報するようになったことも大きなトピックです。

ほかには、新型コロナウイルス感染症について問う学校もあります。渋谷教育学園幕張中や早稲田中の2022年入試では、一つの大問の内容すべてが新型コロナウイルス感染症についての出題となりました。細かな知識を覚えておいて解くのではなく、リード文と問題文の内容をきちんと理解できるかが問われました。

近年の時事問題では宇宙開発も注目のテーマです。以前の入試では、日本人宇宙飛行士の名前を答えさせるなど単純な知識問題だったところが、小惑星探査機「はやぶさ」の成果など、日本の研究について少し突っ込んだ問題を出題する学校もあります。世界的に宇宙開発が盛んになっていますから、今後も注目すべきテーマです。

今年、大きな話題になった時事問題は?

時事問題について、どの学校がどんな問題を出題するかは、塾講師でも予想することは難しいです。しかし、世の中で大きな話題になった理科的なイベントは概要をおさらいしておきましょう。たとえば、11月8日の皆既月食は天候に恵まれて、多くの人がその様子を見ることができました。

写真提供:北八ヶ岳天文台荻原茂之さん

月食とは、太陽、地球、月がほぼ一直線に並んだときに、満月が欠けて見える現象です。欠けて見える理由は、太陽の光が地球に当たったときにできる地球の影に満月が入るからです。このときの影には、「半影」と「本影」があります。太陽光が遮られた「本影」に満月が入ると欠けて見えます。

 

皆既月食は、満月が地球の本影に入ると欠け始め、完全に本影に入って隠されると赤銅(しゃくどう)色に見えます。太陽光が地球の大気を通る際に波長の短い青い光は散乱してしまい、散乱しにくい赤色が残り、これが月に当たるから赤銅色に見えるのです。(月食については、こちらの記事も参照ください)

これと似たような現象が朝焼けと夕焼けです。光にはいろいろな色が含まれています。太陽光をプリズムに通すと、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の虹のような帯が見えて、さまざまな色が含まれていることがわかります。日中、空が青く見えるのは、太陽光が大気中の細かい粒子に当たったときに、青色が、ほかの色よりも強く散乱するからです。朝夕は昼間よりも太陽光が大気を通過する距離が伸びます。大気を通過する距離が伸びるほど光は散乱するので、青色は散乱してしまいますが、赤色や橙色は散乱しにくく、そのまま私たちのところに届きます。

光がモノに当たると、散乱のほかにも吸収、透過、反射といった現象が起こります。虹もその一つです。受験生の中には、光について基礎的な事柄をきちんと理解できていない子が意外に多くいます。皆既月食についておさらいするときは、光についても理解を深めておきたいところです。

もう1点、11月8日は、皆既月食と同時に、日本のほとんどの場所で月が天王星を隠す「天王星食」も起こりました。

天王星食直前。月の左下の小さい点が天王星。写真提供:北八ヶ岳天文台荻原茂之さん

天王星食出現直後。月の右下の小さい点が天王星。写真提供:北八ヶ岳天文台荻原茂之さん

皆既月食と惑星食が同時に起こるのは1580年以来、442年ぶりのことです。しかもこの日の夜空には木星や土星も見ることができました。皆既月食が起こったときの、太陽、地球、月、そして天王星・木星・土星・金星などの惑星がどのような位置関係にあったかも理解しておきたいところです。

他に、入試理科や社会では、〇〇周年という節目の出来事が取り上げられることがあります。2023年は、関東大震災から100年になります。また、現在の小学6年生の中には、東日本大震災が起きた2011年に生まれた子が含まれています。関東大震災や東日本大震災について詳しく覚える必要はありませんが、地震についてマグニチュードと震度の違いなど基本的な事柄は復習しておきましょう。

次回は、理科の時事問題についてどのように学習すればよいかをお伝えします。

※記事の内容は執筆時点のものです

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小川眞士
小川眞士 専門家・プロ

小川理科研究所(東京都豊島区)主宰。都内の中学校教諭を経て、四谷大塚進学教室理科講師に。開成や桜蔭の特別コースを約25年間担当、コース生28人全員が開成中学に合格した実績を持つ。教務主任や副室長も務めた。2009年4月に小川理科研究所を開設。主な著書に、『中学受験 理科のグラフ完全制覇』(ダイヤモンド社)、『これだけ理科』(森上教育研究所スキル研究会)、『カンペキ小学理科』(技術評論社)がある。

この記事の著者

雑誌・新聞の編集・ライターを経て、現在は、通信教育企業のキュレーションサイトや大学案内のライティングなどを担当。