
新4年生へ 中学受験の勉強が始まる前に身につけておきたい学力|今一度立ち止まって中学受験を考える
進学塾の中学受験コースがはじまるのは、小学3年生の2月から。6年生の入試本番まで、3年間かけて受験の準備を進めていきます。
では、スタート地点にあたる3年生の2月までにどんな力を身につけておくと、好スタートが切れるのでしょうか。教科ごとに子どもが身につけておきたい力と、親が持っておくべき心構えをお伝えします。
Contents
【算数】計算力を高め、図形を書く訓練をする
一般的に中学受験は、国語・算数・理科・社会の4教科の総合点で合否が決まります。なかでも重要科目といわれるのが算数です。なぜなら、中学受験算数は小学校の授業で習う内容よりもはるかに難しく、特別な勉強が必要になるため、入試の点差が出やすいからです。しかし、だからといって、極端な先取りをする必要はありません。
受験算数というと「植木算」や「つるかめ算」といった特殊算のイメージが強いかもしれませんが、これらの勉強は塾の授業が始まってからのほうが理解しやすいもの。入塾前の段階ではそれほど重視する必要はありません。
それよりも大事なのは、計算力を高めておくことです。たとえば、分数の計算が苦手な子は多いのですが、算数の問題を解いている途中で分母の違う分数の計算で手こずってしまうと「ああ、もうだめだ」と思考がストップして、そこでつまずいてしまいます。特殊算でも、図形問題でも、最終的に答えを出すのに必要なのは計算です。四則演算や分数計算、□の入った還元算など、計算を得意にしておくことが、算数を得意にすることにつながっていきます。
加えて、子どもの理解度を確認しておきたいのは「単位量当たりの大きさ」です。この感覚は、算数の得意な子と苦手な子とでは、大きな差があります。「単位量当たりの大きさ」をイメージ的にとらえられている子は算数が得意になっていきますが、逆のケースだとここでつまずいて結局受験まで苦手をひきずってしまった、ということにもなりかねません。
「単位量当たりの大きさ」というのは、たとえば「長さ3mの鉄の棒があり、重さは15kgです。長さ1mの重さは何kgでしょう?」とか「12Lで10kgのジュースがあります。このジュース1kg分は何Lになりますか?」といったものです。
「あれ?どっちをどっちで割るんだっけ?」とわからなくなってしまう子は非常に多いです。そこに分数が絡んでくるともう訳がわからなくなってしまいます。こうした感覚は、日常生活の中で具体物を使って体験的に身につけさせておくのがよいでしょう。この感覚を身につけていることそうでない子では、塾での学習のスタートダッシュで大きな差がついてしまいます。しっかりと身につけさせてください。
イメージがしづらいものといえば、図形もあげられます。図形問題を解くときは、図を書いて考えるのが鉄則ですが、その図がうまく書けないという子が多いのです。たとえば平行四辺形を書くときには、平行な直線を引けなければなりませんし、どこから書きはじめるとその形になるかという見通す力も必要になります。形がゆがんでしまう場合は、スムーズに書く練習を積み重ねましょう。
図は書けば書くほどうまくなってゆくものです。書き慣れさせるためにも、たとえば筆算を書くときの直線に定規は使わずフリーハンドで書かせるのがよいと思います。「うちの子、線をまっすぐ書けないから」と何でもかんでも定規を使わせていると、フリーは一向に上達しません。そうするといつまでたっても図を書くのに時間がかかり、入試のスピードには着いていけなくなってしまいます。「フリーハンド」は徹底させてください!
【国語】子どもの国語力は家庭で育つ。親子の会話で語彙を増やそう
先ほど、中学受験において算数が重要科目とお伝えしましたが、近年の入試では一概にそうとも言い切れなくなっています。というのも、近年はどの科目においても問題文が長文化しているうえに、グラフや資料の読み取りを求める問題が増えていて、文章を読み取る力が非常に重視されているからです。
多くの子どもは自分が知らない言葉や漢字が出てくると、その時点で「難しい」と感じてしまいます。そうならないためには、語彙力を高めておく必要があります。語彙力は家庭の会話で養われていくものです。小学生の子どもだからといって簡単な言葉を使うのではなく、あえて難しい言葉や四字熟語などを混ぜて話しかけてみましょう。お子さんが「それってどういう意味?」と聞いてきたら一緒に調べ、言葉の意味のストックをしておくといいですね。
国語力を養うには読書も有効です。そういうと、あれもこれもと読ませようとする親御さんがいますが、大事なのは数ではありません。なかなか本に興味を示さないお子さんには、図鑑や攻略本など子どもが興味を持っている分野の書物でもかまいませんので、まずは文字に慣れさせましょう。お気に入りの1冊を何度も読むというので大丈夫です。
子どもの国語力が伸びるか否かは、親力にかかっているといっても過言ではありません。お子さんに本を読んでほしいと願うのならば、まずは親御さん自身が本を楽しむことも重要です。
【理科・社会】自然に触れ、さまざまな体験をし、好奇心の種をまく
中学受験において、理科・社会は暗記科目と思われがちです。たしかにこれらの科目は覚えなければならない知識がたくさんあります。それをイヤイヤ覚えるか、興味のおもむくまま自然と身につけていくかで、学習効果が分かれる科目といってもいいでしょう。
理科は身のまわりの現象を学ぶ教科です。理科好きを育てる第一歩として、おすすめなのが料理。
たとえば、パンづくりやお菓子づくりにベーキングパウダーを使うと、どうしてふっくらと膨らむのでしょうか。ベーキングパウダーを舐めてみるとしょっぱ苦いのですが、これは塩のしょっぱさとアルカリ性の苦さなのですね。その正体は炭酸水素ナトリウムで、生地に加えて加熱することで二酸化炭素や水蒸気を発生し、それによって生地が膨らむしくみになっているのです。
これは、中学受験の化学分野で頻出する「気体の性質」の内容そのものなのです。日常的にこうした体験に触れてきた子は、理科に強くなる傾向があります。
同じように、幼い頃から植物や動物に触れてきた子、ものづくりが好きな子、川遊びや夜空の星を見た経験がある子は、理科が好きになりやすいでしょう。ひとくちに「理科」といっても、生物・化学・物理・地学と4分野あり、何に興味を示すかはわかりません。ですが、一つでも好きなこと、得意なことが見つかると、理科全体に対するハードルがグッと下がるものです。
社会もどれだけ興味・関心が持てるかが重要になります。地理好きにしたいなら、地図に親しませましょう。家族旅行に連れていくだけでは「ただ行く」だけで終わってしまいますが、事前に地図を見て場所を確認し、「この地方ではりんごが名産だから、りんごのお菓子を食べてみようね」など下調べをして旅行に行っておくと、塾で習ったときに「ああ!そこ行った!」と記憶に残りやすくなります。
歴史好きにするなら、歴史漫画がおすすめです。漫画のいいところはストーリーで歴史の流れを確認できるところです。ただ、4年生以降になってから「受験に役立つよ」と渡すと、勉強のように感じてしまい拒否反応を見せる子もいるので注意。もっと前の段階で渡してあげると、子どもは楽しみながら歴史の知識を身につけていくことができます。
このように、受験勉強がはじまる前の段階で、さまざまなものに触れ、いろいろな体験をさせ、好奇心の種をまいておきましょう。そうすると、実際の授業が始まったときに、「あっ、これ知っている!」「そうか、あれってこういうことだったんだな」と自分の体験と知識が結びつき、面白いと感じるようになります。
学校選びは視野を広げ、たくさんの学校を見て感じる
最後に、これから“受験生の親”になるお父さん、お母さんにお伝えしたいことがあります。
中学受験は小学校生活の半分を費やす、家族のビッグプロジェクトです。ですから、はじめる前に必ず夫婦で子育ての方針を確認し合い、お子さんが納得したうえで進めるようにしてください。
どんな子でも順調なときもあれば、うまくいかないときもあるのが中学受験です。うまくいかないときが続くと親も子も不安な気持ちになりますが、そんなときこそ夫婦で決めた子育て方針を振り返りましょう。
わが子の幸せのためにはじめた中学受験で、家族がギクシャクしてしまうのはいちばん避けたいことです。偏差値の高さばかりにこだわりすぎて、ムリな受験を強いてしまうと、お子さんが勉強嫌いになってしまうことも。
学校選びは幅広い視点を持つように心がけてください。学年が上がっていくごとに塾での勉強がハードになり、拘束時間も長くなりますので、時間に余裕がある今のうちから少しずつ学校の説明会や文化祭などの公開行事に足を運んでおくといいでしょう。
※記事の内容は執筆時点のものです
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