
比と割合・図形・場合の数 算数が得意な子になるには?|今一度立ち止まって中学受験を考える
中学受験において、算数は入試の点差が最も出やすい重要科目といわれています。
ところが、その算数が苦手で足を引っ張ってしまっているという子は少なくありません。
どうすれば算数が得意になるのでしょうか?
今回は多くの子どもが苦手とする「比と割合」「図形」「場合の数」の3つの単元の対策を中心にお伝えします。
Contents
算数のベースは計算力。毎日コツコツ解く訓練を怠らない
中学受験の算数というと、「植木算」や「つるかめ算」「旅人算」といった特殊算のイメージを持つ人が多いようです。確かにこれらの問題は入試の定番となっていますが、どのような問題であっても算数のベースとなるのは計算力です。算数にとって計算力は、PCでいうCPUのようなもの。これがないと、何も作業ができないというくらい重要な力であることをまずは頭に入れておきましょう。
では、どのように計算力を身につけていけば良いのか。それは、毎日コツコツと解く練習を続けていくしかありません。たとえば四則演算や分数の計算を苦手とする子は多いのですが、そういう子は問題を見ただけで「あ、これは難しそう」と尻込みしてしまいがちです。いっぽう、毎日計算をしてきた子なら、ちょっと難しい形の計算問題が出ても、「まずは解いてみよう」と手を動かし始めます。すでにここで勝負がついてしまっているのです。算数を得意にしたければ、まずは計算力を鍛えることです。
「数量」「図形」「数論」 各分野の苦手を得意に変える方法を知ろう
受験算数にはいろいろな単元がありますが、大きく分けると「数量」「図形」「数論」の3つのカテゴリーに分類されます。
「数量」は単位量、比と割合、速さ、特殊算もここに含まれます。「図形」は平面図形、立体図形の諸問題、「数論」は整数、場合の数、規則性などが該当します。
今回はこの3つのカテゴリーの中から、子ども達が苦手とする単元の対策をお伝えしてきたいと思います。
【数量】感覚が重要な比と割合。日常の様々なシーンで経験を積み重ねる
まず、「数量」分野の苦手単元No.1といえば、「比と割合」です。これが苦手だと、中学受験では非常に不利になります。そのくらい重要かつ、頻出単元です。
比や割合といったものは、言葉で説明をしてもなかなか理解できない子もいます。「○割」や「○:△」といわれても、それがどういう状態を指しているかをそもそもイメージできないのです。比や割合といった抽象的な概念を理解するには、経験による感覚をつかむことです。その感覚がつかめるようになると苦手意識は消えます。
基本的に、中学受験に先取り学習は必要ありませんが、小学2年生でかけ算、3年生でわり算を学んだら、比や割合の感覚を身に付ける訓練をご家庭でやっていくことをおすすめします。すでに学年が進んでいたら? それでも、お子さんが「比と割合」を苦手とするなら、問題をたくさん解いて慣れればよいだけです。「比と割合」なんて、その気があれば一ヶ月でモノにできますよ!
例えばお子さんと一緒にスーパーに買い物に行くと、タマネギが4個240円で売られていたとします。そういうときに、お母さんが「4個240円か……、ということは1個いくらだ?」とひとり言のようにつぶやいてみるのです。または、隣に3個200円のタマネギがあったら、「どっちの方が安いかな?」と子どもに聞いてみる。そうすることで比較する感覚を身に付けていくのです。さらに、「何割引か」は割合の感覚をつかむ練習にもなります。
「比」の感覚は料理でも身に付きます。希釈タイプのめんつゆには、料理ごとにつゆ1:水2」など表示がされていますので、それを実際にやらせてみると、1:2というのはこのくらいの量なんだな、ということが分かるようになります。
こうした感覚が身に付くと、理科の食塩水やバネの問題なども理解できるようになります。例えば「30gの重りをつるしたとき、バネが12cm伸びました。50gの重りをつるすと、バネは何cm伸びますか?」といった問題も考え方は同じ。問題の内容は違っていても、考え方としてはすべて「何倍ですか?」と聞いているのです。これが理解できるようになると、比も割合もさほど難しく感じなくなります。なお、先ほどの問題の答えは、12cm÷30g×50g=20 cmです。
【図形】頭の中だけで考えようとしてもダメ。手を動かして考える習慣を
図形問題を解くときは、図を書いて考えるのが鉄則です。ところが、その図がうまく書けなかったり、書くのを面倒くさがってやらなかったりする子は少なくありません。そして、頭の中だけで考えようとして時間だけが過ぎてしまうのです。
車の運転でたとえるとわかりやすいと思いますが、車を走らせるにはまずエンジンをかけなければ動きません。それと同じで、算数の図形問題を解くときは、まず手を動かし、考える筋道を探すところからスタートします。「考える」とは、知識や経験に基づいて、筋道を立てて頭を働かせることです。うーんうーん唸っているのは、考えているようで、実はただ何も考えずに固まっているだけなのです。
図を書くときは、「まっすぐに線を引く」「平行な直線を引く」「ゆがまないように円を描く」などの技術が必要になります。これらをフリーハンドではじめからきれいに書ける子はほとんどいません。やはり、これも訓練が必要。図は書けば書くほどうまくなっていくものです。たくさん練習をして、きれいに書けるようにしておきましょう。
図形問題に限らず、算数の問題を解くときは、「手を動かす」のが一番。線分図、ダイヤグラム、グループ分けなど、視覚で情報を整理する方法を知っておくと、解決の糸口が探しやすくなります。
【数論】「何通りあるのだろう?」、日常の好奇心が算数を得意にする
「場合の数」も子ども達にとってはとっつきにくく、苦手とする子が多い単元です。けれど、これも日常で経験を積むことで理解を深められます。
私が子どもの頃、母親はよくケーキを買ってきてくれました。3人家族に4種類のケーキを買ってきて、その中の2つを食べていいから、何通りの選び方があるか考えてごらんと言われ、あれこれ考えてみたものです。
また、小学校へ行くとき、いつも同じ道を歩くのに飽きてしまい、何通りの行き方があるか考えてみたことがありました。歩いてみると12通りの行き方があることが分かり、登校ルートを変えてみることにしました。12通りもあるので、毎日が新鮮で楽しかったですよ。こんなふうに日常の中で何通りあるかを意識すると、場合の数が得意になります。
例えば「5人の生徒から(1)委員長と副委員長を選ぶ (2)掃除係を2人選ぶ」という問題があったとします。
(1)から考えてみましょう。
まず、委員長を決めるのには何通りありますか? 5人だから5通りですよね。では、副委員長は?委員長が決まった後に、残りの4人から決めるので、4通りです。すると、5×4=20通りが答えとなります。
では、(2)掃除当番を2人決める場合は?
掃除係のAさん・Bさんは同じ役割をこなすので、5人の中から2人を選ぶだけで良いのです。すると、答えは10通りになりますよね。
この2つの問題の区別がつかなくて、「場合の数」が苦手だと感じてしまう子どもが大勢います。日常的に「これは何通りの分け方があるかな」「何通りの方法があるかな」と考えてきたかどうかの差が、ここで出てしまうのです。
まとめ
ここまで読むと「うちの子はもう手遅れかも……」と打ちのめされてしまう方も出てきそうですが、そんなことはありません。「割合」にせよ「比」にせよ「場合の数」にせよ、基礎がしっかり理解できていることが大切です。だから苦手対策は小学校低学年だろうが高学年だろうが、やることはほぼ変わりません。「日々の生活の中で算数を意識する」「算数をお勉強ととらえない」ただそれだけです。ハードルは案外低いもの、頑張って算数を得意科目にしていきましょう!
※記事の内容は執筆時点のものです
とじる
お気に入り機能は
有料会員の方のみご利用できます
会員登録のうえログインすると
お気に入り保存できるようになります。
お気に入りのコンテンツは、
マイページから確認できます