中学受験ノウハウ 連載 世界で働く親が考える子供の教育

カリスマ・女医マザーの登場!「東のシリコンバレー」での教育事情 | 世界で働く親が考える子供の教育#2

2023年3月10日 栗尾モカ

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「海外の教育事情ってどうなってるんだろう……」そんな疑問を解消するため、海外で働くパパママたちに取材してみました。「世界で働く親が考える子供の教育」は、5回の短期連載でお届けします。

鈴木瑠美子さん(仮名・40代)は、3人の娘さんを育てる医師です。

長女の志帆さんは某都内私立校に通学中。次女の佐知さんは、帰国子女受験でミッション系名門女子校、三女の英子さんは小学校3年生で、SAPIXに入塾したばかり。医師同士の結婚で、夫婦ともに大の数学好き。3姉妹全員が音楽に親しみ、得意科目は数学。

学ぶことを楽しんでいる鈴木さんご家族には、中学受験を考えている家族にとって参考になる様々なアイデアがありました。

住民の4人に1人が博士!知る人ぞ知る「東のシリコンバレー」に移住

夫の英司さんは、大学で研究をするため、妻の瑠美子さん、3姉妹の家族5人と共にノースカロライナ州へ引越ししました。

「ここに住んでいる人たちは、森の中にある閑静な住宅で熱心に勉強しています。その雰囲気はNYやLAとは違いますね」と瑠美子さん。このエリアは「東のシリコンバレー」と呼ばれ、なんと住人の4人に1人が博士号を持っているという「博士の街」(!)アメリカの中でも大変治安の良いエリアで、医師仲間の間でもよく知られた場所だそうです。

ノースカロライナに住んでいた頃、医師の英司さんが希望していた病院が募集していた研究医に見事合格。家族はノースカロライナとテキサスの2都市に合計2年1ヶ月滞在することになりました。

落ち着いた雰囲気の公立中校舎。娘さんのお気に入りでした

 渡米前に日本で進めたのは先取り学習

「アメリカに行ったからには、現地の英語の生活にどっぷり浸かろうと思っていたので、日本語の授業をする補習校(※1)には通わせませんでした。日本の教科書で習う内容は渡米前にあらかじめ把握していたので、日本で1学年以上先の内容まで先取りしておきました。

※1:日本人のために日本語で授業を行うための学校。鈴木さんファミリーの住んでいたエリアでは、土曜日の朝9時から4時まで国算理社の4科目を学んでいた。教科書は日本大使館に申請すればもらうことが出来る。

瑠美子さんは、仕事のため娘さんの習い事に送迎する時間がなかったので、長女の志帆さんは小学校の3年生まで習い事ができる民間学童に通わせ、週に一回ずつ英語と美術を習わせていました。定着度を見るためにも夏休み中は学童に英検の問題集を持たせ、帰宅後に瑠美子さんが教えることで、7歳で5級、8歳で4級に合格。その後はもともと3歳から習っていたヴァイオリンのコンクール活動が忙しく、英検には着手できなかったとのこと。

次女の佐知さんは小学1年生の夏に家族でオーストラリア旅行に行く予定に合わせて、年長の冬から自宅で英検5級の問題集を始めたそうです。夏前の小学1年生6月に5級を取得してから旅行に出発することができました。

アメリカで子供の英語を飛躍的に伸ばした工夫とは

海外で学生生活を過ごした帰国子女の中には、英語をマスターする子供がいる一方で、あまり英語を話すことが出来ないまま帰国する子供も少なくありません。鈴木さんファミリーの3姉妹は前者で、約2年のアメリカ生活で飛躍的に英語力をつけて帰国しました。具体的にどのような生活を送っていたのでしょうか?

もともと、2年の滞在を予定していたので、英語をマスターするためにも日本人同士で遊ばせることは意図的に避け、家族単位でなるべく外国人とつきあうようにしました。3人の娘と私、夫の家族5人全員でアメリカ人に混じって空手を習いました。学校には日本人が少なかったこともあり、放課後も意図的に英語を話さなくてはならない環境を作りましたし、私自身もアメリカ人のホームパーティに招かれたときには子供たちを連れていくようにしていたこともあり、英語力も自然と伸びていきました」と瑠美子さん。

「学校が楽しい!」アメリカの学校の先生たちに導かれた日々

「アメリカの学校って、授業がすごく楽しいよ!」瑠美子さんは、帰宅した娘さんたちから嬉しい報告を受ける日々だったそうです。

日本の学校は、知識を得たり暗記をするなど受け身の授業が多いですが、アメリカではそれぞれの生徒が自分の意見を発表するタイプの授業です。小学校の授業では、架空の会社を作り商品開発をしたこともありました」

3姉妹がそれぞれ英語好きになってからは、お互いに好きな本を勧め合うようになったそう。ちなみに鈴木さん姉妹のお気に入りの本はこちら。

・2-4th grader… Diary of Wimpy Kid, Dog man, Captain Underpants, Smile
・5th grader…Friendship, Esperanza Rising
・6th grader…Harry Potter, Wonder

3姉妹はそれぞれ読書が大好き。インターネットやゲームに熱中することなく、色々な英語の本を読むようになりました。瑠美子さんもDisneyなどその他のアメリカの子供向け番組を英語で観せたり、部屋にはCNNニュースを流しておくなどして家庭でも英語に触れる環境作りをしていたそうです。

学校生活を楽しみ、様々な本を読み進めていくうちに渡米前に英検4級を持っていた長女の志帆さんは、12歳で準1級、次女の佐知さんは準2級、帰国直後には2級に合格したそうです。三女の英子さんは英語ゼロの状態で5歳3ヶ月で渡米し、帰国後すぐの6月の試験(7歳9ヶ月)で英検初挑戦で見事3級に合格しました。

NASAの年パスもゲット!アメリカの休暇の過ごし方

NASAジョンソン宇宙センターにある巨大ロケット「サターンVロケット」を見学

ところで、海外の学校は休暇が長いのが特徴です。どのように過ごしていたのでしょうか?

「アメリカの学校に1月から入学し、6月から2ヶ月間休みに入りました。この学校では、6月と7月にノンネイティブの生徒を対象に40日間、8時から16時までみっちり授業が組まれていました。40日のカリキュラムの中には、フォニックスもあればライティングの授業もあり、とても充実した内容でした。学校の先生方の手厚い指導のおかげで、娘は全教科の宿題をひとりで出来るまでに成長しました」

勉強の他には、テキサス州ヒューストンに住んでいた頃、娘さんたちはNASAが大好きで年パスを購入して頻繁に訪れていたそう。敷地がとても広く、管制塔の中や宇宙飛行士の訓練施設も見学できるとのこと!また、宇宙飛行士の話を直接聞くことができたり、見学者用のアトラクションもあるので1日中ゆっくり遊ぶことができるそうです。

瑠美子さんの教育ポリシーでもある「子供を子供扱いしないこと」は、休暇の過ごし方にも現れています。

「幼児の頃から美術館に一緒に出かけてモネの作品を見せたり、フォーマルなレストランでナイフとフォークの使い方を教えました。我が家はファミレスのようなお店にわざわざ外食として行ったことがありません。子供を子供扱いせず、大人と同じように本物を見せ、良質なものに触れさせるようにしてきました

医師のママが伝える音楽教育の大切さ

瑠美子さんにとって、お子さんの教育に欠かせないのは音楽。鈴木さんの3姉妹は、バイオリンとピアノのコンクールで数々の賞を受賞するほどの腕前。長女の志帆さんは、バイオリンで全米3位の賞を獲得したそうです。

「私自身、子供の頃からピアノを学び、今も演奏を続けています。また、医学部で学んでハッキリとわかったのは、ピアノと脳のつながりはとても深いということです。子供は生まれてから6歳までが神経回路の発達に大事な時期です。指先と脳は繋がっていますので幼少の頃からピアノを習うのはとても良いことはよく知られたことですが、ほかにも様々な能力を鍛えることが出来るのです。まず、両手の指を使うので、左右の脳のバランスがよくなり、反射神経が鍛えられます。さらに暗譜をするときには記憶力、練習を積み重ねるときには持続力と忍耐力が必要です。また、練習を休むと直接自分に皺寄せがくるので、言い訳ができません。『人のせいにしない』ということも学ぶことができるのがピアノです

帰国後、アメリカ生活で磨いた英語を活かしながら日本の学校生活を満喫中

その後、鈴木さんファミリーは充実した2年間のアメリカ生活を終え、日本に帰国しました。長女の志帆さんは都内の人気私立校に編入。この学校は、英語の取り出しクラス(※2)があるため、アメリカで学んでいたような英語の授業の内容でネイティブレベルの生徒が大半。数学のレベルは断然日本の方が高め。生徒が主体となって行う学校行事は、アメリカより日本の方が多いとのこと。また、キャリアデザインに注力しており、様々な分野のプロフェッショナルを外部講師として招いているとのこと。将来の仕事の選択に役立つ話を聞く機会がたくさんあるそうです。

次女の佐知さんは、都内のミッション系の女子校に進学。その学校を選んだ理由は、やはり英語の取り出しクラスがあることと、女子の医学部進学率がかなり高いこと、社会に貢献するという学校の経営方針が佐藤家の方針と一致していたことから選ばれました。

三女の英子さんは、区立小学校へ。日本は治安がよいので、小学生でも送迎がいらないこと、給食は栄養バランスもよく美味しいことが良い点。勉学面では、理解できるまで各個人にサポートがある、別クラスで授業をしてくれるなど手厚いそうです。ちなみに、アメリカでは、公立小学校は「州統一テスト」に合格できない人は留年してしまうので気が抜けません。

休みの日に瑠美子さんと3姉妹で一緒に出かけるのは、紀伊國屋書店の洋書コーナー。「ひとり2冊ずつ選んでいいわよ」と瑠美子さんが言うと、それぞれ好きな本を選び、姉妹で交換しながら読書を楽しんでいるそうです。

※2:英語取り出しクラスとは、英語の授業の際に帰国生のみを対象にしたクラスのこと

――瑠美子さんご自身、お子さんと一緒に様々なチャレンジを楽しんでいるのが伝わってきます。一般的には、中学受験を乗り越えるまで親はハラハラすることの連続ですが、「親の心配は子供に伝染する」という言葉も耳にします。ここは気持ちを強く持って、瑠美子さんのように子供と一緒になって挑戦を楽しむ姿勢で臨むことができるとよいのかもしれません。

(取材・文:栗尾モカ)

マイナビ子育ての連載「世界で働く親が考える子供の教育」の記事を、中学受験ナビ編集部が再編集のうえで掲載しています。元の記事はコチラ

※記事の内容は執筆時点のものです

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