中学受験ノウハウ 連載 塾のトリセツ

中学受験をするか決めていなくても低学年から塾に行くべき? │ 中学受験塾のトリセツ#13

2023年5月23日 天海ハルカ

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中学受験のための塾通いといえば、4年生(3年生の2月)からスタートすることが多いですが、最近では1~3年生の低学年から動き出す人も増えています。

中学受験をするかは未定でも、「低学年から塾に通わせなければいけないのでは」と悩んでしまいますよね。

結論から言うと、3年生までの低学年では進学塾へ行かせても行かせなくても、どちらでも大丈夫です。

中学受験の可能性があるとしても、4年生から進学塾に通えば十分間に合います。

今回は、低学年(1~3年生)から塾へ通うメリットとデメリットをふまえた上で、塾へ通うべきかについてお話しします。

学習塾と進学塾の違い

小学生が通う塾は、大きく、学習塾と進学塾に分けられます。

学習塾は学校の勉強のフォロー進学塾は中学受験を目指した勉強をするところだと思ってください。

低学年で学校の授業についていけず、学校の宿題にも苦労するようなら学習塾を検討してみると良いでしょう。

家より外で、親より先生に指導されたほうが子どももやる気が出る、ということはよくあります。

逆に、学校の授業が問題なく受けられて、中学受験に興味がある子には、学習塾よりも進学塾が良いでしょう。

塾を検討するときは、学習塾と進学塾のどちらが必要かをまず明確にすると、考えやすくなります。

中学受験が未定でも進学塾に通っていいの?

中学受験を決めていなくても、 進学塾に通うことに問題はありません。

たとえ進学塾であっても、3年生までは学習習慣をつけることと勉強の仕方を身につけることがメインです。

私が講師として勤めていた塾でも、3年生までは「勉強を楽しく思ってもらうように」というのが塾の方針でした。

本格的に中学受験を意識した授業が始まるのは4年生からですが、4年生になっても中学受験をするかはっきり決めていない家庭は多いもの。

実際に私が講師をしていた進学塾では、毎年5年生の夏から6年生の夏前にかけて中学受験をやめるなどの理由で退塾する生徒が何人もいました。

つまり、みなさんが本当に中学受験をするかどうか決めているのは、毎年5年生の夏から6年生の夏までの間ということが多いのです。

子どもにとって中学受験は未知の世界なので、塾に通って勉強をしてみないとわからないことも多いですからね。

本格的に中学受験をするかどうか、志望校はどうするか考えるのは、5年生になってからで大丈夫です。

低学年の入塾は中学受験への意識ではなく、「学校とは別に授業を受けることが嫌ではないか」が重要だと思います。

低学年から進学塾に通うメリット

中学受験を決めていない低学年から進学塾に通うメリットは、知識の増加より心構えの部分にあります。

学習習慣が身につく

学校によって違いますが、学校の宿題はさほど多くないため、ある程度勉強ができる子なら物足りなく感じてしまいます。

進学塾へ通うと、学校の宿題に加えて塾の家庭学習もこなすというサイクルができます。

単に市販の問題集を買い与えるよりも、塾という提出先があるほうが、家庭学習のモチベーションも上がりやすいでしょう。

結果的に中学受験をせず進学塾を辞めたとしても、身についた学習習慣が無駄になることはありません。

小学生のうちに身についた学習習慣は、中学生以降もおおいに役立ちます。

勉強で競う世界を知る

公立の小学校では、テストの点数で順位をつけたりクラスが昇降したりという経験は滅多にできません。

一方で多くの進学塾では、テストの結果を大々的に発表したりクラスが昇降したりします。

それが合わない子もいるでしょうが、勉強で競うことを楽しく感じて、勉強へのやる気が上がる子もいます。

順位を上げたい、下のクラスへいきたくない、というのは子どもにとって大きなモチベーションになります。

勉強で競う世界を知ることで視野が広がって、新しいモチベーションが生まれたらうれしいですよね。

中学受験という世界を知る

受験熱の高いエリア以外では、中学受験という言葉を知らないまま小学校を卒業する子も多いでしょう。

低学年で進学塾に入ると、中学受験というものを説明してくれるわけではなくとも、雰囲気は伝わります。

塾の掲示物や配布されるプリント、クラスメイトの話などで自然と中学受験というシステムを知っていきます。

親から中学受験を提案されるより、自分から情報を集めたほうが中学受験への興味がわくかもしれません。

中学受験をするかどうかは未定でも、興味を持ってくれたらうれしいと考えているなら、通わせるメリットは大きいと思います。

低学年から進学塾に通うデメリット

中学受験を決めていない低学年で進学塾に通うことにはデメリットもあります。

時間や費用がかかるというのはもちろんですが、勉強に対するイメージが大きく変わってしまう可能性がある点に注意です。

勉強が大変だというイメージを持ってしまう

塾へ行っていない子どもにとっての勉強は、多くの場合、学校で習うものがすべてです。

進学塾の勉強は、学校より難しく進度も速いです。

国語の読解文で知らない漢字や言葉が出てくるなど、知らないことやわからないことに出会うことも増えます。

また、学校ではいつもテストで100点だった子が塾では100点を取れなくなり、自信をなくしてしまうこともめずらしくありません。

中学受験も未定という低学年では、「こんなに勉強するの?」と勉強にネガティブなイメージを持ってしまうことも。

学校で余裕のある勉強を楽しんでいるようであれば、塾へ通うことで勉強へのモチベーションが下がってしまう可能性もあります。

勉強を甘く見てしまう

勉強だけでいえば、進学塾では学校より多くのことが学べます。

学校では使わない公式や解き方を知り、たくさんの問題に触れることで、学校の授業を簡単だと感じてしまうこともあります。

塾講師として「学校で塾の話をしたら怒られた」という生徒の話を聞いたことも少なくありません。

話を聞いてみると、先生の説明に割り込んだり授業で指示されていない公式を使ったりということが原因でした。

学校の問題が簡単に解けるのは良いことですが、だからといって学校の授業に集中できなくなったり、学校の宿題をないがしろにしてしまったりしては困りますよね。

塾で勉強しているからと、学校での勉強を甘く見るようになってしまうことは、多くの子が経験するようです。

学校の勉強に悪い影響が出ないよう、勉強以外でもフォローが必要ですね。

低学年の進学塾は必須ではない

小学校に入ると中学受験を意識してしまう気持ちはわかりますし、実際に私もそうでした。

自分やまわりに中学受験経験者がいると、出遅れないよう早めに動いておかなければと焦ってしまうんですよね。

でも、低学年から進学塾に通うことは、中学受験において必須ではありません。

低学年で必須なのは、学校の授業と宿題をきっちりこなすことです。

可能であれば、問題集を使うなどして勉強習慣だけは身につけさせておくとさらに安心できますね。

4年生になるタイミングで、勉強に対する子どもの様子と中学受験を改めて考え、気になったら進学塾に通い始めてみると良いでしょう。

もちろん、最難関校を目指す可能性があるのであれば「しないよりはしたほうがいい」ので、進学塾に通ったほうが安心ではあります。

中学受験が未定でも、低学年から進学塾に通うことにメリットは確かにあります。

しかし、実際に中学受験を意識した勉強が始まるのは4年生から。

低学年から進学塾に通うことにはデメリットもあるので、「通っておかないと心配」という程度の気持ちなら、無理に通わせなくても大丈夫ですよ!

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※記事の内容は執筆時点のものです

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