中学受験ノウハウ 連載 公立中高一貫校合格への道

模試の結果表は分かりづらい? 結果表でチェックすべきポイントを紹介|公立中高一貫校合格への道#4

2023年6月14日 ケイティ

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都立中学校など公立の中高一貫校には、いわゆる「入学試験」は存在しません。代わりに行われる「適性検査」を受(「受」ではなく)することで、6年間の一貫教育に「適性」があるかどうかを見られます。本連載では、公立中高一貫校を目指すうえで踏まえておくべきことは何なのか、私立受験とは具体的に何がどうちがうのか、公立中高一貫校合格アドバイザーのケイティさんにうかがいます。

こんにちは!公立中高一貫校合格アドバイザーの、ケイティです。公立中高一貫校合格を目指す、保護者のための「ケイティサロン」を主宰しています。

前回、6月に模試を受けてみましょう!という話をしましたが、そろそろ結果が返ってきたのではないでしょうか。

模擬試験の結果表は項目も多く分かりづらいので、初めて結果表を見た保護者の方は途方に暮れることもあると思います。

実際、「模試の結果が返ってきたんですが、一体どこをどう見れば…?」というお問い合わせ、この時期にすごく多いんです。

ということで、今回は模試の結果表で、「ココは絶対に見るべき!」「ココはあまり気にしなくてOK!」というポイントをお伝えしようと思います。

あまり気にしなくてOKなポイント【その1】偏差値

もし、私立中学を受験するのであれば、偏差値は最も重要な基準であり、受験校を絞り込む際の判断材料にもなります。

しかし、適性検査においては、偏差値というものさしはあまり役に立ちません。

四科目型の模試と比べると、適性検査型の模試のアップダウンの幅は大きく、±20~30の乱高下は当たり前に起こります。

全く気にしなくてよいとは言いませんが、適性検査型模試における偏差値は想像以上に上下するので、気にし過ぎると保護者の方のメンタルがもちません。

また、偏差値は母集団(模擬試験でいうと受けた人数)が大きければ大きいほど信頼できる数値が出ますが、適性検査型の模試は四科型と比べ規模が小さく、また、学校別で細かく設定された模試であれば受験者が数十名、ということもあります。

そうすると、偏差値は極端に低く出たり、高く出たりすることもあるのです。

悲観しすぎる必要ありませんし、同時に、安心も全くできません。

さらには、偏差値と学校別の難易度も、あまり関係はありません。

ときどき、「過去問演習をしたいので、志望している〇〇中学と同じくらいの偏差値の学校が知りたい」というお問い合わせを頂くことがあります。

こういうとき本当に困ってしまうのですが、模試結果表の偏差値と同じく、偏差値一覧表もあまり当てにならないということを知っておいて頂きたいです。

大手塾や模試センターが公表している偏差値一覧表で、たとえば第一志望の公立中高一貫校が偏差値65と出ていたとします。

だからといって、偏差値65前後の他の公立中高一貫校と難易度が近いかというと、全くそんなことはありません。

そもそも適性検査数が違ったり、作文の形式が違ったりすることもありますし、適性検査は名前の通り「適性」を見るものなので、その学校が求める素質を見極めるため個性豊かな問題を出すものです。

つまり、偏差値という一つの基準で測るのは無理な話なのです。

個性を数値化するのが難しいのと同じように、適性検査の偏差値は「高ければ良い、低ければ悪い」「高い学校だから難しい、低い学校だから可能性がある」とは一概に言えないのです。

得点がつく以上は偏差値も機械的についてくるものではあるのですが、偏差値以上に見るべきポイントが他にあるので、偏差値は気にし過ぎない、一喜一憂しないと心に留めておいてくださいね。

あまり気にしなくてOKなポイント【その2】報告書込みの順位

もうひとつの「気にしなくてOK」なポイントは、報告書の予測スコアも含めた総合順位です。

全ての模試にあるわけではないのですが、模試を受ける際に事前アンケート、もしくは通知表のコピーを提出することで、報告書(調査書)の予測を出して、それを総合順位に組み込んで結果を出す模試があります。

これは、適性検査のスコアと、調査書(の予測)のスコアも含めて判定することで、本番に近い立ち位置を知ることができるという開催側のセールスポイントになってはいますが、見る方は要注意です。

学校ごとの特殊な換算方式に則って、適性検査の得点と合わせた総合点を出してくれるのは大変ありがたいのですが、これによって見た目の順位が良くなりすぎたり、悪くなりすぎたりするケースが多いのです。

具体的な数字で例を挙げると、都立武蔵を第一志望とする子が数年前の6月に受けた模試で、適性検査のスコアは1800人400番台でしたが、その時期の通知表がオール3だったため報告書順位は1位となり、結果、総合順位は200番台、B判定と出ました。

このように、報告書次第で順位が数百番も上がることもあり、思わぬ油断にも繋がります。報告書の比重が高い学校であれば、さらに順位が動くことも考えられます。

また、通知表をベースに報告書の予測数値を出しますが、通知表は模試を受ける受検生の中でそれほど大きな差は無いことも、忘れてはいけません。

適性検査のスコアは数点~ほぼ100点まで幅広くばらつきが出ますが、通知表は1~3までという限られた範囲ですし、中学受検生で1が多いというのはまず考えにくいですから、オール3の同率1位が大勢いて、2が1つ~半分程度という範囲の中で団子状態になっています。

1つでも2があると順位が大きく動く報告書の順位に焦る必要は無いですし、通知表と本番の報告書は完全に一致するものでもないですから、あくまでもペーパ―テストで取った点数だけの順位を見るようにしてください。

発表後の得点開示で、「報告書で救われたのかも…?!」とヒヤッとするようなギリギリの合格点だった子も例年いますが、それはあくまでも結果論です。

受検生活真っ只中の今の段階では、予測報告書込みの順位は気にせず、次に説明するようなポイントを重視するようにしてくださいね!

模試結果表のココに注目【その1】志望校内順位

ここからは、ぜひ注目して頂きたい項目についてお伝えしていきます。

まずは、志望校内順位についてです。

模試によっては、この項目がない場合もあるのですが、それであれば、通っているところとは別の塾の外部生模試を受けるなどして、志望校内順位が出る模試を一つは受けるようにしておいてください。

たとえば、「共通問題」を使う学校が同じ都道府県内に5校あるとします。そして、その5校を受ける全受検生の中の順位しか出ない場合、「同じ学校を受ける子達の中でどのくらいの位置にいるのか」は分かりません。

本番で使用する問題は同じでも、学校によって合格ラインに20点近く差が出ることもよくあるのです。

なるべく正確な立ち位置を測るためにも志望校内の順位は大切です。

志望している子たちの中での立ち位置という限定的な順位だからこそ、直視するのは勇気がいるのですが、そうやって現状把握をすることが模試を受ける大きな目的です。

(ただし、第一志望「ではない」子もその順位の中にいる可能性があるので、後述する順位の捉え方を確認してください)

また、総合順位ではなく、男女別に定員が決まっている学校を受ける場合は、「志望校内」かつ、「男女別」で順位が出る模試を受けるのが望ましいです。

公立中高一貫校受検に限らず、中学受験では、総合的に女の子の方が平均値は高いものの、ずば抜けた高得点を取るのは男子、という傾向があります。

最近は男女別定員という仕組みは撤廃されつつありますが、男女別に定員があり、かつ、それぞれの募集人員が20~40人と非常に少ない学校を受ける場合は、男女混合の総合順位だけでは立ち位置が正しく測れないこともあるので、本番に即した母集団(女子なら同一志望校内の女子)の中の順位を見ておく必要があります。

ここからは、順位の捉え方について紹介します。

ある年の9月に東京の都立専門塾で行われた模試で、2500人中1000番弱を取った女の子がいました。

募集人員がたったの160名なのに、1000位とは、これはもう箸にも棒にもかからないのでは…とママさんは絶句したのですが、大事なのは「全体の何割のところにいるのか」を計算することです。

その模試では、志望校登録時に第1~第3志望校まで設定できるので、複数の学校を登録するのが一般的です。

たとえば、第1志望はA中学だけれども、第3志望まで登録できるから、B中学、C中学も設定しておこう…といった具合です。

志望校が1つしか設定できない模試や、「学校別合判」のように母集団が限定される場合を除き、志望校内順位は、「(第何志望かは関係なく、)その学校を登録した子たちの中の順位」が出るということです。

そのため、本番ではその学校を受ける子たちはおよそ700名なのに、模試では2000人超の中で順位が付く…ということもありえるのです。

こればっかりは模試の仕組みとして仕方がないことなんですが、「募集人員をはるかに超える数百位を取ったから無理かも…」と考えるのではなく、上位何%にいないといけないのか、そして、今はどのあたりにいるのか、といった母集団のサイズに合わせた計算をしましょう。

さきほどの例なら、2500人中1000番くらいにいるということは、2分の1~3分の1のあたりの集団にいるということです。

そしてその学校が、700名ほど受けて募集人員が160名の場合、4分の1~5分の1の集団がボーダー付近になると言えますよね。

このように、今の立ち位置、それから、ボーダー付近の位置を「〇分の1」で計算します。(分子が中途半端な数だとややこしくなるので、分子を1に揃えるのがポイントです)

現在、2分の1あたりのところにいるとして、ゆくゆくは4分の1以上に食い込まないといけないのであれば、次の模試の目標は3分の1、さらに次の目標は4分の1、直前期はさらに強化して5分の1以上を目指そう!…という風に、「〇分の1」の〇を徐々に上げながら目標設定をしていきます。

模試は合否を占うものではなく目標設定のためのツールですから、ピラミッドを上へ上へと登っていくようなイメージで、定期的に受けてその都度、目標をアップデートするようにしてください。

模試結果表のココに注目【その2】小問ごとの得点率

ほとんどの模試結果表で、見開きの右側には小問ごとの得点率が出ているはずです。

項目の名称は得点率だったり、正答率だったり、平均点だったりしますが、要は「この問題を正解した人は何%いたか(この問題の平均点は何点だったか)」を表しています。

全体の順位や検査ごとの偏差値といった大きな視点ではなく、大問1の問1の(1)は何割の子が正解していて、わが子はその問題で何点取れたのか?という小さな分析ですが、これが非常に大切なのです。

納得のいく判定が取れたからといって、この正答率をちゃんと見ていないと、みんなが取れている問題で取りこぼしていた問題を見過ごす危険があります。

合格者ならまず取っているはずの問題、たとえば3割以上の子が正解している問題で不正解になっているものはないか?

平均点が配点の50%以上になっている問題で、部分点の1、2点しか貰えなかった問題はないか?

このようなチェックをして見つかった課題の解決策を考えることで、得点も安定していきます。

また、「この夏、どんな戦略で進めるべきか?」を決めるときにも有効です。

「読解問題、埋めてはいるものの平均点より低い…」

「社会分野の得点率は全ての問題で平均以上」

「算数分野で正答率が6割を超えている問題が、ゼロ点だったのはなぜ?」

このように、小問ごとに見るからこそ気付く得意・不得意や、不安要素があります。

この分析をもとに、夏の取り組みの優先順位を決めたり、テコ入れすべき対策(計算訓練や語彙強化など)を取り入れたりすることができます。

まだ少し先の話ですが、直前期には正答率の低い難問への対応力を確認し、伸ばすこともできます。たとえば「適性検査Ⅲの最後の問題は×だったけれど、正答率10%のこの問題が取れれば、ライバルに差をつけられる」⇒「では、どんな演習をしよう?」と、最後の一押しを考えることもできるのです。

分析、そして日々の学習計画の軌道修正も、模試を受けるからこそできることです。

お子さん自身がこういった細々した分析をするのは難しいので、保護者の方の大切な役目と言えます。

まとめ

さて今回は、「模試の結果表の見方」というテーマでお伝えしてきました。

一見すると情報が多く見づらさを感じる方も多いと思いますが、見るべきところ、気にしなくていいところが分かれば、今後の対策を決める強力なツールになりますし、暗中模索になりがちな適性検査対策の頼もしいコンパスとなります。

受ける度に頭の痛くなるような課題が見つかるものですが、一つひとつ分析し、不安を潰しながら「〇分の1」のピラミッドを登っていった先に合格があるので、今回返ってきた模試結果表をもう一度広げて、分析してみてくださいね!

※記事の内容は執筆時点のものです

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