連載 【小説】ボリュゾっていうな!

『ボリュゾっていうな!~ギャルママが挑む″知識ゼロ“からの中学受験ノベル~』第4回

専門家・プロ
2023年7月11日 杉浦由美子

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進級を控えた冬、小3ママたちの話題はもっぱら中学受験の塾選びのことばかり。シングルマザーの茜(アカネ)は「うちには関係ない」と思っていたけれど、ひとり息子の照(ヒカル)が「中学受験をするんだ」と言い出して?! ギャルママ31歳が挑戦する “知識ゼロ” からの中学受験ノベル。どのぐらいお金はかかるの? 仕事が忙しいんだけど平気? ミリしら=1ミリも知らない状態で、いろんな塾の説明会に参加してみたけれど、エリート塾はやっぱり素敵で……。勉強が超苦手なギャルママの視点を通して知る中学受験の実像。

前回までのあらすじ

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超難関中高一貫校「渋幕」に行きたいと言い出した照(ヒカル)のために、中学受験の塾について調べ始めた茜(アカネ)。教育熱心なママ友・眞由美にいろいろと教えてもらったり、塾の説明会に足を運んでみたりして、塾にもいろいろ違いがあるとわかってくる。駅南にある最大手塾、能開研は雰囲気がいいけれど、のんびりしすぎているという指摘も。ベテランの塾長が卒いる個人塾・海浜ゼミナールには、問題児も受け入れる懐の広さがありそう。駅の北口にはエリート塾・エックスがあり、敷居が高い気けれど、眞由美に勧められて説明会に行くことになり……。

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『ボリュゾっていうな!』第4回

 能開研の説明会に茜が出席している間、照は入塾テストを受け、2クラスあるうちの上のクラスだと言われた。それならエックスならどのクラスなのだろう。胸の奥からふんわりと高揚する気持ちがわき上がってくる。社会勉強だと思って説明会へ行くのもありだろう。

 月曜日の午後に少し抜けさせてほしいと相談するためバックヤードに行くと、店長だけでなくオーナーも来ていた。いつもプリーツプリーツのワンピースを着ている初老の女性だ。公文の偉いおばあさん先生も講演のときに同じものを着ていた。一枚で様になるのでこの世代の戦闘服なのだろう。

 

 ホテル一階のイタリアンバールについていく。

 パスタとサラダのセットを頼むと、オーナーは口を開いた。

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杉浦由美子

杉浦由美子

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ノンフィクションライター。
教育やジェンダーなどをテーマに取材を続けるベテラン記者。
現在は『マネーポスト』『ダイヤモンド教育ラボ』などで教育をテーマに連載をしている。『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)、『女子校力』(PHP新書)など単著多数。