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改めて「音読」のススメと、聞き方・声のかけ方のコツ|低学年のための中学受験レッスン#18

専門家・プロ
2023年7月17日 宮本毅

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突然ですが、アナタのお子さんは国語は得意ですか?

もし、国語の成績が伸びない……とお悩みでしたら、最初に少し厳しいお話をさせていただきたいと思います。

中学受験のみならず、高校受験や大学受験においても、受験国語を制したければ「活字をたくさん読ませよ」です。

とはいえ、普段本を読まない子どもに「読書をしなさい!」と言ったところで、なかなかうまくいきませんよね。そこで本記事では、学校や塾から宿題として出される「音読」を上手に使って、国語力アップを目指す方法をお伝えしていきます。

国語の力の根っこにあるのは「語彙力」

皆さんが英語を勉強したときのことを思い出してみてください。最初は英単語から入り、英熟語を山のように覚えましたよね。

国語の学習法も、それとほぼ同じです。国語力は読解力や記述力で構成されますが、それらの力の根っこにあるのは「語彙力」です。

語彙力とは言葉をどれだけ知っているかで決まりますので、活字を読めば読むほど身につけることができます。活字に触れる機会が多ければ多いほど、その後の受験勉強において国語で大きなアドバンテージを得ることができます。

「読書」が推奨されるのは、本を読むという行為が国語の力を支えることがよく知られているからです。先人たちの知恵ですね。

音読が大切なワケ

「音読」が学校などで宿題に出されるのは、まさにこの部分、活字に触れる機会を補完するものだからです。

音読の宿題が、活字に触れる機会を増やしてくれる

最近の子ども達は活字に触れる時間が本当に減りました

昔はインターネットのような検索システムがありませんでしたので、捕まえてきた昆虫の名前を知るためには図鑑をひっくり返して写真と文字を突き合わせるしかありませんでした。

手塚治虫など、昔の漫画には難しい言葉が数多く使われていたため、辞書を片手に読み進めないとストーリーの本質を理解することが難しかったです。また、そもそもセリフやト書きが非常に長文で、たとえマンガであってもかなりの活字量でした。

現代は昔に比べはるかに簡単に情報を入手することができるようにはなりましたが、逆に活字に触れる機会が激減したといえます。それを補うために各小学校や各塾で「音読」を宿題として出すようになったのです。

物語文以外のジャンルにも慣れるための第一歩

「音読」は別の側面でも「補完」の役割を果たしています。皆さんは読書というとどんなことを思い浮かべますか。あるいはお子さんに読書をさせるとき、どんな書物を与えるでしょうか。

ほとんどの方が「小説本」を思い浮かべると思います。もちろん小説を読むことも読書ですが、受験国語において採用される「本文」は小説ばかりではありません。論説文や説明文、随筆文に詩歌も採用されますよね。にもかかわらず小説しか読書していなければ、論説文その他の文章には慣れていないことになります。

受験のためにはジャンルを問わずまんべんなく「活字に触れる」ことが大切なのですが、小中学生にとって論説文や説明文・随筆文に触れる機会は滅多にありません。そこで学校の教科書や塾のテキストを「音読」することで、馴染みの薄いスタイルで書かれた文章にも親しむことができます。

こういった理由から、お子さんが本や新聞をよく読む子であれば、「音読」の宿題はサボってしまっても構いません。「活字に触れる機会」は充分足りていると思われます。

ただし、国語の実力がそれに伴っていない場合には注意が必要です。すなわち本や新聞を「ナナメ読み」して済ませてしまっている可能性が高いので、見かけ上はたくさん読んでいるように見えて実は足りていないわけです。このような場合もまた「音読」は絶対にさせましょう。

国語の成績が芳しくない生徒に「音読」は必須です!

効果的な音読の方法

次に「音読」のさせ方ですが、横にみっちりついてやる必要はないと私は考えています。

もちろん保護者の方も同じテキストを持って、子どもの読む様子を細かくチェックするのが理想ではあります。けれど、保護者の皆さんもそこまでお暇ではないでしょうし、アナウンサーの養成を目指すわけではないため、もう少しざっくりでかまいません。

たとえば夕飯の料理の時間を必ず音読タイムにし、家事をしながら聞くだけで充分だと思います。その時に「アナウンサー風に」とか「イケボ声優風に」とか、読み方をリクエストしてやらせてみると、子どもも楽しみながらできるのではないでしょうか。

毎日10分で構いませんので、ぜひ「音読タイム」を設けてください。

ただ字面だけを追ってしまって、内容を理解しているかどうか判然としない場合には、ひと言「今の話をまとめると?」と声をかけていただくのがよいでしょう。

あらすじを聞くことは、国語力を伸ばす上で非常に重要で、読解力のみならず記述力にも通ずる力です。また将来、社会に出てから自分の企画をプレゼンするときでも、話し下手な人は関係のない内容をだらだら話してしまい、「話がつまらない」「要点が分かりづらい」などと言われ、結局商談がうまくまとまらなかったりします。

長い文章を要約したり、要旨を短い文章で端的に表したりする能力は、受験のみならずお子さんの将来性をも決める重要な能力です。お子さんの将来のためにも、小さいうちからしっかり鍛えていきましょう。

まとめ

「音読」と聞くと保護者の皆さん的には、面倒くさいからとついつい避けて通ってしまいがちですが、ありとあらゆる教育機関で「音読」を推奨するのにはきちんとした理由あってのこと。

そのエビデンスも、様々な認知科学や教育心理学の学術論文で示されています。そして多くの教育者の経験則においても、普段から音読をしている生徒としていない生徒とでは国語の力に大きな差があることがわかっています。

面倒だからと避けて通れば、お子さんの将来に多大なる影響を与えてしまいますので、日々の生活の中に上手に組み込むことを強くおススメします。

※記事の内容は執筆時点のものです

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