中学受験ノウハウ 連載 親子のノリノリ試行錯誤で、子供は伸びる

6年生2学期に向けた3つの心得 ―― 親子のノリノリ試行錯誤で、子供は伸びる

専門家・プロ
2023年8月09日 菊池洋匡

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自ら伸びる力を育てる学習塾「伸学会」代表の菊池洋匡先生がおくる連載記事。「親子で楽しく試行錯誤することで、子供が伸びる」ということを、中学受験を目指す保護者さんにお伝えします。

こんにちは。中学受験専門塾 伸学会代表の菊池です。

毎日暑い日が続きますね。外を歩くだけで体力が削られます。

こんな中、毎日塾と家を往復して、長時間勉強している小学生はすごいですね。

塾に通っているだけでえらい!

そんな気持ちで応援していただけると良いのではないでしょうか。

さて、まだ夏期講習真っ最中のこのタイミングですが、一足早く6年生に向けて、受験に合格するための2学期の準備についてお話ししておこうと思います。

2学期になると、模試の回数も増え、土日の特訓講座も始まり、そこに過去問演習が加わり、時間が足りなくなります。

そして、しょっちゅう様々なテスト結果が返却され、その良し悪しにメンタルが振り回されがちです。

その結果、勉強のリズムを崩してしまい、十分に力を伸ばしきれなくなったりします。

そこで、こうした落とし穴にはまらないようにするための心がまえをお伝えします。

今のうちに準備をしておいてください。

まだお子さんが6年生でなかったら、そのときのために覚えておいてくださいね。

準備その1:過去問を偵察する

まず、やるべき準備その1は、「過去問を偵察すること」です。

8月末から9月上旬にかけて、1年分で良いので過去問を見てみましょう。

具体的には、お子さんは「お試しで」問題を解いてみる。親御さんも、単に採点するだけでなく、どんな問題が出ているのか、一度じっくりご覧いただくといいでしょう。

2月1日の時点でどんな問題が出ていて、どの程度の難しさまで解けるようになっていれば良いのか、ゴール地点を確認するためです。

「ゴール」と「現在地」がわかると、「あっちに行くぞ!」という方針が決められます。

「ゴール」と「現在地」のどちらかが欠けていたら、「迷子」になります。

「迷子」の行動は、「やみくもに走り回る」か「その場に座り込んで泣き出す」か。

いずれにせよ目的地にたどり着ける可能性は低いでしょう。

塾の教材・カリキュラムに沿ってやっていけばある程度近いところまではたどり着けますが、決してピンポイントではありません。

無駄をなくし、志望校に合わせた対策をするために、「偵察」をしておくようにしてください。

もちろん今の時期に第1志望校の過去問をやっても、力不足で砕け散ることは確実です。

6年生の後半は、受験生活の中で一番勉強する時期です。

すなわち一番成長する時期です。

その成長をする前の段階で、2月の入試問題とまともに戦えるわけはありません。

保護者の皆さんは、お子さんの心が折れないように、『あくまで「偵察」だからできなくても大丈夫』と言っておくことが必要です。

もしメンタル弱めな子なら、ある程度戦えるようになるまで待ってからでも構いません。

ただ、「合格点が取れるようになってから過去問をやる」のではなく、「方針を決めるために過去問をやる」のはとても効果があることです。

気楽な気持ちで、なるべく早めにやってみるようにしてくださいね。

準備その2:スケジュールを立てる

次に2つ目の準備は、「スケジュールを立てる」ことです。

どこの塾でもSSやらNNやら日特やらと土日まで授業が入ってくると思います。

通常の授業の復習・宿題もある中で、そうした特訓の復習・宿題をやるのは大変です。

ともすると自転車操業になり、良いタイミングで復習ができなかったり、宿題をこなしきれなかったりします。

いつ何をするのか、一度整理してみると良いでしょう。

超重要!「絶対にやるべきこと」を絞り込む

そして、ここからが特に重要なポイントなのですが、「やらないことを決める」ようにしてください。

これからの時期、やった方が良いこと・やりたいことがたくさん出てくると思います。

やった方が良いことなんてそれこそ無限にあります!

それらをすべてこなすことなんて不可能です。

そして、「やった方が良いと思っているのにできないこと」があると、頭の中をそれらが占拠していき、ワーキングメモリを食いつぶしていきます。

その結果、【頭が悪くなります】。

これはけっこう危険です。

実際に、人は「お金」や「時間」が欠乏すると知能が下がるということが研究の結果わかっています。

慢性的な時間の欠乏に陥らないためには、スケジュールをしっかりと見直し、できる範囲の課題を決めること、裏を返すと「できないことは【やらない】と決める」ことが大切になります。

どうしても私たち親や指導者は、「何をやらせれば力が伸びるか、合格を掴めるか」を考えて、「できるならこれもやらせたい」と思ってしまいがちです。

ですから「これはやらない」と決めることの方が大事になってくるんですね。

しっかりと優先順位を決めて、「絶対にやるべきこと」に絞り込むようにしましょう。

その判断材料として、過去問をうまく活用してくださいね。

準備その3:中学受験のゴールを再確認する

最後に最も重要な準備です。それは「マインドセットをしっかり整える」ということです。

もう少し具体的に言うと、何のために中学受験をするのか、そのゴールを見つめ直すことをぜひしていただきたいと思います。

どうしても人間は目の前のことしか見えなくなりがちです。

模試を受けたら偏差値が上がった下がったで一喜一憂してしまいますし、過去問を解いたら合格点に足りた足りなかったでまた一喜一憂してしまいます。

そしてこのままじゃ受からないかもとか、これで受かるかもしれないとか、そういった感情の揺れ動きに惑わされて、子供に本当に伝えるべきことや、子供に身につけさせたかったことをついつい見失ってしまったりします。

中学受験で合格することは、きっとあなたにとってゴールではないはずです。

その先に本当に手に入れたい未来があるはず。

例えばそれは、コツコツ努力する習慣や、それができるような忍耐強さを身に付けさせたいとか、目標を見据えて目標に向かって計画を立てる能力を身に付けさせたいとか、あるいは大変だった中学受験を乗り越えたという自信を与えてあげたいとか、さまざまな本当に手に入れたいものがあるはずです。

それを再確認しておきましょう。

そして、心が乱れたときには、「果たして今自分がしようとしていることは、本当に手に入れたい未来につながっているものなのか?」ということをよく考えるようにしてください。

どうしてもこの時期は、本人以上に親御さんの方に焦りが生まれることが多いです。

それは、子供よりも親の方が先を見通す力が育っているからです。

先が見えている分だけ親の方が不安になり、そしてその不安の感情に駆られて本来の目的と反する行動をしてしまうことが増えます。

親子喧嘩が発生してしまって親子の関係が険悪になったり、あるいはひどいことを言ってしまって子供の自信や自尊感情を傷つけてしまうことがあったり。

そして後になって後悔。

そうしたことは避けたいものですね。

だから、子供に対して何か言いたくなった時には、いったん立ち止まるようにすることが大事です。

また、子育てのゴールを明確にすることで、そういう感情がそもそも湧かないようにしていくことも大事です。

この子なりに頑張ってるんだな、この子なりに成長しているんだな、そういう風に見られるように自分の心を整えていきましょう。

そのためにも、6年生のお父さんお母さんは、この時期にしっかりゴールを考え直し、そして自分の心の在り方どういう状態がいいのかっていうことを決めておいてください。

まとめ

6年生2学期に向けて大切なことは次の3つです。

・準備その1.過去問を偵察する
・準備その2.スケジュールを立てる
・準備その3中学受験のゴールを再確認する

しっかり準備を整えて、良い日々を過ごせるようにしましょう。

そして、お子さんを飛躍に導いてあげてくださいね。

※記事の内容は執筆時点のものです

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