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酸性とアルカリ性を中和させるとどうなる? 水溶液の計算問題をわかりやすく解説

2023年11月07日 みみずく

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中学受験理科の計算問題としてよく出るのが中和です。塾に通う受験生は5年後半で教わりますが、比例計算や現象の理解でつまずくことが少なくありません。今回は、中和の基本を確認した上で、計算問題の解き方をわかりやすく解説します。

中和の基本を理解する

中学受験理科で中和の問題が出る場合、計算だけでなく基本的な知識も問われます。これらの知識を整理して覚えましょう。

中和とはどのような反応か?

中和とは、酸性の水溶液とアルカリ性の水溶液を混ぜ合わせると、水と塩(水以外の物質。「しお」ではなく「えん」といいます)ができる反応です。たとえば、塩酸と水酸化ナトリウム水溶液を中和させると、水と塩化ナトリウム(食塩)ができます。

酸性の水溶液とアルカリ性の水溶液が過不足なく中和すれば、混合液は中性になります。ただし、それぞれの水溶液の体積や重さを同じにして混ぜ合わせたからといって、過不足なく中和するわけではありません。

中和実験でよく問われる知識

中和の実験(中和滴定)の問題では、混合液の液性がよく問われます。たとえば、塩酸に少しずつ水酸化ナトリウム水溶液を加えていくと、次のように液性が変化します。

  • 塩酸が水酸化ナトリウム水溶液より多い → 酸性
  • 塩酸と水酸化ナトリウム水溶液が過不足なく中和した → 中性
  • 水酸化ナトリウム水溶液が塩酸より多い → アルカリ性

それぞれの液性に関連して、リトマス紙やBTB溶液などの色も覚えておく必要があります。酸性の場合、青色リトマス紙が赤色になり、BTB溶液は黄色になります。アルカリ性の場合、赤色リトマス紙が青色になり、BTB溶液は青色になり、フェノールフタレイン溶液は赤色になります。中性の場合、リトマス紙やフェノールフタレイン溶液に色の変化はありませんが、BTB溶液は緑色になります。

水を蒸発させた後に何が残るかも問われやすいので要注意です。過不足なく中和している場合は塩化ナトリウムだけが残ります塩酸が水酸化ナトリウム水溶液より多い場合も塩化ナトリウムだけです。塩酸に溶けているのは塩化水素という気体で、水を蒸発させると塩化水素も空気中に出ていってしまうからです。一方、水酸化ナトリウム水溶液が塩酸より多い場合、塩化ナトリウムに加えて固体の水酸化ナトリウムも残ります

中和の計算問題を解く

以下の問題を通して中和の計算問題の解き方を理解しましょう。

【問題】ある濃さの塩酸(水溶液Xとする)を20gずつ入れた試験管A~Fがあります。それぞれの試験管に、ある濃さの水酸化ナトリウム水溶液(水溶液Yとする)を重さを変えて加えた後、加熱して水を蒸発させました。その結果、固体を得られました。加えた水酸化ナトリウム水溶液Yの重さと得られた固体の重さは下の表のようになりました。

以下の各問いでは、小数第3位を四捨五入して、小数第2位まで答えなさい。

(1) 20gの水溶液Xに10gの水溶液Yを加えた後、加熱して水を蒸発させると、何gの固体を得られますか。

(2) 20gの水溶液Xに30gの水溶液Yを加えた後、加熱して水を蒸発させると、何gの固体を得られますか。

塩酸が多い場合

中和の計算問題では、差を求めることから始めましょう。【問題】では、加えた水溶液Yの重さの差はいずれも4gです。一方、得られた固体の重さの差はA~Cで0.22g、C~Dで0.20g、D~Fで0.15gです。

中和の計算問題では比例に着目することが大切です。A~Cでは、加えた水溶液Yの重さが2倍、3倍になると、得られた固体の重さも2倍、3倍になっています。

一定の重さの塩酸(水溶液X)に異なる重さの水酸化ナトリウム水溶液(水溶液Y)を加える場合、過不足なく中和するまで、得られる固体は塩化ナトリウムだけです。そのため、加えた水溶液Yの重さと得られた固体(塩化ナトリウム)の重さが比例関係になっていると考えられます。

しかし、C~Dで比例関係が成り立たなくなります。このことから、加えた水溶液Yが12gまでは比例計算できるので、水溶液Yの重さ:塩化ナトリウムの重さ=4:0.22=10:□より□=0.22×10÷4=0.55(g)が(1)の答えです。

水酸化ナトリウム水溶液が多い場合

比例関係が成り立たなくなったところ(C~D)で、塩酸(水溶液X)と水酸化ナトリウム水溶液(水溶液Y)が過不足なく中和したと考えられます。したがって、D~Fで得られる固体は、塩化ナトリウムと固体の水酸化ナトリウムです。ただし、水溶液Xは全て中和しているので、塩化ナトリウムの量は一定です

D~Fでは、加えた水溶液Yの重さが4g増えると、得られた固体(水酸化ナトリウム)の重さも0.15g増えます。また、水溶液Yについて、(2)の30gとFの24gの差は6gです。したがって、D~Fの差に比例関係が成り立つので、水溶液Yの重さ:水酸化ナトリウムの重さ=4:0.15=6:△より△=0.15×6÷4=0.225≒0.23(g)を求め、これをFの1.16gに加えて1.39gが(2)の答えです。

中和の問題で比例計算に慣れる

理科の化学分野に出てくる計算問題の多くは比例計算を利用します。中和の問題に慣れておくと、他の計算問題にも比例の考え方を応用できます。多くの類題にチャレンジして、解き方をしっかり習得しましょう。

※記事の内容は執筆時点のものです

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