中学受験ノウハウ 連載 親子のノリノリ試行錯誤で、子供は伸びる

熱心な教育と不適切な教育との境界線【後編】―― 親子のノリノリ試行錯誤で、子供は伸びる

専門家・プロ
2023年11月08日 菊池洋匡

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自ら伸びる力を育てる学習塾「伸学会」代表の菊池洋匡先生がおくる連載記事。「親子で楽しく試行錯誤することで、子供が伸びる」ということを、中学受験を目指す保護者さんにお伝えします。

こんにちは。中学受験専門塾 伸学会代表の菊池です。

寒い日が増えてきましたね。秋も終わりに近づき、もうすぐ冬がやってきます。

体が冷えると免疫力も下がります。

風邪をひきやすくなりますので、受験生親子は体調管理にも気を付けていきましょう。

さて、今回の記事は、前回から引き続いて教育虐待について取り上げていきたいと思います。

我が子のためを思ってしている教育が、ついつい行き過ぎてしまうことがあるのが子育ての怖いところです。

「我が子のため」という大義名分が、より過酷な虐待に繋がっていく原因となってしまうこともあるのは前回お伝えした通りです。

果たしてどうすれば教育虐待を避けられるのでしょうか?

今回は教育虐待をしてしまいがちな親の背景と、気を付けるべきことについてお話ししていこうと思います。

教育虐待に陥りやすい親の特徴は?

虐待が良くないということは誰でも知っているはずです。

教育虐待をしている親も、そのことはわかっています。

それなのに、なぜ教育虐待に陥ってしまうのでしょうか?

その理由は、親が置かれている環境や親の育ってきた環境にある場合が多いです。

いくつか例を挙げてみましょう。

①親自身も同じ教育を受けていた

私も昭和の生まれで、やんちゃな悪ガキだったので、小学生~高校生まで普通に体罰を受けて育ちました。

母には門限を破ってよくお尻を叩かれたものです。

学校の先生にも、小学生のときにはたびたびビンタをされました。

中学生のときには、ホームルームをサボってコンビニに行っていた同級生が、体育の先生に蹴られてあばら骨を骨折していました。

今の基準に照らして考えれば不適切な教育であるこれらの体罰が、当時は普通にありました。

今の親世代の人たちの中には、同じように育った方も多いでしょう。

そして、自分がされたそれらの不適切な教育に疑問を持たずに、同じことを子どもにしてしまうケースがあります。

②両親ともに高学歴で、社会的地位が高い

自分たちは勉強ができたし、やる気もあったので、「これくらいできて当然」という考えが強い場合があります。

しかし、子どもが必ずしも親に似るとは限りません。

能力も性格も親とは違った子が生まれ育つのはごく当たり前のことです。

そうしたときに、自分たちの「できて当然」「できないと困る」を押しつけると、それは子どもに無理を要求することになります。

③両親の学歴にギャップがある

夫婦の一方が高学歴高収入で、他方がそうではない場合、後者が「子どもが高学歴に育たなかった場合には自分の責任だ」とプレッシャーを抱えてしまうケースが見られます。

義両親からのプレッシャーが重なるとさらに危険度が増します。

追い込まれて、自分の立場を守るために仕方なくしたことが、教育虐待になってしまっていたということが起こりやすいので注意が必要です。

実際にこうした境遇に置かれた親御さんが教育虐待に走ってしまい、お子さんが引きこもりになってしまったという相談を受けたことがあります。

④親自身が学歴にコンプレックスがある

親自身が自分の学歴にコンプレックスを感じていて、「子どもに同じ苦労をさせたくない」とか、「子どもを通じてリベンジをしたい」とか思っていると、子どもに過度の努力を求めてしまうことがあります。

このコンプレックスは主観的なものなので、世間的に見れば高学歴であっても、友人間や兄弟間で比較して相対的に劣等感を感じる境遇にいる場合もあります。

かく言う私も、開成高校卒なので、友人たちは東大や医学部が多く、私の慶應大学卒という学歴は正に上記のようなパターンにあてはまります。

①と合わせて私は教育虐待に陥る素養が高いので、注意しなければいけないなと自覚しています。

なお、勉強だけではなく、スポーツや音楽などの習い事に置いても、自分が成功できなかったものを子どもにやらせて「リベンジ」を目指す形になると危険度が高まります。

子どもが親の「身代わり」になっていたら、それは特に教育虐待になりやすいので気を付けてください。

⑤キャリアを捨てて育児に専念している

高学歴で、やりがいがある仕事にも就いて、社会で活躍してきた方が、出産や育児やパートナーの転勤など様々な事情で仕事を辞めざるを得なくなることってありますよね。

そして、それまで仕事に向かっていたエネルギーが、子どもの教育に向いたりします。

元々バイタリティのある方なので、子どもの教育にも全力。

それが行き過ぎてしまうと、教育虐待になりがちです。

自分の「自己実現」が「子どもの教育」になってしまうと危険信号です。

教育虐待に陥らないために気を付けるべきこととは?

教育虐待をしてしまう親の特徴を挙げてきましたが、まとめると

  • ①知識不足
  • ②親自身の背景

に原因がある場合が多いです。

何が虐待にあたるのか、正しい知識を学ぶことが大切です。

自分が受けてきた教育は必ずしも正しかったとは限りません。

また、子どもの幸せを願ってしたことは虐待にならないわけでもありません。

そして、正しい知識があったとしても、様々なプレッシャーの中で、一線を越えてしまうこともあります。

ご自身が越えなかったとしても、パートナーが越えてしまうかもしれません。

そうならないようにするためには、パートナーおよびご自身を教育虐待に走らせるような環境要因を取り除く努力をする必要があります。

環境を改善せずに自制しようとしても、また、パートナーに自制を求めても、いずれストレスから限界を迎えてしまう日がくるでしょう。

「リベンジ」も「自己実現」も、子育て以外の趣味や仕事でしましょう。

子どもを自分の持ち物ではなく1人の人間として扱い、意思を尊重しましょう。

子どもの成果を親の成果と混同しないようにしましょう。

パートナーにプレッシャーがかかるような環境であれば、子どもを守る前にまずはパートナーを守りましょう。

こうしたことを心がけながら、うまく教育虐待という落とし穴を避け、子どもの熱心なサポーターとして成長を後押ししていってください。

受験という機会は、うまく生かせば子どもの成長を大きく加速させます。

負の側面があることを決して忘れず、私たち大人も子どもと一緒に、良い機会にするための努力をしていきましょう。

※記事の内容は執筆時点のものです

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