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中学受験に向け、今のうちに定着させておきたい常識2|低学年のための中学受験レッスン#27

専門家・プロ
2023年11月20日 宮本毅

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先日、小4生の算数で「約数・公約数」の授業をおこなったのですが、そもそも「奇数」「偶数」の概念を知らない生徒がいて驚いた、ということがありました。

「奇数・偶数なんて、兄妹や親子でお菓子を分け合うときに、ぴったり配れるかどうかですぐに理解できるのになぁ」と思ったりもしましたが、最近は「分け合う」のような経験をすることも少なくなってきてしまったのかもしれません。

そこで今回は、以前もお話しした「中学受験に向け、今のうちに定着させておきたい常識」の第二弾をお送りしようと思います。

「ぴったり」「あまり」の感覚を養う

冒頭に挙げた「奇数・偶数の概念すら知らない子」の例を、少し深掘りしておきたいと思います。

中学入試の算数では「整数問題」という分野が存在します。

「3で割っても4で割っても2余る整数のうち、100に一番近い数を求めよ」「39を割ると3余り、50を割ると2余る整数を全て求めよ」といった感じの問題ですね。

これがまぁ、実に出来が悪い(笑)。どうして?って言うくらい定着しないのです。定着というか、そもそも理解する段階でピンと来ていない様子の子がたくさんいます。

これってなんでだろうなぁと思って、ある時ふと育児書を見たら、「子どもがケンカしないように、お菓子などはあらかじめ取り分けて与えましょう」と書いているのを見てハッとしました。

あー、親が先回りして何でもやってあげるから、最近の子は「余りの感覚」を身に付ける機会が減っているのかもなぁとひどく納得しました。同時に、兄弟・友達同士でオヤツの取り合いをしたり交渉したりといった、人間関係を学ぶ機会の喪失にもつながっているかもしれません。

皆さん、ケンカになってもなにしても、お菓子は子どもに分けさせるようにしてください。

袋菓子などでは「19個」という感じの中途半端な個数が入っていることがあります。これなんかサイコーの教材ですね。「19個」は二人でも三人でも四人でも五人でも六人でもうまく分けられませんし、素数という特殊な数なので「素数の概念」を学ぶのにも持ってこいです。

割り算の計算力なども自然と身につきますので、是非実践してみてくださいね!

単位のルールを学ぶ

多くの小学生が不得意にしているものとして「単位換算」があります。「0.4gは何mg?」とか「380haは何km2?」といったたぐいの問題ですね。

これ、困ったことに、入試間近になっても克服できていない受験生が数多くいます。多分、暗記しようとしているから、何回やっても抜け落ちてしまうのでしょう。

単位換算は、受験勉強が本格化する前に身につけておきたい「常識」のひとつといえます。

小学生が「短換算が苦手」になってしまう最大の疫病神を、私は「cm」だとにらんでいます。

子どもの身長をはかったり、小学校の算数でたくさんお目にかかる機会があるので、多くの人はこの「cm」という単位に親しみを感じているでしょう。

そんな「cm」を悪者にするのは忍びないのですが、これがあるせいで子ども達は混乱してしまうと私は考えています。

単位換算は本来、ごく簡単なルールで成り立っています。

「k(キロ)なら1000倍、m(ミリ)なら1000分の1」たったこれだけ。「1km=1000m、1kg=1000g、1kL=1000L」ですし「1m=1000mm、1g=1000mg、1L=1000mL」です。ね、カンタンでしょ?

けれど「cm」はまさにこの法則を破壊しているわけです。「1m=100cm」ですから。同じ理由で「dL(デシリットル)」も同罪ですね(笑)

そこで私は、ひとまずいったん「cm」の単位は忘れて、「k(キロ)なら1000倍、m(ミリ)なら1000分の1」というルールだけを徹底して訓練させることをおススメしたいです。

その時「実体物」を使って感覚的に覚えさせるとより効果的です。

たとえば2Lのペットボトルと500mLのペットボトルを使って、何杯入るかの実験をやってみたり、自分の歩幅をはかって家から学校まで何歩で行けるか数えて距離を計算し、グーグルマップで何kmあるのか調べて照合してみたりすると、量感も身につき一石二鳥です!

低学年のうちに頭に入れておきたい単位換算については、次の記事でも解説しています。ぜひ、チャレンジしてみてください。

お金の計算で学ぶ「割合」の基本

小学5年生になると、「損益算」という文章問題を学びます。

「ある商品を1個1500円で120個仕入れ、4割の利益を見込んで定価をつけて売り始めた。全体の75%を売ったところで残りを定価の2割引きで売り切った。利益はいくらになりますか」といった問題ですね。

これなども理解度に非常に差がつきやすい単元です。では、どうして差がついてしまうのでしょうか。

算数ができる子たちは、実はこの「〇割増し」という計算方法を、割と早い段階でイメージできています。そのため「損益算」で特に苦労することなく、すんなりと身につけることができます。

一方、算数が苦手な子たちは「仕入れ値」「割り増し」といった言葉の意味から理解しなくてはならず、得意な子たちよりも1歩も2歩も遅れてしまいます。それが「差がつきやすい」要因となっています。

これって、その子の計算力や数学的センスが問題ではなさそうですよね。

スタート地点で出遅れないためには、親御さんの協力が必要です。

スーパーマーケットに一緒に夕飯の買い出しに行ったとき、積極的に「消費税」の計算をさせるようにしましょう。100円とか200円といった計算しやすいもので構いません。「消費税10%が上乗せされると1.1倍になる」といったことが身についているだけでも、十分な訓練となります。

暗算は脳を活性化させますし、お子さんが食べたいお菓子の税込額を計算させて「合ってたら買ってあげる」などゲーム性を取り入れれば算数が楽しくなります。いいこと尽くしですね。

また「お金の話」は社会構造を理解する上で非常に有効です。

「税金はなぜ集めるのか。国の予算はどのくらいなのか。国の借金はどのくらいあるのか。国会議員っていくらもらってるのか…」お金にまつわるそうした興味関心が、将来社会で公民を学ぶ時にも役立ちますし、「政治への関心」も高められることでしょう。

「昭和な風景」から気象現象の基礎を知る

昔は銭湯もたくさんありましたし、そこかしこでドラム缶で落ち葉を焼く光景が見られました。

まさに「昭和の光景」ですが、最近はめっきり見る機会が減りましたねー。焚き火もほとんど見なくなりました。令和の子たちにとっては馴染み薄ですが、同じ現象はお風呂場でも観察されますので、ぜひ確認してみてください。

何の話かというと、「空気は温められると上昇する」という現象を体感できるよということなのです。

理科で学ぶこの現象は、中学受験で勉強するさまざまな単元に関わってきます。

「海風と陸風」の説明の中でも出てきますし、「ヒートアイランド現象」の中でも出てきます。積乱雲が縦に長いのは急激な上昇気流が起こっているからですね。登山では天気の急変に注意しなければいけないというのも、昼間は「谷風」といって谷の方から山頂へ吹く上昇気流が発生しやすく天気が崩れやすいからです。

空気は温められると上昇する。この重要な現象を実体験として知っておくのと知らないのとでは、知識の入り方が全く違ってきます。

風の話が出てきましたが、「風向き」についても子ども達が混乱しやすいところです。「北東の風」は北東から吹いてくる風なのか北東の方に吹いていく風なのか、分からなくなってしまうのですね。

これも「北風と太陽」という有名な寓話から学ぶことが可能です。「北風は北の方から吹いてくる風だから寒い」ということをしていれば、「北東の風」は「北東方向から吹いてくる風」だ、「海風」なら「海の方から吹いてくる風」だ、と理解しやすいでしょう。ついでに「八方位」も頭に入れておけるといいですね。

まとめ

長年子ども達を指導していると、常識を身につけている生徒は呑み込みが早く、成績も優秀だと気付きます。

それも「座学」ではなく「実学」の中で学んでいる子は本当に強い。何しろ「実体験」がありますから、これに勝るアドバンテージはありません。

公文教室や英会話教室もいいですが、できれば家族でお出かけしたり日常生活の中でいろいろやらせて「経験値」を増やしてあげて下さい。それが将来、大きな財産になると思います。

※記事の内容は執筆時点のものです

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