我が子を「深海魚」にしないためにできること|合格から入学までにすべきこと#5
厳しい中学受験戦線をくぐり抜け、4月からは憧れの中高一貫校生!でも、子どもはスムーズに新生活へ移行できるかな? 親ができるサポートってどんなこと? そんな風にちょっと不安を感じる6年生保護者さんへ向けて、合格後の塾生を中学準備講座という形でサポートされている「アテナ進学塾」代表の宮本毅先生がアドバイスします。
さて、本連載「合格から入学までにすべきこと」の最終回は、「深海魚」対策です。これまでの連載の内容と一部重なる箇所もありますが、総まとめとしてもう一度お伝えしておこうと思います。
「深海魚」……といっても文字通りの意味ではありません。受験業界においては次のように定義されます。
「進学先の中高一貫校において成績が落ちこぼれ、ずっと最下層に甘んじる生徒のこと。」
深海に生息していて決して水面近くに浮上することのない深海魚にたとえてそう呼ばれています。
せっかく志望校に受かったのに、「深海魚」に甘んじてしまうのはとても悲しいですよね。
私立中学では「留年」や「除籍」といった措置が取られることがあります。万が一そんなことになろうものなら、何のために中学受験をしたのかわからなくなってしまいますよね。
できれば我が子にそうはなって欲しくないですが、残念ながら私立中学には毎年、一定数の「深海魚」が存在することも事実です。
Contents
なぜ子ども達は「深海魚」になってしまうのか
まずそもそもなぜ子ども達は、進学先で「深海魚」になってしまうのでしょう。
それまでモチベーション高く、志望校に向けて勉強を頑張ってきたのに、急にやる気が減衰してしまうのはどうしてなのでしょう。
理由は様々ありますが、今回はそのうち主な理由をみっつ、ご紹介します。
理由その1 「合格したらのんびりできる」と思って受験勉強していたから
まずひとつ目は、親や塾の先生が子どもを中学受験に向かわせるにあたり、「私立に行けば高校受験がないから、しばらくはのんびりゆっくりできるぞ。だから今は頑張れ」のように言ってしまっていることです。
子ども達は当然その言葉を信じ、一生懸命頑張って無事に合格を勝ち取ったわけですから、受験勉強から解放されて勉強しなくなってしまうのは当然のことと言えるでしょう。
これが原因で私立中学に進学して勉強しなくなってしまう生徒は非常に多いと考えられます。
理由その2 私立中学のカリキュラムの進度が「速い」から
次に考えられる要因としては、スタートダッシュに失敗することが挙げられます。
私立中学では、公立中とは比べ物にならないほどのスピードでカリキュラムが消化されていきます。
そのため、通常なら1年間かけてじっくりやる中学1年生の内容を、夏休み前までで一気に終わらせて中2のカリキュラムにどんどん入っていく、などということは決して珍しくありません。
そのことを知らないままのんびり過ごしていると、あっという間に置いてきぼりを食らってしまうわけです。
理由その3 自律的・自発的な学びが後回しになっているから
みっつ目としては、中学受験において志望校合格のために親が手を出し過ぎていることが挙げられます。
最近の中学受験では「合格できるかどうかは親のかかわり方で決まる」「中学受験成功のカギは親が9割」などと言われ、親が伴走するのは当たり前となっています。
しかし本来の「学び」とは「自律的」「自発的」であるべきです。
そこを全く無視し、ただ「合格しさえすればよい」という考えで中学受験をやり過ごすと、いざ中学生になったときに子ども達が「いったい何をやればいいのか」さっぱりわからなくなってしまうというわけです。
親が手助けしようにも、思春期に突入した子どもは親の言うことなど全く聞いてくれません。
こうなってしまうともう、深海に落ちていくばかりですね。
子どもを深海魚にしないための鉄則とは
では子どもを深海魚にしないためには、一体どうしたらよいのでしょう。
もちろん、これまでの中学受験への向き合い方や子どもに対する声掛けを後悔しても仕方がないので、これから何をどうするべきかを考えていきましょう。
まずは、中学受験の時のように、毎日勉強する時間を設けましょう。
何時から何時までは勉強する時間と設定してください。
もちろん中学受験時ほどはやらなくて構いません。
1時間ほどで大丈夫ですので、とにかく毎日何かしらの勉強をする習慣を取り戻させてください。
学習内容に関しては過去記事をご参照いただきたいのですが、その中で特に優先順位の高い科目は「数学」と「英語」です。
数学は「つるかめ算」とか「ニュートン算」といった受験算数おなじみの「特殊算」を復習する必要はありません。
それよりも「分数や小数の計算」が重要です。特に円やおうぎ形の求積問題で、計算の工夫を使わずにゴリ押しで面積を出していた生徒は要注意です。
「分配法則」という数学においては大変重要な考え方が身についていませんので、計算の工夫を徹底しておきましょう。
英語は、小学校英語と中学校英語では、学習の構造が全く異なります。
中学校英語は基本「暗記科目」となります。
小学校の時には、スペルについてそれほど厳しく言われなかったと思いますが、その思想を中学英語に持ち込むと途端に落ちこぼれてしまいます。
ですので、まずはしっかりと「英単語のスペル」を暗記させていってください。
学校から教科書が配られましたら、すくなくとも「LESSON3」くらいまでの英単語は暗記しておくとよいでしょう。
社会についても、いきなりつまずくことがあります。特に「2科目受験」で入試をクリアした生徒は要注意です。
私立中の先生たちは、日本地理について「きみたち中学受験を経験してきたわけだから、当然知っているでしょ」という態度で授業をおこないます。
基礎的な知識は暗記しておかないと「深海魚」」まっしぐらです。
新生活が始まる前に、きちんと焼き直しておくことを強くおススメします。
もうすでに「深海」に到達してしまっているときはどうすればいいの?
この記事の読者の皆様は、基本的には「これから新生活が始まる方」でしょうから、この項は特に必要ないかもしれません。
しかし、将来「深海魚」になってしまうかもしれません。
そんなときにここに戻ってこられるよう、「深海魚」になってしまったときの対処法についても記しておこうと思います。
なにをかくそう私も「深海魚」だったのです。
中学受験ナビでも何度か書いたことがありますが、私は母に支えられて中学受験をし、ご縁を得てあこがれの学校に進学しました。
しかし、中学校の成績はそれはそれはひどいもので、中学三年間はほとんどずっと、学年最下位付近でした。
ところが、あることがきっかけとなり、高校1年生の時に成績を急浮上させることができました。私の実体験によるアドバイスですので、もしものときはぜひ、参考にしてください。
その方法とは「一点突破作戦」です。
私は英語も数学も理科も社会も、それはもう目も当てられないほどひどい成績でしたが、高校生になって「指数関数・対数関数」を学習したときに「これは面白いぞ」とかなり勉強しました。
その甲斐あって数学の成績はものすごく上がりました。
成績が上がれば当然のことながら気分はいいですよね。
その結果、他の科目にもいい影響が波及しすべての課も無科目において成績を向上させる結果となりました。
当時はそのカラクリについてはよくわかりませんでしたが、いまでは「自己肯定感」と「モチベーション」の関連性については様々なエビデンスが示されていますよね。
やっぱり「オレってやればできるじゃん」が大切なんです。
もしお子さんが中学に入って「深海魚」になってしまったら、中学受験時代を思い出し、その中でも比較的得意だった科目を徹底的に学習してみましょう。
数学や英語などの積み上げ式の科目なら、スラスラ解けるレベルにまで学年をさかのぼったっていいんです。
高校生だから中学生の勉強をするのは恥ずかしいだなんて、そんなちっぽけなプライドは捨ててしまいましょう。
自分に必要のある事ならどんな基礎的なことだってやるべきなんです。
ただし中1の教科書を引っ張り出してきて、最初のページから復習するなんてことはやめてください。
そんなのかえってモチベーション下がりますよね。
今習っている範囲のことに必要なものだけ復習すれば十分です。
まとめ
いずれにせよ大切なことは、保護者の方は過度に干渉しすぎないことです。
過干渉は時に子どもの成長を阻害します。
学びに対する渇望は人間の本能であると言っても過言ではありません。
お子さんが自らの足で立ち上がろうとしているしている時に横から口出しされては、子ども達とてやる気を失ってしまうでしょう。
あれこれ言いたくなる気持ちをグッと抑えて、見守るくらいの距離感でじっくり待ってみてくださいね。
※記事の内容は執筆時点のものです
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