中学受験ノウハウ 中学受験をするかどうか

じつは東大も医学部も高校受験からで大丈夫!大学受験に対する考え方、変えませんか?|書籍『中学受験はやめなさい 高校受験のすすめ』著者のじゅそうけんさんにインタビュー【後半】

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中学受験をするか、はたまた高校受験で勝負をするか——。

子どもにとって人生を左右する受験。そこでSNSの総フォロワー数10万人の「受験総合研究所」こと、じゅそうけんさんに「高校受験」の現状を伺いました。

前半では「中学受験に向いている子はいる」と認め、高校受験組だった自分自身も、本来は中学受験に向いている子どもだったとまで話してくれたじゅそうけんさんが、新刊『中学受験はやめなさい 高校受験のすすめ』(実業之日本社)で、今、訴えたかったこととは?

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高校受験の3つのメリットとは?

——前半では中学受験の現状とメリット・デメリットについて伺いました。後半では高校受験にスポットを当ててお伺いしたいと思います。まずはじゅそうさんが考える高校受験を選んでよかったと思うところはどんなところでしょうか。

じゅそうけんさん(以下、じゅそうけん) 私はどちらかというと中学受験向きの子どもでしたが、高校受験を選択したことによってよかったなと思う事もたくさんあります。中学受験と比べて高校受験は競合となる受験生が弱いので、ハイレベルの高校に入りやすいです。また、学費面は中高一貫校から入学した場合と大きく違います。

——東京都は24年度から高校の授業料の実質無償化を発表しました(所得制限なし)。各都道府県でも対策がなされていますね。

じゅそうけん 首都圏の高校は授業料無償化が発表されましたが、令和3年度の文科省発表のデータによると、6年間でかかる学費の総額は私立中高一貫校を選択した場合と、公立中高の場合では倍以上違います。公立中高の方が私立中高よりもトータルで考えれば断然安いです。

さらに、大学受験に向けての勉強方法にも大きな差があります。中学受験では入試対策として「算数」をみっちり学びますが、これは大学受験で必要な「数学」の学習には直結しません。しかし、高校受験で必要な数学は大学受験に必要なので、3年後の大学受験に生かすことができます。

——なるほど。大学受験を見据えると、高校受験を選択したほうがかなり有利でお得感もありますね。

じゅそうけん 個人的には公立中学を経験できたこともよかったと思っています。12歳から15歳までの多感な時期に、いろんな環境の友だちと触れ合えたことで社会の縮図を経験できたように思います。充実した3年間でした。

データ必見!「昔」と「今」で受験は大きく変わっている

——現在、我が子に中学受験をさせるかどうか迷っている方もいると思います。中学受験を選択せず、高校受験で勝負できる子どもはどんなタイプの子どもでしょうか。

じゅそうけん 高校受験も受験当日の点数は大きく関係しますが、受験成功のカギは「内申点」です。

内申点は受験する高校に提出され、受験当日の試験と合わせて選考に使用される重要な数字です。ですから、スムーズに学校生活が送れ、先生ともコミュニケーションが取れる、「学力と内申点のギャップがない子」は高校受験のほうが結果を出せると思います。

——受験は親御さんの想いにも左右されると思いますが、学力と内申点のギャップがない子かどうかを親が見極める必要もありそうですね。

じゅそうけん 現在、中学受験をするお子さんの親御さん世代には、第二次ベビーブームのお生まれの方も多いと思います。その時代は一学年、200万人くらいの子どもがいました。大学受験人口においても100万人くらいの受験生がいたので、早慶・GMARCHの倍率は10倍、20倍は当たり前の過酷な競争だったと思います。

ご自身が苦労したので、我が子にはそんな思いはさせたくないという気持ちから、より早くから安定したルートに乗せるため、中学受験を選択する家庭が増えているように思います。しかし、現在は少子化で倍率は1/3ですから当時のイメージを払拭し、今のデータや情報をインプットしてもらいたいなと思います。

高校受験で選択した高校からも東大・国公立医学部も夢ではない

——数年前から中高一貫校における「高校募集停止」が話題となっていますが、このことで多くの保護者は高校受験の選択肢が狭まっているという印象を受けています。じゅそうけんさんは、「完全中高一貫化」が加速してることにどんなことを感じていますか?

じゅそうけん まず高校募集停止の学校が増えた理由としては、学力差の違いが明確だからだと思います。中学から入学した場合、6年間の学習内容を5年間で終了させるようなカリキュラムを作っている学校が多いため、高校から外部入学してくる生徒たちと統一することは難しいです。よって、完全中高一貫化はどちらかといえば加速する傾向にあると思います。

しかし、都立・公立高校も全体的に学力は底上げされてきており、優秀な学校はまだまだあります。高校受験の倍率を成績優秀層が多い中学受験における倍率と比べて考えても、「受験できる高校がなくなる」ことをそこまで心配する必要はないと思います。

——高校受験を視野にいれている保護者たちに向けて、最近の高校受験のトレンドを教えてください。

じゅそうけん 首都圏に限りますが、これまでは中高一貫校の私立トップ校が東京大学の合格者数を占めていました。しかし、都立高校が改革を起こしてからは都立高校の進学実績が上がってきています。

原因としては、学校独自のオリジナル問題を入試に採用したことで、より学校側が取りたい生徒の獲得に成功し、教育の質の向上につながったことなどが挙げられます。また、都内どこからでも希望の都立高校を受験できるよう入試制度を大幅に変えたことも大きいです。

——都立高校の改革は流れを大きく変えたわけですね。

じゅそうけん 2024年の日比谷高校を例にあげると、東大の現役合格者数は52名、国公立医学部は20名が合格しました。数年前までは開成高校、筑波大附属駒場高校、灘高校、麻布高校といった6年制の中高一貫校のトップ校が占めていましたが、現在は都立高校からも東大や医学部に入学する生徒が軒並み増えました。

このあたりの情報をアップデートしないまま私立至上主義に陥っている保護者の方もいらっしゃるので、新刊のなかでは、高校受験を経て大学受験を目指す際の考え方や戦略についてもくわしく書いています。

——では最後に、中学受験に向かっているけれど、このまま中学受験をさせるかどうか悩んでいる親御さんにメッセージをお願いします。

じゅそうけん 中学受験は周りがやっているからなんとなくではなく、お子さんひとり一人の性質としっかり向き合ってから参戦するかどうかを決めてほしいです。そこからその子のタイプに合う進路や学校を見極め、丁寧に照らし合わせたあとは全力で応援してあげてください。

じゅそうけんさんに、前後編にわたって中学受験と高校受験の「リアル」を語っていただいた今回の企画。お子さんの進路や将来を考える際、より広い視野で見渡すためのヒントとなりそうなお話を伺うことができました。書籍『中学受験はやめなさい 高校受験のすすめ』には、より詳しいデータや数値、最新の受験情報が掲載されています。気になる方はぜひ手に取ってみてくださいね。

 

▼書籍『中学受験はやめなさい 高校受験のすすめ』についてはこちらの記事で紹介しています。

※記事の内容は執筆時点のものです

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