「勉強しなさい」は無意味。親子で挑む中学受験の姿とは?|「下剋上受験」桜井信一 特別インタビュー(4)
両親は中卒、それでも娘は最難関中学を目指した! そんなインパクトある実話がベースのTBS系ドラマ「下剋上受験」……。その原作者である桜井信一氏に、自身が監修を務める「マイナビ家庭教師」のこと、中学受験のこと、勉強方法についてなど、受験生を抱える保護者はもちろん、すべての親御さん必見の話を聞いた。
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「勉強しなさい!」というのは、ただの声援でしかない。声援なのになぜそんなに怒っているのか?子供たちは理解に苦しんでいる
――「子供だけでは変われない」「できない子には親が必要」というのが桜井さんの持論ですが、志なかばで心が折れかけている親御さんに向けて何かアドバイスをいただけますか?
はじめて中学受験のテキストを見たとき、私はチャンスだと思ったんです。こんなむずかしい問題を、子供だけでやっている家庭がたくさんあるからピラミッド型の学力分布になっているのだ、と。きっと停滞する子が続出しているはず。やる気が起きないほど中学受験の難易度は高いわけですから。
そして、親でもそうそう手に負えないとわかったとき、これはさらにチャンスだと思ったんですね。いまのまま何も変わらないでほしい。わが家だけがやる。周りは現状維持でいてほしい。セコイ考えもしれないけれど、それが中学受験界の現状だと思うんです。
「もういい加減にしろ!」と投げ出しかけたお父さんお母さん、ちょっと視点を変えてみてはいかがでしょう? 挫折しかけているのは自分たちだけじゃない。大半の親が同じようなことを考え、大半の親が諦めかけているんです。生き残りゲームみたいなものですね。気持ちを切り替えたもの勝ちの。ギブアップせずに続けていれば周囲が勝手に脱落していくわけですから、こんな楽なレース、ほかにあるでしょうか?
ここはひとつ、わが子はひと味違うんだとひそかに信じて本来の志望校へ向けた取り組みを始めてみませんか。親が一緒になって問題解決にあたれば子供は嘘みたいに伸びます。わが子じゃないみたいになります。わが子じゃないみたい……と思う瞬間ってたまりませんよ。感動しますよ。この子を育ててよかったなあと心から思いますよ。
その感動の表情を子供は必ず見ています。そしてもっと感動させてやろうと頑張ってくれるはず。これこそが「親子で挑む中学受験の姿」だと私は思います。
――日々「親子で挑む」なかで、親が気をつけるべきポイントがあったら教えてください。
「勉強しなさい!」という言葉の投げ掛けがいかに無意味かを知っておいていただきたいですね。たとえばサッカーやラグビーなどのスポーツにはコーチがいます。
このコーチが的確なコーチングをしなければチームが勝つ可能性は低くなる。戦っている選手たちは必死ですから、競技をしていないコーチが冷静に状況を判断し、客観的な指示を与える必要があるわけです。
では、このコーチが受験生の親だとしたらどうなるか。「走れー!」「頑張れー!」「ラグビーしなさーい!」 それしか叫ばない。明らかに選手から見て、無能なコーチではないでしょうか。これじゃ指示というよりもただの声援ですね。
しかも声援なのになぜそんなに怒っているのか? 子供たちは理解に苦しんでいるわけです。「もっと右ー!」「そこでパスー!」 こういう具体的なアドバイスをおくるためには、まずルールを知らなければなりません。
「今日は約分の練習をします」「今日は模試の復習をします」 せめてこの程度の具体的な指示が必要なのではないでしょうか。
もちろん自らが名コーチにならなくてもいい。ある程度は塾に任せることができるのも中学受験ですから。
しかし、それだけでは思うように成績が上がらないとき、親は声援ではなく指示を出さなければ意味がありません。現状を分析して方向性を示す必要がある。少なくとも当面の学習計画を一緒に立てることくらいはできると思うのです。
――「勉強しなさい!」と怒鳴る親というのは、まったく他人事ではないで。
「子供を叱ってはいけない」とさまざまな子育て本に書いてありますね。「褒めて伸ばせ」と。とんでもなく抽象的なくせに妙に正しいような気がするこのフレーズ。
でも結局のところ、どうして叱っちゃいけないのかはよくわからないのです。親としては、叱っても何の得もないという理由をハッキリさせてくれなければストレスがたまるばかりです。
そこでちょっと考えてみたのですが、子供を叱る場合って同じヘマを2回以上繰り返したときではないでしょうか。
「ほら~、だからいつも言ってるでしょ!」「何度言ったらわかるのっ!」 おそらく多くのケースでは、前回も同じことをして注意を受けているにもかかわらず、懲りずにもう一度やってしまったから叱るんだと思うのです。
それ、叱りたくなるほうが自然ですよね。だって2回目ですから。ここで「褒めて伸ばせ」なんて言われたら親は我慢するしかない。むしろ我慢しているこっちが褒めてほしいくらいです。
――ほんとうにイライラが募るばかりですね。
ただ、あたりまえの話ですが、小学生ってそんなに長いこと生きていません。ベビーカーに乗っていた頃なんて記憶にないわけですから、所詮数年分しか人生経験がない。そのわずかな期間にはたいした挑戦もなくて、それほど反省した経験もない。
反省ばかりして生きてきた私などとは違い、圧倒的に「反省の経験不足」なんです。そりゃそうでしょう。まだ反省するほど生きてないし、そんな特別なイベントもなかった。そもそも「反省する」という発想自体、小学生にはないことに気づいたんです。
反省というのは後ろを振り返る行為ですので、後ろ(過去)がなければ反省という行為そのものが成立しないわけですね。これはすごく重要な発見だと思いました。まだ反省していない子に、無理やり反省させてはいけない。前を向かせてやらなければならない。
だから叱ってはいけないんだ、そう思ったのです。小学生は前を向かせる時期なのだと気づいたわけです。
文◎「マイナビ学生の窓口」編集部
※この記事は「マイナビ家庭教師」Webサイトに掲載されたコラムを再編集のうえ転載したものです
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※記事の内容は執筆時点のものです
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