計算ミスは学力をあげてくれる最良の教師|「下剋上受験」桜井信一 特別インタビュー(9)
両親は中卒、それでも娘は最難関中学を目指した! そんなインパクトある実話がベースのTBS系ドラマ「下剋上受験」……。その原作者である桜井信一氏に、自身が監修を務める「マイナビ家庭教師」のこと、中学受験のこと、勉強方法についてなど、受験生を抱える保護者はもちろん、すべての親御さん必見の話を聞いた。
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本番まで、ミスは損にならない。むしろ解き方を見直す絶好のチャンス。ミスこそ学力を上げてくれる「最良の教師」
――前回の解決策以外に、桜井家ならではのミスをなくすための工夫があったら教えてください。
三角形の面積を求める際、最後に「2で割る」のを忘れてしまうなんてミスはありませんか? これを防ぐためにわが家では三角形の面積の公式を変形させました。
これならば半分にし忘れることがない。ほかにもあります。
たとえば、台形を回転させたときにできる立体の表面積を求めるのであれば、あまりミスは起きないと思います。上の図のように円すい台が書いてあってその表面積を求める問題もミスは起きにくい。
ところが、「円すい」が図で書いてあって、下から何センチのところで切断したときにできる「円すい台」の表面積を求めなきゃいけない場合、図の見た目では上のフタがないため底面積と側面積を足して終わってしまうことがしばしば起こる。
これを「次は気をつけよう」程度の反省で済ませていたら学習になっていないと思うんです。
ミスが起きること自体が恥ずかしいのではなく、ミスを防ぐ対策がなされていないことが恥ずかしいのですね。
要は、円すい台をイメージした瞬間に「いや、その手には乗らないよ。どうせ上のフタを忘れないか確かめたいんでしょ?」と出題者の意図を汲みとって警戒できる。
さらに次の動作でひとつの式にすることにより、足し忘れを機械的に防ぐ。この一連の流れが身についてこそはじめて学習の成果といえるのではないでしょうか。
「これが円すい台の表面積の公式なんだ」と自分のスタイルが決まっており、常に同じ解き方ができれば上ブタの存在を忘れることはありません。「忘れやすいほうから先に計算する」 このルールに則って、すべての計算式を自分のスタイルに変えていく。ぜひみなさんにオススメしたいミス防止策ですね。
問題を見てから「えーっと、どこから計算しようか……」と迷っていては、(1)ある部分を足し忘れることがある。(2)どことどこが終わったかややこしくなる。まるでミスを誘っているかのような解き方になってしまいます。この類の、5回に1回程度しか起きないミスですと、やはり「次から注意しよう」と反省だけして終わりになってしまいがちです。
しかしながら難関中学の算数は、「子供がミスするパターンを研究し尽くしてるんじゃないか?」と疑いたくなるほど考え抜かれた問題が並びます。随所に仕掛けられた「ミス誘発ポイント」 にハマるかハマらないかで、最終的に大きな差がついてしまうんですね。
2回目でマルにするのであれば比較的解きやすい問題が多いのも事実……「あっそっか」で解ける問題、これを一発で仕留められるかどうかを問うのが算数なんだと考えると、やはりミスが起きるたびに注意深くその対策を練っておきたいものです。
――確かに「ミスが起きるたびに」というのは重要かもしれません。ミスが起きてないときに、机に向かって「さあミスが起きる場合に備えて」なんて考えても現実的じゃないですから……。
そういう意味でも大切なのは、ミスに気づいたら慌てて消しゴムで消さないこと。間違えた箇所を別のノートによけておき、どこでどんな理由でミスが生じたかを分析する。
たとえ10個のサンプルでも十分傾向が見えるものです。これを注意するのではなく、防ぐ方法を徹底的に考えるのです。
たとえば、足し算をうっかり先にしてしまうようなら、本来最初に計算すべき部分を鉛筆で囲む。最後に未知数を求めるときに割るほうと割られるほうを逆にしてしまうなら、両辺を割ることを分数で表すようにする。さまざまな自分流のノウハウが蓄積できると思います。
ミスを「対策を講じるチャンス」 だと前向きに捉えて、その計算式をもう一度見る、間違いパターンを検証するのが何より大事なのではないでしょうか。
当たり前の話ですが、本番までミスは「損」 にならないんです。むしろ防ぐ方法や解き方を見直す絶好のチャンスなんですね。ミスこそ学力を上げてくれる「最良の教師」 だと思うのです。
こうして積み重ねたノウハウの数々が入試本番に強い子をつくり、受験日に試験会場からミスなく笑顔で出てくることにつながるのだと思います。
文◎「マイナビ学生の窓口」編集部
※この記事は「マイナビ家庭教師」Webサイトに掲載されたコラムを再編集のうえ転載したものです
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※記事の内容は執筆時点のものです
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